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123.親交者の静寂な訪問:前編


 わたしが眠ってからどれくらいの日にちが経っているのかしら。わたしに出来ることと言えば、夢の中に出て来るわたしの騎士たちを応援することだけ。眠り続けながら寝室では、日替わりで多くの人が訪れているということは何となく聞こえている。


「ふむ……それにしても寝言も一切言わぬとは、これは本当に眠っているのだな。この目で確かめるまでは、国を動揺させるほどのいたずらを仕掛けているかと思っていたのだが」


「あなた、それはいくら何でもあり得ないわ。ルフィーナは確かにいたずらが過ぎるわ。でも、国民や騎士たちに迷惑をかけてまでやる子ではないのよ?」


「そ、そうだな」


 お父様は相変わらずお母様に怒られているのね。いくら何でもわたしのいたずらはそこまでひどくないのに、お父様ったらあんまりだわ。それでも、姿は見られないけれど会えて嬉しいわ。わたしの為に旅行を切り上げさせてごめんなさい。


「失礼する。アソルゾ、王女の為に騎士団を新たに組み込むことにしたいのだが、構わぬか?」


「それを決めるのは俺では無い。目覚めたら我がルフィーナに聞くことだな。それでアル。お前の息子はどこにいる? 何故娘の傍にいさせてやらないのだ」


「アスティンの心は王女の為だけにある。あるが故に、弱くなっているのも事実。だからこそ、眠られている王女の傍に置かぬ方がよい。そして今はまた、我が息子にとっても新たな試練を迎えている時であろう」


 アルヴォネン様も何だかんだでアスティンには甘いのね。厳しくしているように思えて、彼を騎士としてもっと強く成長をさせたいという親心が分かりやす過ぎるもの。


 そうして、お父様、お母様は寝室から出て行くとわたしの眠る部屋は、常に騎士たちが代わる代わるで守護してくれている。特にシャンタルは、ほぼ毎日のように傍にいてくれていることが心強かった。


「シャンタル様、どうかご無理はせずにわたくしたちにも王女様をお守りさせてくださいませ」


「すまない。その気持ちは眠っているルフィーナが一番よく分かっているはずだ。目覚めたら必ず、お前たちを星光と星花の団長に推薦する。だからここは我に任せておいてくれないか?」


「そこまでの想い……それでしたら、ここはヴァルキリーにお任せ致します。わたくし、星光騎士団のアグスティナと、星花騎士団レティシアは共に扉の外側にてお守り致します」


「ああ、頼んだぞ」


 それにしてもお姉さまや他の騎士団の彼女たちはわたしの近くに来ているみたいだけれど、王立騎士のカンラートや他の騎士の姿をてんでみかけなくなったわ。もしかして全てお姉さまが遠ざけているのかしら。


 それはありがたいことだけれど、それではダメよ。わたしの騎士団は彼女たちだけじゃないの。目を覚ましたら、シャンタルにも命じなければならないのね。きっとやることがありすぎて、今度は眠る暇も無いかもしれないわ。それでもその方がきっとわたしらしくいられるかもしれない。


 またしばらく日が過ぎたらしく、わたし自身は面識が無いもののお父様の友人の方々や、アルヴォネン様の友人の方たちが見舞いに訪れているみたいだった。


「ルフィーナ、紹介しよう。彼女はかつて草原国を統治していた王女で、王立騎士にいる者たちの母親みたいなものでもある、リプル・ネシエルだ」


「目覚めていないままでお会いするのは申し訳なく思います。よく似ておいでですわね、アソルゾ様」


「そ、そうか」


 お父様ったら照れているのかしら? 近くで呆れているお母様の姿が浮かぶわね。ふふっ。


「ルフィーナ様。わたくしはアソルゾ様が陛下になられた時、ジュルツ国民として穏やかに過ごして参りました。けれども、あなた様がお目覚めになられたその時は、微力ではありますけれど再びのお力になりたいと思っておりますわ。どうか今はゆっくりとお休みくださいませ」


 リプルネシエル? どこかで聞いた名前だわ。どこだったかしら。それにしてもわたしが眠っている間に、かなりの大ごとになっている気がするわね。特にお父様が城にいるというだけで違うわ。


 そういう意味ではまだまだお父様には陛下としての威光があるという意味でもあるのよね。わたしはもっと確かな王であらねばならないわ。わたしを守護するお姉さま、騎士たちの王である為にも……。


「陛下。アルヴォネン様が見えられておりますが、お通ししてもよろしいでしょうか?」


「うむ」


 本当に忙しい部屋になっているのね。わたしは眠り続けているだけだというのに。そして今が朝なのか夜なのか、何となくの聞こえで体は覚えて来た日の夜のことだった。


「ルフィーナ……どうすれば目覚めるんだ。わたしは……お前と早く話がしたいんだ。我が王女であると同時に、お前はわたしの大事な妹なのだ。ルフィーナ――」


 シャンタルがわたしを護る時はほとんどが夜ということは何となく分かっていた。騎士や侍女が休んでいる時間は、ヴァルキリーである彼女がわたしの傍に付きっきり。だからというわけでは無いけれど、彼女がいる時は誰も近付かないし、危険なことなんてあり得ない。


「――約束通り、ジュルツに来ましたわ。ルフィーナ王女……」


 あら? この声は……。いえ、その前にシャンタルはどうして気付いていないのかしら。それも女王の力ということなのかしらね。約束は女王が勝手にしたものだけれど、一体何の用なの?

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