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わがまま王女と駆けだし騎士の純愛譚  作者: 遥風 かずら
王女を守護する者たち
118/151

118.見極めの強襲

 アルヴォネンとロヴィーサの後ろには見慣れない黒衣騎士連中と、自分と似た感じの殺気を持つ女たちが控えているということに気付いていたシャンタル。


「シャンタルよ。紹介しよう、我とロヴィーサが新たに加えた、王女を守護する者たちを」


「……アルヴォネン殿、お下がりを」


 陣頭の決意式に集っていた騎士団たちは、シャンタルの攻撃姿勢に気付いていた者も多くいたが、見慣れぬ騎士たちに制されていて動くことが出来ずにいた。


「あなた、どうされるおつもりですか?」


「ふむ……我が国のヴァルキリーに見極めをしてもらういい機会ではあるな。このまま見守ることにする。お前はイニバーゼの娘を制するがよい」


「分かりましたわ」


 この場には王女を守護する者たちが勢揃いをしていた。乗り気では無かった幼きヴァルキリー、ハズナもこの場に居合わせていたが、王女への敵襲ではないこともあって、動きを見せずに光景を眺めている。


 それでも、もしかしたら城へ侵入される恐れもよぎり、庭から離れて城へ向かう為の態勢に切り替えをしようとしていた。


「王女さま……いま、向かいます」


「お待ちなさい。どこへ行くのです?」


「王女さまのところ」


「なりませんよ。今は陛下とビーネア妃様がルフィーナ王女の下におられるのです。あなたが行くべきではありません」


「……」


「聞き分けのいい子はきっと、ルフィーナ様が褒めて下さるわ。今は大人しく見ておいでなさいね」


「……はい」


 ハズナ。あなたのことはハッキリと理解しているわけではないわ。それでもわたしを心から信じているし、わたしもあなたのことが可愛いの。今はどうか、ロヴィーサお母様の言うことに従っていてね。


「シャ、シャンタル様……わたくしたちも――」


「テリディア。お前たちは騎士団を守れ。連中は我が相手をする」


「は、そう致します」


 わたしを守る為の者たちを連れてきたと言っていたアルヴォネン様。一体何を考えているのかしら。ああ、どうしてわたしはいつまでも眠り続けているのかしらね。こんな……こんな面白そうな光景を見ることが叶わないなんて。それでもシャンタルは負けないわ、きっと。


「貴様らが何者かは問わぬ。問わぬが、我を試そうと殺気を放っていたのは気付いていたぞ。そのような殺気を放つ貴様らが我が王女の守護だと? 笑わせる……守護をしたくば我にその力と覚悟を見せろ! 貴様らの力が足りぬと判断した場合は、大人しく元いた地に帰るがいい」


「……戯言を」


 陣頭式ということもあり、騎士たちやヴァルキリーたちは自分たちの剣や槍を手にしていた。一方の黒衣騎士たちも手にした剣を騎士団や、ヴァルキリーに向けて威嚇をしていた。


 シャンタルの剣と不明の女一人の剣が、互いの剣先をかすめた時……すでに互いの身体は反応を示していた。シャンタルの動きは閃光が眩い程の速さを見せていたが、不明の女も似た動きを見せていた。


「――ち、この動き……」


「……」


 互いが敵意を見せる中、周りの黒衣騎士と騎士団たちは次の攻撃で片が付くと誰もが思っていた。劈きの剣の音は、王女の庭に雷鳴を落としたかのような衝撃を与えた。


「容赦はせぬぞ……王女の庭をこれ以上穢す(けが)者は、誰であろうと許さぬ」


「……下らない」


「ほざくな、輩!!」


 銀色の月光の如き、互いの白刃が決する時だった。声高らかなる声と二人の間に鋭い矢が突き抜けていた。声の主はアルヴォネン、矢を放った者は騎士ともヴァルキリーとも違う身なりの者だった。


「双方! 剣を収めよ。互いは互角と見た。我が国のヴァルキリーと、新たなる守護者。この我が認めよう。お主たちが協力をし合えば、我が王女、我が国は脅威なる国から必ず守り通せるであろう」


「……ふん」

「いい所を邪魔されたか」


 シャンタルと、女は剣を収めおおよそ場違いな身なりの、弓術士に視線を浴びせた。


「貴様は何だ? 勝負を裂く矢を放つとは、ジュルツの者か?」


「うふふ……中々にお若いですね。お二人とも。ですが、矢によって動きを止めるとはまだまだなご様子」


「なに?」


「まぁ、待て。シャンタルよ、この者は我の古くからの友だ。普段は城下町にいる民となっているがな」


「お懐かしゅうございますわ、アル様」


「うむ。シェスティンの腕は当時と変わらぬ。いや、更に鋭いか?」


「いえ、ですけど……騎士たちが騒いでいるのは城下町まで響いておりましたから、思わず乗り込んでしまいましたわ。それと、騎士のハヴェル様とレナータ様がわたくしたちの所へ参っておりましたので、気にはしていました」


「そうか、やはりな。では、ネシエル殿はすでに城においでか?」


「ええ、アソルゾ様にお会いしている最中かと」


 全てアルヴォネンに仕組まれ、試しを受けていたことを知ったシャンタルと騎士団たちは胸をなで下ろしていた。


「ふ、そういうことか……我が騎士団の誓い式はこの時を以って、解散する。お前たちは、各々の持ち場に戻り、身体を休めるがいいぞ!」


「ははー!」


 アルヴォネン様も、わたしに負けず劣らずのいたずら騎士様なのね。まずは一安心といったところなのかしら。それでもますますシャンタルは闘争心が滾ってしまったかもしれないわね。


 早く目覚めの時を迎えたいものだわ。そしてアスティン、あなたにも早く会いたい。愛しのアスティン。

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