21.お嫁さんとお姫さまの婚約
僕はルフィーナちゃんに手を握られながら王様のいる部屋に来てしまった。うぅ、怖いよ。僕は何もしてないよ? これからどうなるの。
「アスティン、手をはなしちゃうけどどこにもいっちゃだめよ」
ルフィーナちゃんは僕から手を離して、王様のいるところに駆けて行ってしまった。
「アスティン。ここへ来なさい」
「は、はい」
「王が怖いか? そう怖がらなくともよい。私はジュルツの王、アソルゾ。ルフィーナの父親でもある。アスティン、お前は我がルフィーナと共にこの国を創っていく騎士となることが決まっている。お前はどうなのだ?」
「ええ? ぼ、僕はまだ騎士なんてできないです」
「では、ルフィーナと一緒になることは嫌か?」
「あら、パパは知らないの? アスティンはわたしのおよめさんになるってきまってるの! だからいやじゃないの」
お、お嫁さんって、さっきの話って本当のことだったの? それを言うならおムコさんだよね。
「そうなのか? アスティン」
「えっと、僕はルフィーナちゃんとやくそくをしたです。ずっといっしょにいるっていいました」
「そうか。はっはっは! お嫁さんか。もうすでに会っていたのだな! さすがルフィーナだ。アスティン、我がじゃじゃ馬ルフィーナをよろしく頼む。なに、騎士と言っても最初は見習いなのだ。城の騎士たちのようにはなれぬよ。アルが父親なのであれば、アスティンはきっと立派な騎士になれるだろう」
「そ、それじゃあ……?」
「怖がらせるつもりはなかったのだがな。ルフィーナが決めた子なら間違いないだろう。アル、お前はすでにこうなると分かっていたのだろう?」
「ふ、我は何もしとらん。アスティンと姫様が自然と出会っていたに過ぎん」
「ぼ、僕はルフィーナちゃんとやくそくを……」
「ふむ。アスティンとルフィーナは、今日この場で以って婚約の間柄とする。よって、今後は我が城において、ラケンリースの名を持つ者は入城の許可は求めぬものとする。盟約として、アスティンは自由にルフィーナの元へ参るものとする」
「アソルゾよ、こやつが見習い騎士となった時でも盟約は続くものとするのか?」
「ああ。そうだ。それならばルフィーナは無闇に城の外へ行くことはあるまいて」
僕とルフィーナちゃんとの約束はよく分からないままに、婚約と言う名前に変わってて、僕はルフィーナちゃんとずっと一緒にいることが約束された。ルフィーナちゃんを見ると……って、あれ?
「ルフィーナちゃん? あれっ? ど、どこに行ったの?」
「あの子ったら、すぐにどこかに行ってしまうのね。ごめんなさいね、アスティンくん。あの子は同じ所にずっといると退屈しちゃうみたいなの。だから、あなたが一緒にいてあげてね」
「えと、あの……?」
「ふふふっ、そうよね。お名前を教えてあげないと分からないよね。わたしはあの子の姉で、フィアナって言うの。アスティンくん、よろしくね!」
「フィアナ……おねえさん。は、はい、よろしくです」
優しいお姉さんに出会えた。僕はフィアナお姉さんとも話がしたくて、お城に来るのが楽しみになっていくようになる。
「アスティンはわたしのおヨメさんなのね~うふふっ、これからまいにちがたのしくなるわ」
「姫様。どちらへ行かれるのですか?」
「ど、どこでもないわ。お、お庭にいくの! だからそこをどいてよ~」
「なりません! わたくしは姫様の教育係を仰せつかっているのですよ? 姫様を自由にさせてはわたくしは国王様や王妃様に叱られてしまいます」
「いやよ! わたしはお庭にいくの! お庭でアスティンとあそびたいの。ナミュールこそ、どこかにいってくればいいじゃない」
「そんなわけにはまいりません! さぁ、お部屋に行きましょ」
「う~~! ナミュールのケチ!」
「いくらでもお聞きしますよ。姫様の為ならね」
わたしはお城の中じゃあまり自由に動けない。将来は王女になるだなんて、今から言われても分からないのに。それなのに、パパやママはわたしを厳しくするために教育係を付けている。必要ないのに。
「ナミ! あなたはナミって呼ぶんだから!」
「それでいいなら構いませんよ。ルフィーナ様は、人の上に立つ御方なのですからね」
「む~~!」
アスティンと婚約が決まったのに、お城の中の人たちはわたしを自由にさせてくれないみたいだった。こんなことで負けるわたしじゃないもん。こうなったらお城の中を探検するしかないわ。そうすればきっとお外にも自由に行くことが出来るもの。うふふっ、待っててねアスティン!




