41.アスティンの胸騒ぎ①
女性騎士のアリーさんに案内されて、騎士の国レイバキアにたどり着いた。アリーさんは、ルプルを手当てすると言って、どこかに行ってしまった。ここに残されたのは、俺たち男騎士だけ。気のせいなんかじゃないけど、どこからか常に見張られている感じがする。それなのに一人だけ嬉しそうにしていた。
「アスティン、ここは素晴らしい国だぜ! お前もそう思うだろ?」
「そんな事言っていいの? ドゥシャンには彼女がいるじゃないか~」
「かてぇこと言うなよ。別に何かするわけじゃねえんだ。お前も、たまには羽伸ばせよ! 王女様を愛してるのは承知だけどよ」
「い、いや俺は別にいいよ。ドゥシャンだけ楽しんでくればいいじゃないか。俺はルプルの様子を見て来るよ」
「お前、王女様がいながら、あの弱っちい見習い騎士を気に掛けてんのか? ったく、お前は気を回しすぎなんだよな。俺やハヴェルを見習えよ。なぁ、ハヴェル……ん? あいつ、どこに消えた?」
ハヴィは女騎士たちに囲まれた時から、様子がおかしかった。誰か知り合いがいたのかもしれない。だけど、そうだとしても、険しい表情をしていた。思えば、ミストゥーニから出た辺りからおかしい気がする。
「ハヴィはここに来たことがあるのかな?」
「あるわけねえだろ。俺もお前も、ハヴェルも王女様がいなければミストゥーニには入れなかったんだぜ? 霧の国にまともに入れねえのに、そこから先のこの国にどうやって来るってんだよ?」
「そ、そうだよね。じゃあ、俺、ルプルの所に行ってくるよ。ドゥシャンも気を付けてよ?」
「へっ、いらねえ心配すんなよ。俺はとりあえず、女騎士の宿舎にでも顔出して来るぜ! お前も後で来いよ」
全く、ドゥシャンも仕方ないなぁ。ルカニネが一緒じゃないからって、調子に乗りすぎだよ。ルフィーナ、俺は心配ないからね。俺にはキミしかいないんだ。
「あの、怪我をした騎士はどちらにいますか?」
「……失せろ」
「ええ? 参ったなぁ。話しかけてもダメなのかなぁ」
軽い傷とは言え、矢傷を負ったルプル。彼女を手当てしてくれるということで、どこかに連れて行ってくれているはずなんだけど、それがどこなのか分からない。見渡す限り、女性しか見当たらないこの国で単独になってしまったのは、結構寂しく感じていた。
昔、シャンタルと女人の町に行ったときは散々な目にあってるだけに、ドゥシャンのような浮かれ気分にはなれなかった。ハヴィも近くにいないし、ドゥシャンもそうだし。こういう時、カンラートがいればきちんと統率が取れていたんだろうなぁ。そんなことばかり考えてしまう。
「そこのお前! 何をきょろきょろしている? 何故ここにいる……」
「え? いえ、見習い騎士の女の子の行方を知りたいのですが、場所が分からないのです」
「見習い騎士? では、お前が外から来た騎士の男か。ふ、そうか……ジュリアートが好きそうな男だ。いいだろう、案内してやる。お前一人か?」
「今はそうですね。なにか?」
「ならば、問題なさそうだ」
「……え?」
「気にするな。こちらのことだ」
「あの、アリーさんはどちらに?」
そもそもルプルに手傷を負わせたのも、あちらの勘違いから始まったことなんだよな。本来なら、失礼な行為にあたるのに。それなのに、丁重に迎えられるどころか周り中敵だらけのような感じがする。
「アリーは、多忙だ。お前、名は?」
「アスティンですが……」
「では、アスティン。お前は騎士の宿舎で休ませてやる。そこでなら、街中のように視線に困ることは無いだろう」
「あの、我が見習い騎士の所へ行きたいのですが……」
「心配するな。後で会わせてやる。黙って付いてくればよい」
「は、はぁ。分かりました」
騎士の宿舎なら、ドゥシャンもいるかな? 何にしても黙って付いて行くしかないよね。
「……」
なにか嫌な予感しかしないけど、何かが起こる前に、俺は俺の部下を守らないと駄目だ。男の姿が無い所は油断しちゃダメなんだ。シャンタルに教わったことを、今こそ俺はきちんと守ってみせる。




