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24.いたずらに目覚めた姫さま


 わたしの教育係であるナミュールは、お洋服の畳み方、歩き方、礼儀や言葉遣いなど、将来の為にと教えて来る人だった。ママはわたしを甘やかさない人で、ナミが教え足りないところを詰め込んで教えるくらいに厳しかった。それもあって、わたしは対抗心でどんどんと何かをしたくなっていた。


「わたし、姫なのにどうしてお洋服をたたむことまで覚えなきゃいけないの?」


「姫様。あなたは城の中だけでしか生きられない姫様になりたいのですか? そんなことは許されませんよ! あなたはいずれ王女様になるのです。外の世界に飛び出した時には自分で何でも出来なければ、誰もやってはくれないのですよ?」


「ア、アスティンがやってくれるもん」


「いいえ、アスティンは男の子なのですよ。いいのですか? 姫様のお召し物を男の子が触ることになっても」


「やー」


「ほら見なさい! 王妃様もご自分でされる時があるのです。姫様も、いつもじゃなくていいですからご自分のお召し物を畳めるようになさってくださいね」


 お城の中ってきゅうくつすぎる! お庭に出たいのに、アスティンとも遊びたいのに! わたしの味方になってくれる人は城の中にいないの? こうなったら困らせてあげるんだから!


「姫様? どちらへ行かれるのです? こちらには何もありませんよ」


「おさんぽなの! だからわたしひとりであるいているの」


「では、私もお供しましょう」


 むー……何でついて来るの? むむむ……


「ねえ、このおへやはなにがあるの? はいっていーい?」


「では、私もご一緒しますね」


 ふふっ、一緒に入ってくれてよかったわ。これであとは奥まで入ってくれればバッチリ!


「姫様? このお部屋は今は使われていない倉庫のようなものなのです……あら? 姫様?」


「わたし、ほかのところにいくわねーバイバイー!」


「ひ、姫様!? あけてー姫様ー!! か、鍵なんかかけて、こんなこと、許されませんよ! もうっ!」


 わたしのいたずらな日々はここから始まったと言っても間違いじゃないかもしれない。教育係のナミをお部屋に閉じ込めたわたしは、お城の中を隈なく探検することにした。


「む? そこにいるは誰か?」


「だれかー開けて下さい~!」


「鍵がかかっているではないか! して、そなたはどうして部屋に閉じ込められていたのだ?」


「姫さまのいたずらにかかってしまいまして……騎士様、どうか姫様をお探しくださいませ!」


 ルフィーナ姫か。確か、我が弟アスティンの婚約相手だったな。仕方のないことだが、姫を探すとしよう。


「あら? あなたはカンラートではありませんか。騎士のあなたが何故ここへ?」


「は、私が参りましたのは、国王陛下と騎士団長殿に呼ばれてのことにございまする」


「そうなのですね。では、あなたは王の間へ急ぎなさい」


「し、しかし、姫様をお探ししないと……」


「ルフィーナがどうかしましたか? どうせその辺に隠れているに違いないわ。こういうことは騎士であるあなたがやるべきではないわ。あの子……フィアナに任せておけば、すぐに見つかるわ。さぁ、お行きなさい」


「ははっ! では、王妃様。失礼致しまする」


 ふむ、アスティンが好きな姫さまを見ておきたかったが、まぁいい。いずれ会えるだろう。それよりも王の間に急がねばならぬな。


「フィアナ、ルフィーナを見なかった?」


「いいえ、見ていないです。あの子が何か?」


「教育係のナミュールをお部屋に閉じ込めて、どこかに行ってしまったそうよ。あの子は今までこんないたずらなんてしたことが無かったのに。とにかく、フィアナ。あの子を見かけたら教えて頂戴ね」


「はい、お母さま」


 ルフィーナのいたずら。あの子がこの国の王女になるのね。その為に厳しくされているけれど、王妃様の厳しさはかえって、あの子の成長を……ううん、私が言うべき事ではないよね。私はあの子の姉として成長を見守りながら、厳しさと優しさを教えて行かないと駄目なのだわ。


 よいしょよいしょ……わぁ~お外に出られたわ! ふふっ、ここならアスティンが会いに来たらすぐに見つけてくれるわ。


「あっ! ルフィーナちゃん。ぼくをまっててくれたの?」


「アスティン! うん、まってたの。おにわにいきましょ」


「わぁーまってー」


「アスティンはわたしのおよめさんなのだもの。わたしがしっかりしなくちゃだめだもん」


 アスティンを見かけてすぐに、彼と手を繋いでお庭に駆けだした。運命ってこういうことを言うんだわ。


「ち、ちがうよ。ぼくはルフィーナちゃんのきしになるんだ! ぼくはキミのきしだよ」


「そうなの? アスティンはわたしがすきなのね。わたしもアスティンがだいすき。ずっといっしょにいてね」


「うんっ! もちろんだよ、ルフィーナちゃん」


 城の中の退屈な毎日を、いたずらで何とかしながらわたしはこっそりとお庭でアスティンと遊ぶ日々を過ごしていた。彼と一緒にいる時は、お城の中でのいたずらな心を出すことが無かったのだけれど、アスティンとずっといるうちにわたしは彼に甘えるようになってきて、そして彼に初めていたずらをしかけることにしたのは、出会ってから5年後のことだった。そこからまたわたしと彼の運命が少しずつ動き出す――

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