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120.恋するアスティン? ②

「アスティン、もうすぐレイリィアル支配下の町であるルドライトに着きます。いいですか、腑抜けた気持ちではなく、騎士らしく堂々と進んでくださいね?」


「ルフィーナ……僕、僕はキミに逢いたい」


「ちょっとアスティン! 私の注意を聞いてますか? レイリィアルの近くに行くのが任務なのですよ?」


「ねえマフレナ。アスティンってもしかして今、ルフィーナ様のことで煩い中?」


「そうです。ホントに参りますよ……あなたとドゥシャンは、アスティンとの付き合いが長いのでしょう? ああいう時の彼はどうすればいいのです? こんなことでは騎士としての最低限のこともままなりません」


「それをわたしに聞く? アスティンのことをどうにか出来るのはあいつくらいなんじゃない? 呼んで来るから、町に入るのちょっと待っててよね」


「分かりました。そうします」


 わたしが眠りについてからすぐに、アスティンはアルヴォネン様に命じられてレイリィアルを目指すことになった。シャンタルには堂々と出立の挨拶をして行っただけに、何も心配することは無いだろうと思っていたのに、どうしてあなたはまた悲しんでいるのかしら。


 港町スンムールで再会したわたしたちは思いきり触れ合うことが出来なくて、そこからバタバタしてしまったせいで結局ふたりだけの時間が取れなかった。今のアスティンの煩いは、きっとわたしといる時間が足りなかったせいだわ。それでも今はあなたを助けることが出来ないの。


 だからアスティン、今は恋をたくさんしていてね。そうするのが一番いい薬なの。でも、わたし以外の子を泣かせては駄目よ。だからあなたを早く取り戻して。


「あーん? アスティンが恋煩いだぁ? 王女さんがいるのにか? ルカニネ、お前いい加減にしとけよ」


「ドウシャンって鈍すぎて呆れる。煩ってるのはルフィーナ様本人に決まってるじゃない! アスティンにはルフィーナ様しかいないのよ? これだから野郎は」


「調子に乗ってんじゃねえよ、ルカニネ! 俺にどうしろと?」


「とりあえず彼の意識をあんたに移すだけでいいから。そしたら後は、わたしとマフレナが何とかする。騎士の副団長が気抜けのままではどうにも出来ないんだからね? 早く何とかしてきて!」


「あーくそっ、俺にはアスティンの相手しか出来ねえのかよ」


 アスティンの兄騎士でもあるドゥシャン。カンラートやハヴェルとは別に、ドゥシャンは基本的に必要以上に構うタイプでは無く、アスティンについても必要以上の甘やかしはしてこなかった。


 それでも弟騎士でもあるアスティンを見捨てることは出来ないと思っていたドゥシャン。アスティンがあのままでは王女さまにも、ジュルツにもいい影響を与えないということくらいは理解していた。


「おう! アス坊! どうしたどうした、腹でも減ったのか? そんな腑抜けたツラじゃ、お前の姫さんに叱られてしまうぜ? しっかりしやがれ」


「ド、ドゥシャン?」


「お、やっと気づきやがったな。よし、それなら町に着いたら俺とお前とで、可愛い姉ちゃん見つけて仲良くなっておこうぜ!」


「えええっ!? え、あれ? だって、ドゥシャンはルカニネがいるじゃないか」


「かてぇこというなよ。どうせ支配下の町なんぞにそんなのはいねえだろうしな。それにお前勘違いしてるだろ。俺とルカニネは飲み友達だ。それだけだ……多分な」


「そ、そうだったんだね。で、でも僕にもルフィーナが……」


「なぁ、アスティン。お前、ジュルツを出てからずっと泣いてんじゃねえか。それで王女さんが目覚めたら胸張って頑張って来たって言えんのか? それに旅先で友達くらいは作っていいはずだろ? 何も王女さんを裏切れとか言ってんじゃねえ。お前も誰かを笑顔にするくらいは出来んだろうが! だろ?」


「う、うん。そ、そうか……友達。誰かを笑顔に――そ、そうか」


 ドゥシャンのいかにもな説得に何となくの理解をしたアスティン。口だけは上手いドゥシャンのおかげでアスティンは元気を取り戻すことが出来たようだった。


「あいつに任せて上手く行ったのもシャクだけど、確かにアスティンにも他国のお友達は必要かもね」


「ル、ルカニネさん! だ、ダメですよ。アスティンさんには王女様が……」


「そういうあなたたち見習い騎士も、アスティンを慕っているんでしょ? 特にあなた、ルプルだっけ? 好きになるのは自由だけど、それはやめた方がいいと思う」


「そ、そんなことは」


「ルカニネ、ルプル。この先は支配下の町です。アスティンのことは、兄騎士のドゥシャンとヤージ様に任せて、私達は見回りを致します。何かあっては遅いのですから、気を引き締めて行動なさい。いいですね?」


「はいはい、わたしも適当に見て回るとします。町でのことは、見習い騎士たちに回らせるのがいいんじゃない? もし戦うことになったら近衛騎士のあなただけではどうにも出来ないでしょうし」


「そういうあなたこそ、ヴァルキリーである以上はしっかりと動いてもらわないと困ります」


「マフレナは見習い騎士たちと見回り。わたしはソロで動く。それでいいじゃん」


「分かりました。それでよろしくお願いします。それでは、ルプルとユスティネ、テレーゼ。あなたたちは私と見回りをします」


「んじゃ頑張ってね、近衛騎士さん」 

 

 国に尽くす真面目な近衛騎士マフレナと、王女の命じでしか動かないヴァルキリー、ルカニネ。彼女たちにはそれぞれの想いがあるのよね。ルカニネは悪い子ではないけれど、カンラートに近いマフレナとは合いそうにないかもしれないわね。とにかく、アスティン。どうかあなたはあなたの強さを取り戻してね。

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