異能力バトル9
あの夜。一ノ瀬は松本を見下ろして言う。
「そうして私の変調の過渡期に差し当って君が居た。そういう事だから許さないで、私を。」
それを思い出していた松本に、二人は同時に言った。
「死んだのよ。私の中では。」
「死んでないよ。死者の蘇生が出来る程私の能力はすごい物じゃないもの。」
言って、二人は見つめ合う。いや、一ノ瀬は睨んでいるようだが、舞北は柔和に見つめている。
「いいじゃない、生きてるから生きる。人生そんなものだよ、きっと。」
「それは、それでいいとしても、許すとか、許さないとかは、まだ正直分からない。」
「許すも許さないも、アンタにそんな権限ないでしょ。」
それぞれはそれぞれに言って、沈黙がその場を支配した。が、やはり一歩抜きんでたのは、舞北だった。
「権限と言えば。」言って舞北は一ノ瀬を見る。
「魂使人連合会から大事な話があるの。」
魂使人連合会とは異能力を持った人間、すなわち魂使人が徒党を組んだ団体である。
これを聞くと一ノ瀬の目は光る。
「何よ、勿体ぶって無いで教えて。」
「会長が会ってみたいって、だから今度の日曜日にでも予定開けて置いて貰えないかな。」
「会長ってなんでそんなVIPといきなり。」
「さあ。」と舞北は煙に巻いた。
そうして、次の日曜日。魂使人連合会の拠点に居た。
居た。と言っても誰かの能力で瞬間移動した訳でなく、普通に新幹線で3、4時間かけて移動して、そこから更に鈍行電車に乗り換えて30分。何もない平原に降りたのだが、よくこんな所に電車が停まるなと思えるくらい何もない。いや、田んぼと畑は無茶苦茶あるのだけど、よくこんな所の拠点を置いたなと感心した程だった。
如何せん何もない所なので、建物がまた馬鹿みたいにデカい。誰がそこに集まるんだと聞きたいくらいの大きさで、アチコチひび割れの補修だらけでコンクリート造りの建物が魂使人連合会館である。
床は畳張りで一面が緑。もうちょっと工夫したら柔道の会場としても使えそうなのに、そこはご老人方の憩いの場みたいな雰囲気を醸し出していた。
「で、会長さまは何処におあすのカシラ。」と、観光ガイドに尋ねる一ノ瀬。
「ここにはいないよ。」あっさり答えるガイドの舞北。
じゃあなんで態々ここに連れて来たのだという話になるけど、どうせあっさり持論を展開してきてこちらが呆れるのも目に見える。
なので話を戻す。
「僕たちに会いたがっている会長さんに会いに、態々こちらから出向いたんじゃなかった? 舞北さん。」
私はそんなに会いたくない。と顔に書いてあったが、そこは流石に言わないで「じゃあ」という。
「じゃあ」と言った後に会館を出てすぐの所にある普通の一軒家。いや普通よりかは若干お金持ちっぽい雰囲気がある一軒家を指さして、「あすこ。」と言う。
表札には「舞北」と書かれていた。
中は想像していたよりも手狭なのだがそれを云わせない空気という物がある。無理やりにでも「広いお屋敷ですね。」と言わせる空気がある。
それでも奥に独立した和室があるので威厳としては十分で、そこへ通されると正直、身の引き締まる思いがした。
奥へ通され、更に待つ事10分程してから姿を見せるのが会長の舞北晴天である。




