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20.お庭のおひめさま


「アスティン、今から城へ行くぞ」


「お城に? え、で、でも……僕が行ってもなにも出来ないです」


「なに、お前のお嫁さんに会わせたいだけだ」


「およめさん? ぼくはもうきまっているのですか?」


「ああ。これは城との、いや、盟友との約束でな。まずはお前を王に会わせようと思ってる。それから、おまえの将来のお嫁さんに会わせるぞ」


「わ、わかりました」


「アスくん、おひめさまを泣かせちゃダメよ? いい?」


「うん、おかあさん」


 ぼくは父さまの後を必死に付いて歩きながら、ジュルツ城を目指した。お城には初めて行くことになるんだけど、こわいところなのかな? おひめさまはどんな子なんだろ。会えば分かるよね、きっと。



「アスティン、迷子になるなよ。もうすぐ城門だ。ここからは真っ直ぐに進むだけだ。さぁ、参ろうぞ」


「まってください~父さま」


 うう……足が早いです、父さま。ぼくの目の前には確かに大きな城が立っていて、そこに行くまでにたくさんの騎士がぼくを見つめながら、姿勢よく整列している。なんかこわいなぁ。このまままっすぐ進んでいいのかなぁ? 父さまのすがたは見えないし、ぼくもそのまま進んでいいのですか?


「アス坊、どうした? どこか行きたいのか?」


「あ、あの僕、お城に」


「んー? アス坊だけじゃ入れねえぞ。父ちゃん……団長はどこ行ったんだ?」


「あっちに進んで行ったんだ」


「城の中? そうか置いてかれちまったのか。さすがに俺の判断じゃ連れて行けねえしな、アス坊、そこで待ってな! 俺が団長を呼んできてやるよ」


「あ、ありがとうハヴィ」


「気にすんな!」


 騎士っぽくないハヴィは、僕に優しい。父さまの息子だからなのかな? でもここで待ってるのは怖いよ。どこかで大人しく座ってたいよ。


 僕は騎士たちがいるところがすごく嫌だった。だから、いないところを探し歩いてそして、そんな怖そうなところとは違う庭に迷い込んだんだ。


 ここはお花畑なのかな? お城にもこんなところがあるんだ。草も生えてて青々してて、何だか優しい場所に思えた。ここなら騎士たちもいないし、すごく安心出来るよ。僕は騎士たちに見つけられるのが怖くて、お庭の奥まで進んでみた。そしたらそこに、女の子がひとりだけいた。


 僕の家の近くに生えている雑草と違って、優しく刈られていて女の子は草の上に座っていた。僕はその子を見ただけなのに、その子しか見えなかった。お花に夢中の女の子が僕に気付いて、そして――


「だぁれ?」


「え、えと、ぼ、ぼくは」


「わたし、ルフィーナなの。あなたはだぁれ? どうしてここにいるの?」


「ぼ、ぼくはアスティン。あ、あの、ぼくはおひめさまにあいにきたんだ」


「あいにきたの? どうして?」


「お、およめさんになるんだ、だから」


「アスティンがおよめさんになるの? そうなんだ~あなたならきっと、いいおよめさん」


「ち、ちがうよ、そ、そうじゃなくて」


 ど、どうしてこんなに可愛い子が1人でここにいるんだろう。だれも近くにいないのかな? うぅ、可愛すぎて上手くコトバが出て来ないよ。


「アスティン、これあげる」


「コレは?」


「おねえさまからもらったの。げんきがでるあまいものなの」


「あ、あまい。だけど、おいしいよ。あまくていいにおいがして……」


「アスティン、わたしとおともだちになってね」


「うんっ、ぼくはルフィーナちゃんのともだちだよ!」


 迷って来た僕に驚くことなく、僕と友達になると約束した女の子。ルフィーナちゃんとの出会いが僕の運命を大きく変えることになるとは思ってなかった。


「アスティン、ここにいたか! 探したではないか。ぬ? あの子は……」


「父さま、よ、よかったです。会えて」


「アスティンよ、あの子がどういう子なのか、知っていてここにいたのか?」


「えっ? ルフィーナちゃんって言うんです。友達になりました」


「そうか、運命の出会いをすでに果たしていたのか。さすが我が息子だな」


「運命?」


 父さまはそう言うと、ルフィーナちゃんの前で膝を付き、丁寧な言葉で話しかけた。


「ルフィーナ姫様。姫様のお父君が探しておりましたぞ。さぁ、我が手をお取りくださいませ」


「パパが? アスティンもいくの?」


「ええ、もちろん」


 どういうことなのかな? 父さまがルフィーナちゃんにあんな態度で話すなんて。それに僕も一緒に行くって、王様の元にってことだよね。緊張しちゃうよ。


「では、姫様」


「やーよ。わたし、アスティンと手をつなぐの」


「え?」


「いきましょ、アスティン」


「わわわっ」


 僕はルフィーナちゃんと手を繋いだままで、怖くて進めなかった城の中へと進むことが出来た。途中で、ハヴィが親指を立てて笑ってたけど、何が面白かったのかな?


「ふ、さすが盟友の娘だな。すでに威厳が備わっておいでだ。アスティンの姫、か。行く末がすでに分かってしまうな」


 僕はルフィーナちゃんに力強く手を握られながら、奥へ奥へと引っ張られ王様の所へ連れて来られてしまった。僕はどうしてここにいるんだろう? 父さまは離れた壁の所に立っているし、どうなるんだろ僕。

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