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ルフィーナ王女の騎士①


 ルフィーナの命じにより、騎士アルヴォネンに代わってカンラート、シャンタルとその娘、そして騎士マフレナ。途中でハズナと合流を果たした一行はようやく、ルフィーナの待つキヴィサークへ到着していた。


 ルフィーナに呼ばれたとは言え、誰も出迎えが無いままの状況にシャンタルは苛立ちを見せていた。


「ほぅ。中々に大国ではないか! 我がジュルツに引けを取らぬ城が建っているではないか」


「それよりも何故誰も出迎えが無い? 我が王女が我を必要としたからこその訪れではないか! 外の国とて最低限の礼儀は持つべきではないのか」


「確かに妙ですね。他国の馬車が到着しても、特に注目もしていないようですし、出迎える様子も見られないなんて」


「そう急くな。俺たちはルフィーナに呼ばれただけの身だ。他国民が知ることではないのだろう。あの城に我が王女と近衛騎士たちがいるはずだ。そこに向かえば良いだけだろう」


「――王女さま、今すぐ行きます……」


「ま、待て! 勝手に動いては駄目だ!」


 城を目がけて勝手に進みだすハズナを止めようとしたカンラートだったものの、止められるはずも無くハズナに先導されるようにして、渋々カンラートたちはルフィーナの待つ城へと歩き出すことにした。


「おい、いいのか? あの子供を先に行かせて」


「いいも何もエドゥが先に行かせてしまったのではないか! 貴様はヴァルキリーに怖れを持ち過ぎではないのか? 我が近くにいるからといって気を抜きすぎだ」


「むむむむ……何も言えぬ」


「カンラート様もシャンタル様も、どうか落ち着いて下さい。他国で夫婦喧嘩は不幸を招くかもしれませんし、王女殿下にお会いするまで気を静めて下さいませ」


 近衛騎士マフレナの落ち着いた雰囲気と語りかけで、とりあえずは双方共に落ち着きを取り戻すことが出来たようだった。そうこうしている内に、城門にたどり着いた一行。


「おぉ、ハズナ。俺たちを待ってくれていたのか?」


「違う。ここが開かない。貴様の肩を借りる為に待っていた」


「ふっ、エドゥはハズナにとって、梯子代わりの様だな。良かったではないか! 役に立ったぞ」


「むぅ……」


 何も言い返せないカンラートの肩をよじ登り、ハズナを始めとしてマフレナと、シャンタルも続いた。


「エドゥ。ヴィアをきちんと抱いておけ。我らは先にルフィーナを探しに行く。貴様は後で来い! その内に中から城門を開けてやる。それまでここで待て」


「お、おいっ!? それはないだろお前……すぐに開ければよい話では無いか」


「いきなり貴様が現れてはルフィーナが驚く。時間を置いてから会え」


 カンラートはあまり抱いたことの無い娘のヴィアを抱きながら、城門の外で途方に暮れるしかなかった。


「俺は騎士団の団長なのだぞ! 何故、子守をしていなければならぬのだ。ルフィーナにいち早く会いたいのはお前だけでは無かったというのに……我が娘、ヴィア。お前もそう思うだろ?」


「……」


「こ、こらっ、あ、暴れるな!」


 キヴィサーク城――


「な、何だあの男は――?」

「王女さま、今すぐにお助けします……」

「あぁ……ルフィーナ王女が何てことなのですか」


 アルヴォネン様が発ってからしばらく経った頃、ジュルツの報せはわたしとセラを驚かせた。カンラートだけが来ると思っていたのに、彼と共に義理の姉でもあるシャンタルとその子供までもが向かっているということを知り、心を躍らせていた。


 そうした中でも、相変わらずわがまま王子のわがままは日ごとに度を増して、とうとうわたしだけに対して、しつけと称し手を上げるようになっていた。といっても、女性に手をあげる行為は罪に問われることになることから、トビアス王子はそのフリをしてわたしに命令するようになった。


 これにはさすがにセラやテリディア、ルヴィニーアも黙って見過ごすことが出来なくなっていて、ひたすらに黙りながら、後ろ手を握ったままじっと耐えている日が続いていた。


「おい、ルフィーナ! 何やってんだ、早くやれよ! いつまでたってもお前だけは上達しないなんて、ひどいにも程があるぞー」


「ご、ごめんなさい」


 わたしのとある計画を実行に移すまで耐えて来ていたその日、彼がわたしに手を上げるフリをした時、トビアス王子は知らぬ間に彼女たちに囲まれていた。そしてわたしは、彼女に抱きかかえられていた。


「えっ? あ――」

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