プロローグ
--これは夢か?
肌が焼けるように熱く、全身の水分という水分がすべて蒸発していくのが感じる。
声をあげようとも熱気によって息が出来ず、炎が自分の中に入ってくる。
炎がどんどん自分の体を破壊していくのを感覚的に悟っていた。
そして少年はこれが夢でないことを知った。
--あ、俺、今から死ぬのか。
直感で自分の死を悟った少年はもはや自分の状態すらも分からなかった。
体は硬い地面に倒れふし、上半身と下半身は別の場所に転がっていた。
血を流しすぎた少年は体の感覚をほぼ失っていた。
--不思議な感覚だ、熱いはずなのに体が冷たくなっていく。
そんな中、少年の瞳に漆黒が映る。
黒よりも深くまるで夜の闇のような漆黒の髪をした少女、少年はその少女に目を奪われる。
「・・・あなたはいったい、何を望むの?」
少女は少年に問いかける。
この炎の中なぜ話せるのか、そんなこと考える余裕もなく少年は、願う。
--誰かを救う力が欲しい。
少女は無表情のまま少年に近づき耳元で囁いた。
「・・・その願い聞き届けましょう。」
少女は意識が朦朧としている少年の口にそっと口を重ねた。
すると、周りに燃え広がっていた炎は消え、辺りには闇が広がっていた。
「そして、もう一つの願いは・・・君の願いを叶えることだ!」
その闇の真ん中には一人の少年が立っていた。
この日、少年--黒羽シオンは人間をやめた。




