異能力バトル5
瞬間、少女は弾けて消える。
それから声がする。
「乱暴ね、二人の恋路を邪魔するなんて野暮っていうものよ。」
消えた筈の一ノ瀬の声である。
黒髪の少女は答える事なく倒れてしまった松本に両の手を当てる。
何かの儀式であるはずのそれを気にしてか、一ノ瀬の声は続ける。
「そのツルギがあなたのチカラね。こんなに綺麗になったのは初めてだもの。私の知らない反応、それはあなたのチカラの作用だと示している。そうよね、舞北さん。」
言って姿を現す一ノ瀬。何もない空間には人の形に光が集まり、そうしてそのまま色が加わり、出現した。
舞北は現れたそれを指標にして言い返す。
「どうして、こんな事を。」
「分かっているのでしょ? 私達は人類から隔絶された存在。上位存在。だから個は個である為に戦わなくてはいけない。戦って生きて行かなければいけない。その為のチカラであるから行使する事は自然の事。本能で、互いを同種であると認識できるのはその為、そういう事なのよ。」
「それでも、松本くんは関係が無かった。戦う気のない人だった。だから一ノ瀬さん、あなたのやった事は、いけない事。」
「分かっているわよ。だけど、それも強さなの。チカラの使い方の一つなの。強くなければ生きてはいけないの。だからこうするのが、早いのよ。」
「強い事は生きる為に必要な事。それは分かる。だけどやっぱり優しくないと、意味がない。強くて生きているだけではケモノと同じ、人間にはケモノにはない理性がある。優しくなれる筈、だから。」
「どこかで聞いた風な事だけど、それはそうね。だけどね、もう遅い。今更変える訳にはいかない、人を一人糧にして変わってしまっているのだから、もう引き返す事は出来ないのよ!」
そういうと舞北を囲って一ノ瀬が群れで出現する。光が湾曲して人の形になると色が付く。その一つ一つが一ノ瀬であり、恐らくすべてが幻である。
それが臨戦態勢と一目でわかる。
舞北も応戦する為に立ち上がり、辺りを警戒しながらこれを言う。
「人はいつでもやり直せる。出来ないと思う心こそが出来ない原因、だから。」
「うるっさい!」
一ノ瀬が吠える。同時に一ノ瀬の群れは一斉に舞北に襲いかかる。




