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119.恋するアスティン? ①

「おう、それでな、あん時のアスティンはルフィーナ様じゃなくて、最強の強さを誇るヴァルキリー様のことが忘れられずにずっと彷徨い続けていたんだぜ? 今じゃ副団長だけどよ!」


「そ、そう……なのですね。アスさん……やっぱり、恋多き騎士さま……」

「アスティンさまがそんな想いをしていたなんて。やはり、私達はアスティンさまについて行きたい」


「お、おいおい、何でそうなるんだ。くそ、俺って人気ねえなあ」


「自覚無かったとか、マジなの? 少しばかり見直しかけたけど、そんなもんかな」


 アスティンの傍を離れることの無かった見習い騎士のテレーゼとユスティネは、楽しそうに話をしているドゥシャンの所に行っている。その光景を眺めながら、アスティンは何となくの寂しさを感じるようになっていた。


「ど、どうかしたのですか? アスティンさん……お顔が優れないように見えます」


「いや、大丈夫だよ。ありがとうね、ルプル」


「と、とんでもないです」


 レイリィアルに近付くにつれて、アスティンは明らかに暗い表情を見せるようになっていた。これにはお目付け役のヤージ大騎士長と、近衛騎士マフレナも密かに相談を重ねるしか手段は無かった。


「あの、ヤージ様はアルヴォネン様の下におられたのですよね? 確かレイリィアルに長く滞留をしていたと聞いています。それほどまでに危険な国なのですか? だからアスティンは不安を隠せずにいるのでしょうか」


「レイリィアルは危険であり、支配下以外の我が国や他国においても、なるべく近付かないようにしているのが現状ですな。危険ではありますが、聞いた話では今回の滞留はアスティンを王女様から離すことが目的と聞いておりますぞ。何せ、あの様子を見る限りでは危険な国への気がかりなどでは無く、王女様への想いが募り出しているに違いないかと」


「た、確かに、ルフィーナ様がお眠りになってからすぐに出立を命ぜられました。そ、そうなのですね」


「ふむ。もうすぐ支配下ではありますが、小さな町に着きます。そこで体を休めつつ、今後の事について話を致すとしましょう。これには副団長にも聞いてもらわねばなりませんな」


「そ、そうですね。アスティンにはきちんとしてもらわないと本当に困りますよね……」


「そうですな……アルヴォネン殿のご子息には威厳も必要ですからな」


 偉大な騎士の下で長く付いていた大騎士長ヤージと、ルフィーナとカンラートの傍に付くことが多いマフレナは、ここに来て不安顔を見せるアスティンを心配するばかりだった。


「はぁ……ルフィーナちゃん。僕は今すぐにでもキミの所に戻りたいよ」

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