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22.アスティンの兄たち:前編


「アスティン、騎士の宿舎に行くか?」


「き、騎士の? そ、そこにはたくさんいるのですよね。ぼ、僕にはまだムリです」


「そう弱音を吐くでない。何もせん。まだお前には何も教えられぬ。なに、騎士には頭の固い奴だけがいるわけではないぞ? お前には兄妹がおらぬ。だから、騎士の中で兄として世話をしてもらえばよい。お前を可愛がりたいと志願している奴が4人いるのだ。会ってくれるか?」


「僕の知っている騎士なのですか?」


「ハヴェルいや、ハヴィは知っているだろう? 騎士らしくないがいい奴だ。そして、カンラート。副団長となることが決まっているが、とても面倒見がいいぞ。ドゥシャンは口は悪いが悪い奴では無い。そして最後に、イグナーツだ。奴は戦場に赴くことが決まっているのだが、その前にお前と遊びをしたいと言って来たのだ」


「父さま、遊びとはどのようなことをすればいいのですか」


「奴等から教わればよい。兄の様に慕い、兄と呼べば自然と仲良くなれるであろう」


「わ、わかりました」


 そして僕は運命の騎士たちと出会うことになる。


「おぉ! アス坊じゃねえか。よく来たな!」


「ハヴィ。よ、よろしく」


「アスティン、俺はカンラートだ。年は離れているが、兄と呼んでいいぞ。俺もお前のことを弟として相手をしよう」


「カンラート兄さん?」


「カンラートにさん付けなんていらねえぜ? コイツはイイ子ぶってるが、アスティンと同じ位の時には悪ガキだったらしいからな! ってことで、俺はドゥシャンだ! アスティン、頼むぜ」


「よ、よろしくドゥシャン」


 そして、イグナーツ。彼との思い出はここで遊んでくれたこと。そのことはずっと忘れない。


「アスティン。僕はイグナーツだ。キミよりは少しだけ上なんだよ。僕は戦場に行くことが決まっているんだけど、キミとどうしても遊びたいんだ。僕も兄妹がいなかったからね」


「う、うん。イグナーツ、一緒に遊ぼうね」


「僕とキミは兄弟だよ。血の繋がりなんて関係ないんだ。もちろん、他の騎士もそうさ」


 思えば俺が自分のことをずっと、僕と呼んでいたのはイグナーツ……彼の言葉がすごく優しくて、一緒にいる時間が長かったからなのかもしれない。


「アスティンは姫様と婚約をしたんだろ? どんな子なんだ? 可愛いか? 俺にも紹介してくれ」


「え、えっと、すごく可愛いよ。婚約がよく分からないけど、ずっと一緒にいるって約束したんだ。だから、ドゥシャンには紹介出来ないよ」


「姫さんだろ? 俺は間近で見たぜ! あれは将来、美人になるぜ。間違いねえ」


「ハヴィは好きなコはいないの?」


「俺か? 俺は野郎と遊ぶ方が好きだな。何より、髭のことをいちいち言わないところがいい」


 ハヴィの髭は出会った時はあまり目立つほどでは無かった。なのに、しばらく会わないうちにチクチクになってた。どこまで伸ばすつもりなんだろう。


「アスティン、女の子には優しくしなければ駄目だぞ? 特に、怒らせたり泣かせたりしてはダメだ! 俺と約束してくれ」


「わ、分かったよ、カンラート」


 こうしてルフィーナの所に行けるようになるまで、騎士の宿舎では4人の兄たちと遊ぶ日々が続いた。そして、他の3人は城に行くことが多くて、イグナーツと長く一緒にいることが増えた。


 他の兄たちよりも歳の近い兄、イグナーツ。優しい騎士との出会いが幼かった俺の支えとなり、見習うようになって彼のような騎士になると決めたのかもしれない。

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