表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わがまま王女と駆けだし騎士の純愛譚  作者: 遥風 かずら
外伝ストーリー②:プリンセッサと騎士たち
55/151

55.王女レナータと恋の行方


「ここが王国か。でも、お前と俺しかいねえな。本当の場所とは違う所に俺を招いたんだろ?」


「――うん」




 ハヴェルは俺たちが見ている前で、水の壁で出来たらしい魔防壁の中に包まれていった。俺とドゥシャン、ルカニネ、それにイグナーツとラルディ王女はそこで立ち尽すしかなかった。


「ヒゲ騎士だけ何故……」


「え、えっと、ラルディ王女……ハヴィは、その……」


「事情の知らぬアスティンはお黙りなさい! あのヒゲ騎士……ヒゲはもう無くなっているけれど、あの男との出会いはアスティンと出会うよりも、もっと昔のことよ。あなたごときが口出ししないで頂きたいわ」


「う……ごめん」


「おいおいおい! イグナーツと一緒にいるそこのねーちゃん! その言い方は……」


「雑魚はお黙りなさい!」


「うおっ!?」


 驚くドゥシャンの足元には鋭く尖った氷の塊が出来ていた。一歩でも動けば怪我は免れないくらいの氷だった。


「全く、なにしてるんだか……私、これでもヴァルキリーなの。それに口は悪いけれど、コイツのこと気に入ってるんだよね。だからさ、王女さん。下手な事をしたら、ただじゃ済まさないからね?」


「ちょっと、ルカニネ! だ、ダメだよ」


「泣き虫アスティンは、黙っててくれない?」


「は、はい」


 ど、どうすればいいんだ。ハヴィは中に入っちゃってるし、でもラルディを止めなきゃだし……。


「ラルディ、しないよね? 良くないことはもうしないって約束したよ?」


「愛するイグナーツ、分かっているわ。あの氷もすぐに融けるものなの。むしろ、あちらの方が良くない感じがするわ。すぐに怒るだなんて、よほどわたくしが嫌なのね。それでもわたくしはイグナーツさえいてくれればいいの。ヒゲ騎士だけが中に入ったのもきっと、お姉様の想いを伝える為だけのことに違いないわ」


「……ラルディ」


「それさえ済めば、わたくしとイグナーツとお姉さまとで王国は永遠に守られるわ。王国に入れるのはお姉さまが招いたヒゲ騎士だけ。アスティンとそこの連中を入れるつもりなんてないわ」


「それは良くないよ。僕がお願いしても駄目かい? アスティンは僕の弟のようなものなんだ。ドゥシャンも同じ騎士仲間なんだ。ルカニネさんは初めてだけど、でもジュルツの騎士なんだよ。彼らだけを拒むなんてことはして欲しくないんだ」


「うぅ……貴方が言うなら」


「あのラルディ王女がイグナーツの言葉であんなにもしおらしくなってるなんて、本当にすごいなぁ。恋する王女、愛する騎士ってすごいんだなぁ」


「アスティン……キミ、間抜けよね。それそのまま、あなたとルフィーナ様のことよ? その場合は恋する騎士と愛する王女だけどね。キミは自分のことを分かってないんだね。そこが憎めないとこだけどさ」


「いや、はは……ごめん」




「レナータ王女、か。ジュルツで双子を見た時は子供だったのにな。それがまさか、どっちも王女でしかもびくびくして怖がってたお前が、あのキツイ妹王女の姉なんだもんな! 世の中、不思議だな」


「もう! ハヴィだって似たようなものじゃない! 騎士なのにヒゲ生やしてたし……って、あれ? ヒゲが無い。え、それって……あ、あの……ハヴェルさま、あの約束ということでいいの?」


「――あぁ、レナータを迎えに来たんだ。王女じゃなくなってもいいなら、俺と一緒に来い。来てくれるか? 俺の愛するレナータ」


「愛しのハヴィ――ずっと、お待ちしていました。あなたがわたしの傍にいて下さるのなら、わたしは王女ではなく、あなたのレナータとなります。ハヴィ、あなたが大好き」


「俺も、レナータ。お前を愛している。俺と一緒になってくれ」


「あぁ、ハヴェルさま……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ