異能力バトル7
そうして、いよいよを持って現在。
松本と一ノ瀬は、舞北の部屋にいる。
「いらっしゃい。」と笑顔でいる黒髪の女子が舞北だ。舞北一葉だ。
初対面ではないが、それにかなり近い心境の松本はどうも落ち着かない。なので一ノ瀬が応対する。
「いらっしゃいました、中に入れてくださる?」
とても丁寧にケンカを売るのが見て取れたので以降松本も口をはさむ事にしたらしく、にっこりと笑って見せる。
それから快く舞北は二人を部屋に寄せた。
部屋は松本の部屋より少し広いが代わりに風呂場に湯船のない洋風の部屋であるが、それは割愛して話を戻す。
二人を寄せた後に舞北はいそいそとトマトジュースを三つコップに入れる。
何かの儀式かと疑念を抱いてみているとそれを寄越したので、水やお茶の代わりの物だと分かった。つまり歓迎している、らしいのだ。
「水でいいわよ、ヴァンパイアじゃあるまいし。」と愚痴る一ノ瀬。
んー、と下あごに指を当てて考える舞北は次の様にあしらう。
「水だとね、許してる事になる気がするの。」
水に流すという言葉があるからそれの事だろうと松本は思いつくが定かではない。
「お茶だと、やり過ぎかなって。」
へそで茶を沸かすという言葉があるからそれの事だろうと松本は思いつくが定かではない。
「そ。」とそれ等を聞くと一ノ瀬は答える。
「そもそも魂使人。」
そもそも魂使人。それは松本には新鮮な響きだ。魂使人というのは異能力を有した人種の総称という事くらいしか松本には分からない。それをいきなりの題材に選ぶ事から松本は舞北を、天然の子と、認識するのは何ら不思議な事ではない。
「待って。」とこちらを見る一ノ瀬。
何を考えているのかは分からないが松本は目を合わせる事にして、失敗した。
「コイツ、それすら分かってない。」
「そんな人を巻き込むなんて瑠那さんは本当に酷いね。」と舞北は笑う。
何の事か良く分からないが、バカにされている事は分かる。松本はそろそろ発声する兆しを見せるがそれよりも女子の会話の方が断然早いので、諦めた。
と、言えば幾分か松本の名誉は守られるだろう。
「えい。」一ノ瀬の言葉に納得した舞北はいきなり松本の手を握る。そして言う。
「何か、感じる?」
目を見る舞北。とても可愛いと思うが今いう事じゃないと悟って松本は答えた。
「別に。」
「本当に?」もう一方の手を添えて首を傾げる舞北。
もう無茶苦茶可愛い。が、今いう事ではない。じゃあ何時なら言えるんだという所だが、そんな事を言い始めたら話が見えなくなってしまうので今では無いとするしかない。
「とても、柔らかくて、小さい、それに、あったかい。」
「何を言ってるのかな?」と一ノ瀬の微笑みが怖いので訂正する。
「一ノ瀬のよりは、少しだけ、大きい、かな。」
真顔で言ったつもりだった。少なくともにやけてはいないと確信を持って言えるが、舞北は笑った。
「違う違うそうじゃなくて、なにかこう、敵対心みたいな、そういう感情は無い?」
しっかりそう言う舞北は相当に不自然なくらいに優しい、一瞬手がピクリと動くのも分かった。放したかったに違いない。気持ち悪い奴だと思われた、そうに違いない。
「罪悪感なら、あるかな。」
「そう、それが認知。」と舞北。
「多分違うわ、それ。」とほぼ同時に一ノ瀬。
そして二人は顔を見合わせた。




