異能力バトル48
名を色即是虚無子という少女は六腑によるところの暗殺対象である。
それももう過去の事ではあるも、暗殺対象が、対象と定めた相手の所へやって来るのは異常だ。
そして、暗殺の際に顔を合わせている筈の空知を見て言い放つ言葉も又、異常であった。
「生きていたのか。」心底驚てこれを言う。
空知は虚無子を一目するも何も答えず、行ってしまった。
「面識が。」
「臆面もなくそういう事を言えるのはなかなかに図太いと言わざるを得ないよ、松本武。」
図太いと言われてしまった。なかなか痛恨である。
色即是虚無子は少女である。と、先も言った所だが、その実年齢は5歳と言う事だ。
5歳児に図太いと言われてショックを受ける程繊細な松本を図太いと言う5歳児だ。
「それで今回はなんの用で。」
「戦略的に間違っている事を伝えに来た。」
「と言うと。」
「我を死なす。と言うのは、将来的には間違いではない。しかしだ、今やるべきことでもない。」
「繰り返しになるが。」
「踊らされているのだよ、お前は。」
誰に。と尋ねようとしたが、聞くまでも無い。阿部の六腑でまず間違いはないだろう。
「しかし何故、六腑はそんな事をさせようとしたのだろうか。」
「委細承知の上で実行に移したのはお前だろう、松本武。」
「まあ、そういう事にはなる。」
「ふむ、まあいい。聞かせてやるよ。」
そう言うと色即是虚無子は、此方の用意したリンゴのジュースに手を付ける。
「我は、憑依体。お前も過去に見て来たであろう。憑依と聞いて思い出されるものを。そうだ、鬼だ。しかし事はそんな単純ではない。鬼の憑依と言うのと、我の憑依は別物と言って過言でない。」
「どう別なのかは答えてくれるのか。」
「そう焦るな。そうだな、まずその辺を伝えないと誤解が生まれるか。いいだろう答えよう。まず、陰陽師を一人あげるなら間違いなく安倍晴明だろう。彼は陰陽の夢であった不老不死を実現させたものの一人だ。しかし完璧ではない、欠陥がある。それは陰陽術反魂の令の欠陥でもある。如何に反魂を成功させようとも、その一回一回に成功率というものが有り、失敗のリスクとの闘いでもある。その上、人間に用いた場合にはもれなく老いというものが付いて回る。老いが有り、失敗のリスクがある。これが陰陽術反魂の令における欠陥だ。
そして、あとを追うものは必ず現れる。如何に安倍晴明が万能の天才であったとしても、称賛する者がいれば批判する者も現れる。批判方の最有力者が芦屋道満だ。彼がり辿り着いた境地は憑依だ。奇しくも反魂の令に似ているな。反魂の礼は人の魂を降臨させる技術に対して、道満の憑依は鬼人。即ち、最早人ではなくなった者の魂を、主に悪霊を降臨させるものだ。
そしてさらに、もう一人あげるのであるならきっと人々はこういうであろう。色即是空であると。」




