とある国のお嫁さん候補②
王の間に進み、足を踏み入れるとわたしたちは何故か、行列の最後尾でその列は花嫁希望の列だった。
列に並ぶ女性たちはみな、どこかの姫たち、あるいは町一番の綺麗な女性たちが思い思いに並んでいるみたいだった。
「ルフィーナ様、これは駄目だ。最後尾ならこのまま抜け出しましょう」
「フフッ、なにやら面白そうな予感がするわね。このまま並んでおきましょ」
「ええっ!?」
そして、わたしたちの出番になり、国王の前に立って驚いた。
「カンラート!?」
い、いえ気のせいだわ。いや、それよりも端に立っている彼は……アスティン? どういう国なのここは。まるで夢の様な国じゃない。
国王はカンラート、末王子らしき人物がアスティンに似ていることに気付き、ルフィーナは見惚れている。
「そなたの名はなんと申す?」
「わたくしはルフィーナ。彼女はセラフィマですわ」
「フム……他の女性とは違う輝きをお持ちのようだ。そなたを見込んでお願いがあるのだが、聞いてくれるか?」
聞けば、末王子は何かに夢中になったことがないと国王は仰っている。カンラートにちょっと似の彼のお願いに首を横に振ることなんて出来ないわ。
「わたくしがなんとかして差し上げますわ!」
「そう言ってくれると信じておったぞ! 我が子息で末王子トビアス・キヴィサークを救ってくれ。もし王子を何かに夢中にさせたあかつきには、お嫁さん候補に加えてもよいぞ!」
「分かりましたわ!」
「ルフィーナ様?」
(心配しなくてもわかっているわ。候補になるだけで、花嫁になるわけではないのだから、彼を助けてあげましょ)
お嫁さんは無理だけど、アスティン似の末王子のためになんとかしてあげたいと意気込むルフィーナだった。
「ちょっと、姫さん? いや、ルフィーナ様は王女ですよ? それもアスティンという男がいる……」
「フフッ……身分を隠しての花嫁候補だなんて、面白いことだわ! セラも一緒に協力してね」
「ええっ? い、いや、でもこれは……」
ここで異国の王子がセラに惚れれば、セラにも素敵な人が出来そうな予感がするのよね。その内に気付いたアルヴォネン様が駆けつけて来るまでに、王子をその気にさせることが出来たら面白くなりそうね。
「セラはアスティンが迫ったくらいの魅力がある女性なのよ? もっと自信をお持ちなさい」
「いや、アレはアスティンが幻覚を……あ――」
「ルフィーナとセラフィマ……僕の部屋に案内する。付いてきて」
「分かったわ! 行くわよ、セラ」
「どうなってもあたしは知らないですよ?」
アスティン似の王子。なんて面白くなりそうなのかしら。願わくば、セラにも素敵な恋が出来るように祈らなければね。




