異能力バトル8
右手を舞北。
左手を一ノ瀬。
同時に左右の手を取られる松本は幸せいっぱいであるが、左右の美女たちはそうでは無い様。
「私に在って、」と舞北。
「私に無いもの。」と一ノ瀬。
「言ってみて。」と同時。とても怖い。
「胸。痛い。」と答えて見せる松本も次の瞬間には左手に激痛が走る。が、手を振りほどく事は無い。
「そうじゃなくて感じるものなのよ。」と舞北は優しい。
「コイツ、分かっててやってない?」と一ノ瀬は厳しい。
「そういう状態ってあるからね。」と納得して舞北は手を放す。少し名残惜しいが口には出さない。
「そういう状態?」と一ノ瀬も手を放す。名残惜しいが口には出さない。
「うん、半魂使って言う状態。」
「詳しく。」
「通常の魂使人は能力の目覚めと同時に自身を認知する。だけど、少し、鈍かったり、する、人。」言いにくそうにする舞北に一ノ瀬は合いの手を入れる。すっかり仲良しじゃないか。
「鈍いと自分の能力も認知出来ないっていう事ね?」
「んー、少し違う、かな。」
「まさか能力が無いのに相手に認知されるだけの存在、なんて言わないわよね?」
ギクリと、音が聞こえる気が、した。
「まあまあ、まずは基本からおさらいするね。」冷や汗をかいている気がする。
「まず、魂使人は能力の目覚めが在って、それから認知するのが普通。そして、死に瀕した時に能力を他の魂使人に譲渡する。その際は最も近い魂使人が対象なの。」
「そこまでは知ってる。その距離というのは被害者と加害者の物理的距離を言う事も分かる。だけど半魂使って何なのよ。」
「例外って言えば、簡単だよね。能力は無いけど魂使人ですっていう状態は。」
「認知が出来てないんじゃ他の魂使人を殺した場合でも相手の能力を認知出来ない。つまり、相手の能力を使えないって事でしょ。譲渡されても意味がないじゃない。」
「詳細に言うと、認知が出来ない魂使人は譲渡もされない。っていう事なの。」
「なんなのよ、その詰め込み過ぎ設定。」
「私に言われても。」
「アンタも三つ以上能力持ってるチートキャラでしょ、嘘を見破る能力とか無いの?」
「無い、です。」申し訳なさそうにした上にへりくだる舞北。もうやめろよ。と言ってやりたいがその原因が自分のことで、成す術がない松本。
「じゃあ、私がやった事も、無駄?」
それは、松本の殺害を企て、目的遂行の直前まで行った事が、無駄だったのかという問い。今回の話の主軸はそこに在る。
「無駄ではない。とした方が皆が納得する落としどころだとは思う。」
「無駄って事じゃない。」一ノ瀬は憤り、舞北は肯く。
「そこまでされて松本くんは、今回の事を許すことが出来た。そして、瑠那さんはやり直せる。そういう事にしたら納得するしかないよね。」
「アンタは骨折り損の草臥れ儲けじゃない。」
「私は、友達が出来た。それはとても尊いものだと思う。ほら、私も含めてみんな納得した。」
「話がうますぎる、気持ちが悪い。」
「それはみんなが思う所だよ。痛みを分かち合って仲良くなるの。」
一旦はそこで途切れた話だが、実のところ松本には実感が無い。だから、それを云う。
「許すことが出来たって、俺、死んだの?」




