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わがまま王女と駆けだし騎士の純愛譚  作者: 遥風 かずら
外伝ストーリー①:プリンセッサの脅威
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45.父子の葛藤と決意


 俺はこのままここで泣きっぱなしで時間だけを過ぎさせていいのだろうか。だけど、イグナーツお兄ちゃんと本気で戦うことなんて望んでない。俺はどうして駄目なんだよ。見習い騎士から副団長……そんなの、全然、何も変わってないし変われないんだ。好んで戦いたくないし、愛する人の傍にいたいだけなのに。


「バシーーーーーーーーン!!!」


 えっ!? この頬に伝わる激しい痛み……まさか、シャンティが!? ち、違う……え、そんな。


「アスティン、夢から醒めたか? ふ、それとも想いを寄せていたかつてのヴァルキリーのことがよぎったか?」


「と、父さま!? な、何故、ここに?」


 気付くと、部屋の中には俺と父様だけになっていた。ドゥシャンも、他の方たちも無事だったのだろうか。それと、ハヴィはどこにいるんだろう。


「ハヴェルの行方が気になるか?」


「は、はい。ずっと様子がおかしくて、この国に入ってから彼は姿をくらましてしまったんです。俺は、副団長として認められていないのでしょうか」


「いや、そうではない。アスティン、我が息子よ。お前に話してこなかったことを話そう。そして、それを聞いた上で、決意を固めるかどうかを大いに悩むがよい」


「……え」


 父さまはルフィーナとの約束も俺には特に教えなかった。それ以上に俺が知らないことがあるというのだろうか。ハヴィのことも、イグナーツのことも。


「お前も知っての通り、イグナーツはかつて、騎士団の一員だった。そして、お前の兄騎士でもあった。若くして剣の腕も、騎士としての心構えもあやつは飛びぬけていたのだ。だが、優しすぎたのだ」


「で、では、やはり俺もこのまま優しいままの騎士ではダメなのですか?」


「そう急くな。そうではない。イグナーツは、実力を兼ね備えた騎士だったが、戦地に赴いたその時……あやつの目の前で、民を……いや、身内を助けられなかったのだ。そのことを悔やみ続け、いつしか自身の記憶と思い出を封じてしまったのだ。だから、幼きアスティンにはその事実を話すことなど出来なかったのだ」


 俺が見習い騎士として少しずつ覚えて来た時、イグナーツは戦地で行方不明となり、帰らぬ人となったことを聞かされていた。それは認めたくなかったことだった。


 いつかどこかでどんな形でも彼に会えればいい。そんな思いを抱きながら俺は、騎士になれた。イグナーツのおかげで、俺は騎士を目指そうと決めたのだから。それがまさか、望まぬ形で出会えるだなんて思ってもみなかった。


「アスティン。お前は今や、他のどの騎士よりも強く成長した。それは我の誇りだ。だが、心の弱さだけは簡単にはいかぬ。そして勘違いをしてはならぬのが、優しき心は捨てずに己の心を厳しくすることこそが騎士としての強さの証だ。だからこそ、力の限りを尽くしてお前の想いを奴に……イグナーツにぶつけることは出来ぬか?」


「そ、それは、でも……」


「そしてもう一つ、ハヴェルのことだが奴は、密かにイグナーツの行方を探す王命を帯びていたのだ。この事を話すかどうかも迷っていたが……」


「父さまらしくありません! 俺に真実を……」


「あい、分かった。ハヴェルはお前とヴァルキリーが旅をしている最中、イグナーツを探し追い求めていた。そこで出会ったのが、マジェンサーヌ王国から来ていた王女たちだったのだ。奴は王女の片割れでもある、姉王女に想いを寄せられた。そのことがあの王女を狂わせたのだ。ハヴェル自身はあの通り、素をさらけ出す男だ。それゆえに、姉王女もハヴェルと共にすることを決めたのだろう」


「そんなことが……しかし、どうして俺やハヴィが狙われなければならないのですか?」


「我とハヴェルはルフィーナ姫とカンラートを救い出すために、レイリィアル国へ向かっていた。その最中に、イグナーツと王女たちに出会った。記憶の無いイグナーツはハヴェルに剣を向けたのだ。そこで、王女たちはイグナーツと、ハヴェル……各々についてしまったのだ。そこから時は刻まれたのだ……」


 これが真実……だとしたら、ハヴェルはもう一人の王女様を迎えに行くつもりなのかな。でもその前に、かつての仲間騎士と剣を交えるとしたら、ハヴィに勝ち目は……だ、ダメだ、そんなの。俺が、副団長の俺が仲間を守らないでどうするんだよ。イグナーツお兄ちゃんとは、俺が戦わないと駄目なんだ。


「アスティン、勝てるか? 己の心に」


「俺はもう、かつての見習い騎士だった頃のアスティンじゃありません。守るべき人もいるんです。俺は、過去に囚われているイグナーツと剣を交えて、彼を救い出してみせます!」


「よく言った。さすが、我が息子。では、我はお前を守護するヴァルキリーを付けるとしよう。ふ、もっとも、お前も、そして彼女も嫌かもしれぬがな」


「へ?」


 父さまの声かけに応じて、部屋の外で待っていたヴァルキリーが俺の前にやって来た。あー……確かに嫌です。俺以上に彼女も嫌な顔をしていますけど、俺を助けてくれるんでしょうか……父さま。


「嫌かもしれぬが、あの魔法を使う王女に対することが出来るのはヴァルキリーだけだ。王女を封じて、アスティンは力を尽くして奴に挑むがよい」


「はっ! 分かりました」


「……騎士ごときに倒されたら、倒されるまえにわたしがお前を倒す。それが王女さまのためだから……」


 俺をあっけなく倒してくれた幼きヴァルキリー、ハズナ。何でこの子と一緒に戦うことになるんだろうか。ルフィーナに忠誠を誓ってるなら、俺にも誓ってくれてもよさそうなのに……参るなぁ。

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