異能力バトル57
「そもそも籠城というのは弱点だらけの時間稼ぎ作戦な訳だが、補給路の確保は難しく、攻撃に出るにも一苦労。そんな作戦を大胆にも不適にも採用した敵将さんはおそらくまとめ切れていないのだろうよ。味方と呼べるかも分からぬごろつき供をよ。」
そんな事をべらべらと話すのは六腑である。
詠唱から解放されて事の成り行きを見守るだけとなってからはまあ良く喋る。
「もしかしたら敵さんは将を変えているかも知れなんだ。それでもだよ、わたしの攻撃の手が休まることは、もうあり得ない。桜八長重老を、わたしの愛した男を。殺したのだからな。」
へらへらと笑みを貼り付けながら殺気立つ六腑を止められる者はいないだろうし、止めようとも思わない。
「ところでこれから大地震が起きるわけだけれど、このメカニズムを知りたいと思わないか。わたしだけのものにしておくのはもう止めようと思っているんだが、君は、知ったところできっと使わないだろうし、使ったところでわたしのようにうまく出来るとは思えない。やはり君がいいかとおもうのだよ。わたしは。」
最速もすぐそこにいるというのに上機嫌な六腑はお酒でも呑んでるのではないかと思うほど絡んでくる。
若干だが、うざい。
「地脈を読む。起爆材を仕込む。発破する。
大体そんな感じだ。だから移動式の爆弾が大量にあると便利でしたよ。」
うひゃひゃと笑う。
「いいのか、そんな秘密を暴露しても。」
松本は言う。反対側からからまる腕をほどきながら。
「良いも何も何度か使っているからな。分析くらいはされている。そう言うものだ。なあ最速。」
「分析してもおいそれと使わないのは普通とか倫理とか言う物が邪魔をしておるからな。利用するのは独裁者か相当にいかれた奴だけだよ。」
話を振られてすぐに答えるのは流石だ。虚無子がそんな事を言うと六腑は遠くを見るような目をする。
「いかれた独裁者か。それは桜八の事だろうな。」
「街をターゲットにしたのは、流石に意味があるのだろう。」
「前回のことだな。良く分からんが桜八がやれと言ったからやった。」
軽口をたたいて見せる両者だが、内容は比較にならないほど重い事実だ。
意味も訳も分からないまま街が一つ犠牲になっているのだ。それを言われたからやったというのはあまりにも冷たい物言いだと思う。
「反逆や逆襲や謀反なんて言葉がテレビや雑誌で取りざたされているけれど、こちら側からしてみたら宣戦布告というのが正式なところよね。」一ノ瀬がそんな事を言う。
「テレビや雑誌を見ているなら分かったことだろうが、桜八含め陰陽師連中はこちら側では無いのだよ。むしろあちら側の勢力。にもかかわらずカラの座についている筈の桜八が命じたと言う事実が儂は引っかかる。終わりを見たいというのは奴の言い分だが、果たして終わりを見るために必要な事なのか。」
「終わりというのはなんなの。」
「さあな、そこまで知らぬ。が、今なのだろうな。」
全員が首をかしげる様なセリフだ。
「いやさ、現状維持と言う事さ。終わりとは変化ではなく不変。終焉ではなく永遠。そんな事をも望んでいたようにも思える。」
そう言ってほほ笑む虚無子に鋭い眼光を当てつけて六腑。
「勝手を言うな。分かった風を言うな。」
負けじと虚無子。
「お前の愛した男は、どれほどの者だよ。」
「わたしが、桜八に見せたかったものは、桜八の望まない事だ。意外こそが桜八の追求した終わりだった。そのためになら街の一つや二つ人の千や二千。」
「それ以上言うなよ、わらべ。」蔑視する虚無子、これに気圧されたか紡ぎ出す声色は今にも泣き出しそうにも聞こえた。
「わたしは、桜八の理解者が嫌いだ。」
「ここらで手打ちかの。そろそろ、始まる。」と締めるのが虚無子というのは若干おかしな気分ではあったが、笑える空気でも無ければ、ほかに適任もいないのだった。
ちょっと間を置いて、どんどんどどん、と、一斉に音が鳴る。
爆発の音、それから沈黙、更にそこから地鳴り。
望遠鏡でのぞいて、桜八長重老の屋敷が瓦解した。
すくりと立ち上がる六腑。
「行ってくるよ。」
随分と落ち着いているように見えるが、そこは暴走の名を冠する者。
ぴょいっと、ひとっ飛びで遠くまで行ってしまった。
おそらくは瓦解した屋敷の中の生き残りのことごとくを。




