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101/151

101.あなたと共にあるために②

 やはりわたしには騎士の様な強さは得られないのかしらね。体術で彼を投げる方にすればよかったかしら。


「え、え? ル、ルフィーナちゃん……!? ゆ、夢?」


「ううーん……あら、アスティンじゃない! 元気かしら?」


「え、あ……元気かな。そ、それよりも、何でルフィーナちゃんがここに? それにその姿……ど、どういう」


「ふふっ、気になるの?」


 アスティンったら、気が動転しすぎているわ。もしかしてこれも夢の中だと思っているのかしらね。やっぱり体を一回転させてあげようかしら。


「……アスティン、とりあえず立ち上がるわね」


「うん、じゃあ僕の体を使って反動で立ち上がっていいからね」


「……っと。ありがと、アスティン」


 あぁ、アスティンだわ。確か夢の中でも会えた気がしたけれど、本物だわ。な、なかなか緊張するわね。


「アスティンは元気にしていたの?」


「う、うん。僕はずっと元気だよ! ルフィーナちゃんはどこも怪我はしていない? 平気?」


「そ、そうね……大丈夫よ」


 な、何かおかしいわ。上手く言葉が出て来ないわ。変わっていないように見えるけれど、どこかアスティンには大人びた雰囲気が感じられるわね。儚さもあるような、そういった経験をしてきたのかしらね。


「え、えっと、あ……カンラートはどこに向かったの? それに見習い騎士の子たちは無事なのかな?」


「あ、そ、そうね。心配なのね? あなたの部下の彼女たちのこと」


「こう見えても僕は6人の部下がいる副団長だからね。まぁ、一人は減ったけど。部下のことを心配するのは当然だよ」


「カンラートが向かった先には小屋があるの。そこはかつてわたしが閉じ込められていた所なの。アスティンも後から聞いていて知っているでしょ?」


「うん。まさかと思うけど彼女たちを見張っている恐ろしい相手って、シャンティ?」


「ええ、そうよ。会いたい?」


「いや、僕はキミがいればいいんだ。シャンティにはカンラートがいるからね。それはともかく、僕らもその小屋に向かおうか。ルフィーナちゃん、手を出して」


「え? えぇ……あ」


 予想出来ないことが起きているわ。アスティンを驚かして、泣きまくる彼を想像していたのに、まさかこんなに落ち着いているだなんて。どうしよう、わたしのほうが緊張して緊張が止まらないわ。


「思い出すね」


「そ、そうね」


 アスティンとは幼い頃、いつも手を繋いで森に入って行ったり、お庭に連れ出したり。彼と手を繋ぐことは当たり前だったのに、どうしてこんなにも胸が熱いままなのかしら。


「あ、そうだ。ハヴェルのことは覚えてるかな?」


「ヒゲ騎士ね? 彼がどうしたの?」


「うん、実はね、彼はヒゲを無くしてしまったんだ。そして彼はジュルツの騎士をやめて、一人の大事な人と一緒になろうとしているんだよ。もちろん、ハヴェルが騎士をやめてジュルツから出て行くことを認めるのは、王女の役目なんだけどね。それと、キミに会わせたい人がいるんだ。きっと合うんじゃないかな」


「ふ、ふぅん? ヒゲを無くした騎士とその相手の子はどこにいるの?」


「ゆっくりと僕の後ろを付いて来ていたはずだから、そろそろ来る頃だと思うんだけど……」


 アスティンとヒゲ騎士、それにその相手……ね。アスティンが変わったのはきっと、彼らの影響に違いないわ。是非とも会わなければいけないわね。


「アスティン、それなら先に小屋の方に行きましょ? この港町はそれほど広くないわ。あなたも知っているでしょうけれど、行き止まりの砂浜に行けばきっとハヴェルもそこに来るはずよ」


「そっか、そうだね。じゃあ、行こうか」


 手を繋いだまま、ルフィーナとアスティンは言葉少なに、小屋のある砂浜に向かって歩き出した。思い出を噛みしめるように、しっかりとお互いの手を繋ぎながら。


「ふー……俺には芝居が向いておらぬな。アスティンを目の前にして騙すなど、俺には出来ん」


「ん? カンラートじゃねえか! おいおい、お前何でここにいるんだ? 王女さんはどうした?」


「ああ、ルフィーナなら今頃、アスティンと再会しているはずだが……そちらの御方は?」


「おう! 紹介するぜ! こいつはレナータ。マジェンサーヌ王国の王女だったんだぜ? レニィ、こいつは俺と同じ宿舎にいて今は……ん? ど、どうした?」


「――砂浜に良くない気配がいますわ。私はそこに行かねばなりません……私の騎士ハヴェル。お供を」


「……かしこまりました」


 王国の王女だったレナータ。彼女には時々、歴代の王女のごとく雰囲気が変わる時があった。この時はさすがにハヴェルも騎士として返事をするしかなかった。


「ハヴェル、俺も行っていいんだよな?」


「頼む」


「分かった。小屋にいるのはあいつだから、恐らくそういうことだと思うが、ここは従うしかなさそうだ」

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