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いたずら王女とわがまま王子②


 テリディアたちが予想以上に早く戻って来てくれたはいいけれど、わたしの愛するアスティンは大丈夫なのかしら。


「ところで本物のアスティンの様子はどうだったの?」


「はい、彼についてはわたくしルヴィが剣の稽古をしました。不思議な男……そう思いました。弱いように見えたのですが、芯は強いと感じました。アレであれば、きっと勝負には負けずに済んでいることでしょう」


「あら? ではアスティンへの脅威の行方は見ていないのね?」


「ええ、アルヴォネン様がそのようにおっしゃっておりました。アスティンよりも、ルフィーナ様が大変な目に遭われていると焦りを見せておりましたので、わたくしたちもアルヴォネン様と共に、急ぎ参った次第にございます」


 なるほどね。アスティンったらやっぱり、不思議な魅力で女性を夢中にさせているのね。ふふっ、アルヴォネン様も案外ドジなのよね。その辺はさすが親子とも言うべきことかしらね。


「ルフィーナ様、先程から本物とか偽物だとかおっしゃっていますが、一体なんのことなのですか?」


 テリディアにもタリズにも説明をしなくてはいけないのかしらね。本物はともかくとして――


「おい、ルフィーナ! 庭の草むしりは終わったのか?」


「い、いいえ、まだですわ」


「なんだよ、ちっとも刈られていないじゃないか! お前はそんな簡単なことも出来ないのか? やはり、俺のことをよく分かってくれているのはセラフィマだけなのかもな~。お前は花嫁にすらなれないぞ」


「ご、ごめんなさい」


 悔しいことだけれど、今は素直に謝るしかないわ。確かにお庭の草刈りなんてしたことがないもの。タリズとの話に夢中になっていたとはいえ、トビアス王子の言いつけを破ったのはわたしですもの。


「……貴様、ルフィーナ様に向かって何たる無礼――」

「わたくしのルフィーナ様にその侮辱の数々……許すまじ」


「な、何だ!? 何でここに女騎士がふたりもいるんだ? それにお前は庭師のタリズだろ? 何でサボってるんだよ! 早くルフィーナに草を刈ってもらえよ」


「しかし、王子――」


「タリズ、それにあなたたち。その殺気をしまい込みなさい」


 今ここでわたしの身分をばらすわけにはいかないわ。どうせなら彼女たちにもわがまま王子を改心させるようなことをしてもらうというのも手ね。


「分かりましたわ、トビアス王子様。今すぐに草を刈らせて頂くわ。その間、わたしのえっと……お姉さまたちが、王子のお世話を致しますわ。それでよろしいかしら?」


「ふんっ! 何だよ、こんな綺麗な姉たちも呼んでいるなら早く言えよ! ほら、そこのふたり! 俺の部屋に来てくれよ。セラフィマと同じように世話をしてくれよな」


「ルフィーナ様の姉……何て幸せ者なのでしょうか。そ、それはともかくとして、どういう?」


「お、お願い……お姉さまたち。今はこの王子の言うことに従ってくれると嬉しいわ」


「わ、分かりまし――分かったわ。では、王子のお部屋に行きましょ、ルヴィ」

「そ、そういうことでしたら」


 偽アスティンこと、トビアス王子には今だけは機嫌を良くしてもらう必要があるわ。態度も大きくなりすぎて言葉遣いも「俺」だなんて使い始めたけれど、わたしのアスティンとは天と地の差がありすぎるくらいにムカついて仕方がないわ。


「ルフィーナ様? 王子に何か弱味でも握られておいでか?」


「フ、フフ……そうではないのよ。だからこそ、あなた、タリズの力をお借りしたいの」


「よく分かりませぬが、何となくの状況はあのお二方の殺気で理解しております。王子を何とかすれば、私めの国も良くなるということにござりますな?」


「お願いするわね」


 テリディアたちにあんな姿を見られたのは仕方のないことかもしれないわ。それでも、あの王子には必ず痛い目に……ではなくて、この世界の厳しさを教えて差し上げるんだから! 今はそれまでいい気になっていても構わないわ。ふふふ……どうしてあげようかしらね。

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