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最強で最高のヴァルティア


「ふ……最高の妻、か。エドゥアルトがあんなことを恥ずかしげもなくほざくようになったとはな」


「……王女さまはドコにいる?」


「むしろこちらが聞きたいものだが、お前はルフィーナのヴァルキリーだろう? ハズナ・イニバーゼ。自分の名を忘れ、我らに対するとは何事だ」


「ドコにいる……ドコに――」


「もはや言葉も通じぬか? ならば、剣に聞くしかなさそうだ」


 長らくヴァルキリーとして最強を謳われていたシャンタルの剣はすでに、対するハズナに向けられていた。身長差があったにもかかわらず、手にしていた短剣をシャンタルの喉元目がけて突き刺そうと突っ込んできていたハズナ。


 両者の剣撃は互いの急所を狙っていたが外れ、剣と剣が火花を散らして辺り一帯に劈く様な衝撃音を響かせた。ブランクを感じさせないシャンタルの動きは即時に風を切り、幼きヴァルキリーハズナに鋭い刃先を向けていた。


「どうした? お前はアスティンを一瞬で倒したヴァルキリーなのだろう? 何故本気で戦わない。我は貴様が子供だからとて、攻撃の手を緩めることなどあり得ぬぞ?」


「……王女さま、ドコ……に――」


 最後まで王女の行方を呟きながら、力無くハズナはその場に倒れ込んだ。


「おっ! ヴァルティア、さすがだな。さすが最強で最高のヴァルキリーだ」


 少し離れた所で戦いの様子を眺めていたカンラートは、満面の笑顔を見せながらシャンタルの元へ駆け寄ってきた。


「貴様の目はやはり、節穴だらけのようだな。エドゥアルト! 貴様こそ、戦いから離れてぬくぬくとだらけ切ったまがいものの団長ではないか!」


「なっ!? な、何を言うか! 子供とは言え、ヴァルキリーに勝ったのだぞ? 何故喜ばずに俺を怒るのだ?」


「空腹のヴァルキリーなぞ、貴様ごときでも勝てたぞ。恐らくハズナは、アスティンの元からここまで迷いながらたどり着いたのではないのか?」


 シャンタルの言う通り、恐る恐るハズナに近付いて耳を傾けたカンラートは、すぐに異変に気付いた。


「む。確かにそのようだな。眠らずに、何も食べずにここまで来ていたということか。それならば俺でも勝てたかもしれんな」


「戯けが……貴様では勝てん」


「お、お前……何てことを言うんだ。全く、途端に厳しくなりおって。それで、どうするつもりだ?」


「聞くのか?」


「いや、決まっていることだ。ハズナを連れて、ルフィーナの待つキヴィサーク国に急ぎ向かうとしよう」


「それが賢明だ」


「向かう先が同じであれば、迷うことも無いだろう」


 空腹のハズナを抱きかかえたシャンタルは馬車の中に戻り、カンラートはそのまま馬に乗って、キヴィサークに向けて出発した。


「ルフィーナ王女……か。我が妹、ルフィーナ。城での迷いはとうに無くなっているはずであるが、今のお前はどれほどの輝きを見せているのであろうな。ふふ、愛しの我がルフィーナ。わたしはお前に早く会いたいぞ」

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