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わがまま王女と駆けだし騎士の純愛譚  作者: 遥風 かずら
迷いと戸惑いの新たな始まり
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16.なびきの髪と風刃


「起きて、ハヴェル。ハヴェルってば!」


「んが~~……もう飲めねえぜぇ~」


 駄目だ。すっかりやられちゃってるよ。このまま酒場に置いておくのはさすがにまずいよね。でも宿は取ってないし、どうしよう。浜辺に行ってルフィーナの姿を見たいのに……。


「わたしがこの方を見ててあげよっか?」


「えっ? い、いいんですか? あ、あの、どちらの?」


「騎士さん、でしょ? わたしは怪しくないよ。キミのお姫様……あ、今はもう王女様だよね? ルフィーナ様だったかな」


「な、何故……ルフィーナのことを?」


 この子、誰なんだろう? ルフィーナと会ったことがあるような言い方だし。でも酔って寝たハヴェルを見ず知らずの人、しかも女の子に任せるのは……副団長として問題があるよね。やっぱり断ろう。


「あ、あの……やっぱり、女性に任せるのは良くないので」


「アスティンさん。わたし1人だけじゃないですから、大丈夫ですよ。それに、ルフィーナ王女付きの騎士様に何かしてしまっては、我が国はすぐにでも陥落してしまいかねませんし。申し遅れましたが、わたしはミストゥーニ国の王女、アダリナ・ミストゥーニです。ルフィーナ王女にはアダと言えば通じます。そして、この子は、チュスラーナ。そして彼女はミラグロスです。3人でこの騎士様を見ておりますからご安心を」


「わ、分かりました。それではお言葉に甘えさせていただきます。よろしくお願い致します!」


「ええ」


 彼女たち、ミストゥーニからここに来ているのかな。しかも王女? 随分と幼い感じがしたけど、でもルフィーナが知っている子たちなら、ハヴェルもひどい目には遭わないよね。うん、信じよう。



「セラ~そろそろ戻りましょ?」


「ああ、そうしようか……ん?」


 何だい? 何かキナ臭い連中がこっちに向かって来ているじゃないか。全く、物騒なことだね。


「姫さん、ちょっとだけ遊んで来ていいかい?」


「あら? あぁ……そういうことね。いいわよ。たくさん遊んできても――」


 明らかにガラの悪そうな彼らが向かって来ていたけれど、セラとテリディがすぐに相手をしようとしていた時だったわ。髪が思い切りなびいたと同時に、浜辺の砂が風で舞い立ったと思ったら、悪そうな連中の姿がどこにもいなくなってしまった。どこへいったのかしら。


「姫さん、怪我は無いか?」


「わたしは何ともないわ。それより今何が起こったというの?」


「……いや、心配ないさ」


「そ、そうですね。ルフィーナ様、そろそろ酒場の方へ参りましょう」


「え、ええ……」


 ふぅん? セラもテリディも知っているけれどわたしには隠したいことがありそうね。きっと、ハズナがやったことに違いないわ。あの風圧、あれはアスティンが怪我をした時と同じだったわ。きっとあれで悪そうな連中をどこかに飛ばしてしまったのね。


「王女さま、大丈夫?」


「ええ、大丈夫よ」


 彼らがどこへ飛んで行ったのかは気にしないでおくことにするわ。でも、大事に至っていなければいいのだけれど。


「ルフィーナーー!!」


「あら? アスティン? 1人なのかしら……」


 確か酒場で髭騎士と飲んでいたのではなくて? どうしてアスティンだけいるのかしら。


「はぁーー……さすがに疲れた。お酒が入った状態で走ったら駄目だよね」


「おい、アスティン。ハヴェル殿はどうしたのだ? 何故お前だけがここにいる?」


「ご、ごめん、セラ。でも大丈夫のはずだよ。ハヴェルを今、見ててくれているのはミストゥーニの王女さんたちだから」


「ミストゥーニ? あの国の王女ですって!? アスティン、その王女の名前は?」


「え? えっと、アダって言えば分かるとか言ってたよ。ルフィーナの知り合いなんでしょ?」


 アダ……わたしに弓を教えた姫ね。そう、王女になったのね。それじゃあ、他の二人も来ているってことかしら? だけど、どうしてこんな港町に王女たちが来ているの?


「セラ! 先に酒場に向かいなさい!」


「はっ! ただちに」


「テリディアとハズナはわたくしの傍を離れぬように。アスティンは宿で体を休めておいて!」


「えっ? で、でも……」


「アスティン!!」


「ひっ! は、はいっ!! 行きます、行ってまいります」


 ルフィーナには逆らっちゃ駄目だ。これはもう俺の体に染み付いてる。ここは酔いも醒まさないと駄目だし、言うことを聞いておかないと。それにしても、どうして急に王女としてのルフィーナになったんだろう? 信用できる子たちにしか見えなかったのに。


「テリディアとハズナは戦う用意をしていなさい」


「はい、王女さま」


「は! 仰せのままに」


 嫌な予感しかしないわ。確かにわたしはあの子に弓を教わったわ。だけど、用も無いのにこんな小さな港町に来ているなんてあり得ないわ。髭騎士を彼女たちに任せたですって? アスティン、あなたはまだまだ女の怖さを知らないのね。特にあの子たちは信じ切ってはダメなのよ。セラ、間に合って!

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