異能力バトル39
シュークリームを食べる時に指に付いたクリームを丁寧に舐る六腑を疑いの目で見ているとこんな提案をした。
「カラの座に付いたならば、私が実権を握ろうか。」
一瞬何を言っているのか分からなかった。実権を握るのが阿倍六腑だとして、カラの座についた松本になんのメリットがあるのか。
「いやいや、そんなに考えこまなくても分かるだろ。つまりは私が君の味方になると言う事だ。それとも利用されるだけというのがお気に召さないのかな。」
この時点で腑に落ちない点が三つも四つも生まれた。
「阿倍の六腑は味方ではないのか。」
「おや、また質問か。まあいいよ。答えてあげよう。
まず私、阿倍の六腑にも立場というものがある。だから君、松本武くんをカラと会わせると言う事まではお手伝いが出来る訳だ。なんたってカラ直々の命令だからね。聞かない方がどうかしている。問題になるのはその先、カラの座を狙える者はすべからく狙う冪という思想の連中が私を担ぎ上げるだろう、という事。ならば私もカラの座を狙わなくてはいけない。と言う事だよ。今の君をおいそれと担ぐことは出来ないんだ。」
「利用されるだけの存在になった俺ならカラにしてやらなくもない、という事か。」
「そこは難しい所だね。カラが君を手放すなら君を私の所有として好き勝手出来るのだけど、カラはきっと君を担いで実権を握る気でいるだろうから、手放さないよね。」
「カラに成ったら俺はどうなる。」
「おや、気の早いこと。でもまあ教えておくよ。きっと君は何もできないままカラになって、何もしないままカラを続けるだろう。と言っても飽くまで政治的な物事での話だ。きっと君はカラに成ったら好き勝手やりたい放題だろうね。魂使人でカラになる奴なんて前例がないから、やっぱり駄目でしたっていう前例を作りたがる連中の言いなりになってね。でも君自身は楽しい人生になるのは間違いないよ。何不自由しない人生の始まりだ。」
「どうやったら俺はカラに成れるか。」
「奇跡を皆に見せたらいいのさ。不治の病を治して見せたり、現代の医療では回復の難しい怪我なんかを治して見せたりね。」
「そんな事で。」
「そんな事でも普通は出来ない。君は少し、いや大分自分の価値というの云うのを上方修正した方が良いだろう。」
「自分の価値、か。」
考えてみたら利用されることの多い人生だったように思える。ただ、見下される事に成れていた。魂使人である事で、また普通であろうと意地を張る事で。
松本はもっと自分自身を利用すると言う発想を持った方が良いのかもしれないと、思えた。




