異能力バトル44
私は欠落している。六腑はそう言うと悲しそうに笑って見せた。
「それを心得るだけの度量が貴方にはある。」そう励ました。
14日、つまり2週間前に、都市壊滅を謀った女はその罪と偉業の狭間で揺れているのかもしれない。結果的に魂使人が増えた奇跡の数日を陰陽道的に日輪の陰る日と位置付けて審査された結果陰陽院の長、つまりカラは悪夢のち奇跡と位置付けた。
この悪夢の部分が絶望ではないのが六腑の思惑と違う所なのだけど、悪夢の責任を取って現カラは引退し、阿倍の六腑がカラに相応しいと声高に叫ばれる中彼女の裁定はやはり、悪夢を引き起こした責任があるとしてカラの座に就く事を諦めると言うものだった。
次席に上がったものも座の重圧に耐えられない模様だった。何せ、陰陽道を心得る者なら誰でもいいと言うものでも無い。
だからその次位に名乗りを上げる者を暗殺したら、おめでとう君がカラだ。というのが六腑の言葉。
「それじゃあ、次席に名の上がる人がカラじゃないか。」
「2番争いが得意な奴が頭になるなんて世も末だ。そしてソイツは自分のして来た、前カラへの仕打ちが自分もされるという思いもある。何より、敗戦の将が頭になるなんてやっぱり我々陰陽集は看過しないだろう。だから、1番目に名の上がった私が推薦する上に、2番争いが得意な奴の動向が読める事は絶対条件、3番目のカラとなるのは君しかいない手筈だよ。松本武くん。」
「そこまで揃っていても暗殺、しなくちゃいけないのかよ。」
「君が動かなくても誰かがやる。そして統率されていない暗殺は、鏖殺になりかねない。」
「統率なんて言っても、俺はまだそんなんじゃない。」
「がんばり所だ、なんたって君は不出来な者達の王なのだから。」
不出来な者達とは、悪夢の頃に生み出された魂使人達の事だ。前カラが名付けた。
「がんばると言っても、言う事を聞くのは建前上一ノ瀬位だ。」
「おや、最強の坊やは。」
「一番信用できない。」
「ほう、なかなかヘヴィな環境だね。君も。」
「同情のついでに愚痴を聞いてくれ。」
「内情を吐露してもいいと言うなら、どうぞ。」六腑はそう言って笑う。やっぱり励ますんじゃなかったと後悔しても後の祭り。石橋なんて物が俺の前に在れば叩いて渡ったのにな。
「いいさ、聞いて貰おう。」
希望が一筋の光とよく例えられるように、藁だって立派に希望の光だ。鷲掴みにして見せる。
「結果から言うと、俺が頑張ると近しい者が死ぬ。この人には死んでほしくないと、強く願う程そうなって仕舞う傾向がある。」
「なるほど今回は私という訳か。それは確かに頑張ってほしくないな。」
「だろ。」
「しかしな、陰陽師でありながらこんな事を言うのもなんだが、呪いを信じてはいけないぞ。」
「と、言うと。」
「根拠がある訳ではないから、君の愚痴を優先して聞こうか。」
「情報収集か。」やっぱり藁では希望の光になり得ないと悟った瞬間だった。
「それでもいいと言っただろう。君が。」
暫くぽかんとするが愚痴なんてそう簡単に吐けるものじゃない。吐ける時に吐き出して置くのも悪くないと考え直して松本は続ける。
「みんながみんな最強だって思い込んでいるから、余計に質が悪い。」
「群れ、とは洒落が効いていただろ。グンと読めなくもないが、隊ではない。」
「何が言いたい。」
「おや、侮蔑はお嫌いか。聖人の様だな、まるで。」
「そうやって煽って、お前の為になるのかよ。」
「君の為には、なるんじゃないか。」
たまに見せる真剣な眼差し。これに松本は息をのむ。
「だからさ、信用できる奴を出来るだけ最強にして置けば統率も取れるし、厄介な魂使人の間引きも出来る。一石二鳥にも三鳥にもなる。一挙両得だよ。漁夫の利をせしめて独り占めしてしまえばいい。」
「嫌だ。」
「さっきは君を聖人なんて言ったが、その聖人だって時に軍隊を持つんだぞ。」
「いつの時代だよ。だから古いって言われるんだ。」一ノ瀬に。
「おや、おやおや、男子風情が、三十路過ぎた女性に向かって、古いとか古参とかお局とか、言うもんじゃないぞ。」
たまに見せる真剣な眼差しでこれを言う。いや、多少は怒りの炎が見え隠れする。これにも松本は息をのむ。明確な恐怖を肌で感じるからだ。そして、この言葉は警告でなく命令である。証拠にほっぺが痛い。




