異能力バトル36
替玉と言ったのは恐らく舞北一葉の代わりという意味だろう。
つまり舞北一葉の代わりに陰陽師たちに引き渡されたという事。言霊は我らの代わりに何をもらい受けたのかは分からない。只、それ相応という事だろうから、覚悟を決めなくてはいけない。親に売られ、里親に売られた悲しみを乗り越えるどころかまだ見た事もない里親に拾われる覚悟。どんな扱いになるか分からないが、それでも拾う奴がいるだけマシだと自信を納得させる松本。
「向こうは、舞北の言霊は何を得た。」松本が問う。
「それは、聞かない方が良いだろう。何れにせよ君達は幸運だ。」
「拾われるだけマシ、いや、買い手がつくだけマシと言う事か。」
「買い手か、はは、それはまあ、どこにでもいるだろうね。君は奇跡の力を持っているし、他の二人も相応の使い手なのだろう。」
「まあ、対人では最強だと思っているわ。」一ノ瀬は六腑を真っ直ぐに見やる。いつでもお前を殺せると威嚇するように。
「能力がどんな物かなんて議論は意味がない。」空知も一歩前に出てこれを言う。
「能力がどうかなんて関係ないのさ、只、そこに奇跡が有ればそれでいいと言うのがこちらのオーダーだった。君達二人は本当に只の序でなのだよ。」六腑も負けていない。余裕の笑みで切り返した。
「話を戻すとして、奇跡との交換で向こうは何を得た。」
「平和、かな。」
「それで、俺に何を求める。」
「カラの意思を継いで欲しい。」
カラ、それは陰陽師の長と言って過言ではない。カラの座を求めてという理由でこれまで、いろんな奴がいろんな犠牲を払っていた。そして松本は恐らく一番遠いと思っていた。松本が勇者ならカラは魔王という具合に正反対の所に居るのだろうと、それが今天変地異でも起きたような事を言われたのだ。
「死んだのか。」
「沢山死んだがカラはほぼ無傷だ。」
「じゃあ何故。」
「奇跡の力を使えるというのは人の上に立つという事だ。向こうでも、魂使人連合でもそうだったのではないのか。」
松本は考える。
カラとは何なのか。ここに来て初めて考えるような気がする。いつか誰かが教えてくれる物だと思っていた節さえあるから始末に悪い。
ともかくだ、カラというのが陰陽師の長と言う事だからまずは陰陽師というのを考えてみる。
陰陽師とは人気の就職先で、あらゆる学問を摩訶不思議の解明に用いることを旨とする職としているが、その基本理念で魂使人と敵対している。
ここまでが基本で松本の知っている事。
ここから先は予想になる。
魂使人と敵対する為に生まれた組織ではないのに魂使人と敵対する矛盾が生まれた。それが恐らくカラの仕業で、カラの意思を継ぐという事は魂使人と敵対するのが松本であるという事。
マイナスとマイナスを掛けてプラスにするみたいな事なのだろうか。
「どうやら、納得しないと動けないみたいだな。」六腑はため息をついてこれを言う。




