異能力バトル50
桜八長重老。
そう語った後に、チョウジュウロウのロウは別に敬称という訳ではないぞ。チョウジュウロウが一括りの名前なのだ。と付け加えた。
そして、ここから先は二人で話す意味はほとんどない。そればかりか六腑なんかを交えて話がしたいのだが、良いだろうか。というので、襖の奥に隠れて盗み聞きしていた空知に言づけた。
そのやり取りを見て色即是虚無子は言う。
「あの男、口が利けぬのか。」
そういう訳ではない事を説明するのも面倒だったので、若干嘘を交えて伝える。
「故あって。」
そんな風に暇をつぶしていると一ノ瀬が茶を差し入れに来た。タイミング的に見てこいつも盗み聞きしていただろうと勘ぐったが、栓の無い事なので問い詰めるのを止めにする。
一ノ瀬は茶を入れた後も席を離れない。そればかりか松本の隣に座布団を置いて鎮座した。日に日に図々しさが増していく気がしたが怒らせると怖いので何も言わないで受け入れる事にする。
そしてようやく、六腑現る。
「私の座る所は何処だ。」暫く茫然として、それを云う。
「好きな所に座ってくれ。」と言って部屋の片隅にある座布団の積みあがった所を指さして言うと、丁度その方向から空知も入って来た。
「そうさせて貰うよ。」と空知が微笑する。
「喋るじゃないか。」色即是虚無子が騒ぐが誰も相手にしない。
空知がゆっくりと松本の隣に座る。これを合図にして六腑もどすんと腰かけた。
「で、何の用だ。」いつもの微笑はない。六腑は色即是虚無子を睨んでそう言うと色即是虚無子も意味あり気に笑って見せる。
「まずは説明だ。ここにいる阿倍の六腑は陰陽師の中でも頭抜けて危険な奴でな、暴走陰陽師なんて呼ばれている。腹の中にあるのは暴力と破壊、そして暗殺だ。」
「なるほど。」と松本がうなずく。
「それが如何した。」と、六腑はご立腹だ。
「あだ名は大事だろ。ちなみに我は最速の陰陽師。」
「今までの死に方が、だろう。」と六腑が皮肉を言う。
「お前に殺されておったのだ、避けることが出来なかったよ。」
「そうだろうよ。今回の失敗はそこにいる最強くんだからな、私が手を下したわけではないんだ。」
「6歳にも満たぬこどもを容赦なく殺しに来るのはお前くらいだったわ。」
「そろそろ、話を前に進めてくれないかしら。」気の無いの一言で二人のやり取りを止めたのは一ノ瀬だ。
「そうだった。すまない。話を戻すよ。長重老の事だ。」
「絶対多勢の長重老と言われている。」
虚無子が謝り、話をややこしくしている六腑が話を進めるのは癪だが、数は武器だと言う事を良く知っている松本は、その異名を聞くと背筋が凍る思いがした。
「陰陽師では、ないの。」一ノ瀬が聞く。
「勿論陰陽師だ。しかし、長重老は長重老で特別なんだよ。」
「じゃなくて、何とかの陰陽師っていうあだ名じゃあないのかって聞いてるの。」
「だから言っただろ。長重老は特別なんだよ。」
「百歩譲ってそれでいいとしても、何が特別なのか分からない事には話が出来ない。」
「数が多ければ事が有利に進められるのは知っているだろう。票集めならまず無敵。戦になった所で相当に手ごわい。その多数の意思を一手に引き受けて尚も自分の意思を通す。それが絶対多数の長重老だ。」
「魂使人を一度潰そうとしたのも、その人か。」
「そうだな。そんな事も在った。」
「結果から言えば潰すまでは行かなかったが、魂使人連合という集団を作るには至ったな。」
「だから、聞きたいのはそういうのじゃなくて。」と一ノ瀬が怒り出す。
「何が特別か。を、聞かせているのだが。」
「怖い怖いと嘯ているだけが特別ではないでしょ。そうじゃなくて、なんで今までそんな大物の名前が出てこなかったのかを聞きたいのよ。」
「引退したからな。」
「何を。」
「カラを。」
「は?」
「先日までカラをやっていたのが、桜八長重老だよ。」
「引退したばかりで何でその桜八長重老が敵になるのよ。」
「再選という制度がある。根拠はそれだけだが、まあ平たく言う所の勘だ。」
「十分だよ、カラの座は引退するのはもったいない役職だし、再度選挙で勝てるなら間違いなく出て来るだろうから。」
松本が発言すると一ノ瀬は黙る。




