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わがまま王女と駆けだし騎士の純愛譚  作者: 遥風 かずら
外伝クライマックス:プリンセッサの恋愛譚
76/151

76.プリンセッサと繁栄と


「アスティン。僕は君にひどいことをし続けてしまった。何度謝っても謝りきれない」


「イグナーツお兄ちゃんにそんな事された覚えは……あ――」


「君の前からずっと姿を消してしまったことが僕の罪だ。そして、ラルディの手助けをして君を苦しめてしまったことだよ」


「で、でもそれは、戦地に行ったからであって、それにラルディの時はまだ記憶を失っていたよね?」


「いや、それは言い訳に過ぎないんだ。僕は幼い君を長い間、ずっと悲しませた。だから僕はジュルツに帰ることは出来ない。もちろんそれだけじゃない理由が僕にはあるけど、アスティンの傍にいられないんだ。ごめん」


 僕の兄騎士カンラート、ハヴェル、ドゥシャン……そして、イグナーツ。僕が騎士になろうとしたきっかけの兄。彼が謝っていることはもう許している。それどころか、彼が自分の道を決めてくれたことに嬉しさを感じていた。それなのに、僕に謝り続けている。これでは祝いをするどころか、重荷さえ背負わせているような、そんな気がした。


「イグナーツお兄ちゃん……じゃあ、僕からお兄ちゃんにお願いをしたいんだ。それを聞いてくれるなら、僕は全てを許したい」


「うん、何でも聞くよ。アスティンの為なら」


「イグナーツは、この王国でラルディ王女の傍に居続けて欲しいんだ。彼女の騎士として、王国の騎士として守り続けて欲しいんだ。そうすればきっと、王国は繁栄をし続けるはずだから」


「ア、アスティン……それでいいのかい? そんなことで僕の罪が……」


「それと、僕の前でラルディ王女に誓いの言葉をかけて欲しい」


「えっ?」


 ふと周りを見ると、彼の言葉を待つラルディだけじゃなくて、レナータ王女とハヴェル……それに王国の民たちも僕たちに注目をしていた。ラルディの返事が、王国としての運命が決まるとでも言うかのように。


「そっか、それなら言うよ。キミの為、ラルディの為に……」


「あら、イグナーツ。何かしら?」


 イグナーツから声をかけられるのを待っていたにもかかわらず、彼を見つめながら言葉を待つラルディ。


「ラルディ。僕と……いや、僕の半分のオレンジになってくれないかな?」


「――っ!」


「な、なんだぁ? オレンジ~? イグナーツの奴、何言ってやがんだ?」

「ダ、ダメ、ハヴィ。少し黙ってて!」

「お、おぉ……」


「イグナーツ。わたしの騎士様……喜んでお受けしますわ。あなたの人生の伴侶として、お受け致します」


「うん、よろしくね。僕のラルディ」


 ラルディの返事と共に、王国の民たちは喜びを露わにした。その言葉は王国の繁栄が約束されたものであったから。


「……お? 何か上手く行ったみたいだな。で、レニィ。あれはどういうことだ?」


「Media naranja……半分のオレンジ。それの意味は人生の伴侶になって欲しい。その言葉を彼なりに付け加えてラルディに言ったの。いいなぁ」


「へ、へぇ……」


「じー……」


「ま、まぁ、そのうちな」


「うん、期待してる」


 イグナーツとラルディ。良かった。僕の兄騎士もようやく幸せになれるんだ。これで僕も彼も、悲しい過去のことを忘れることが出来るんだ。


「レナータ。お前も、決めたことを妹に伝える時だ。そして、王女じゃなくなっても俺と来てくれるというのなら、ここで俺に誓えるか?」


「はい、わたしの運命はハヴェルさまと共にあります」


 喜びを見せているラルディ王女と、騎士イグナーツの元にレナータ王女が近づく姿を、僕は黙って見ていた。ハヴェルは僕の肩に手を置きながら、いつになく真剣な表情でもう一人の王女を見守っていた。


「アスティン、お前にも教えとくぜ。俺とあいつのこれからってやつをな!」


「へ? あ、う、うん」


 双子王女の恋。妹のラルディは人生の伴侶を得て、幸せを掴めた。残る姉のレナータ王女はどうなるんだろうか。僕は兄ハヴェルと共に、レナータ王女の言葉に固唾を呑んで見守った。

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