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異能力バトルもの  作者: 藤雅
34/58

異能力バトル34


 しかし、松本の父である男はすぐに捕まった。

 逃げている訳でもなく隠れている訳でもないのだから身バレして当然と言えば当然だ。只なぜ今まで松本武に会いに来なかったのか、なぜ引き取らなかったのかを問われるとこう答えたという。

「認知はしたけど本当に俺の息子なのか確証もないのにおいそれと引き取れるわけないだろう。」

 そう、松本の父はガッカリ系の、いわゆる残念な大人だった。

 松本からしたなら目を伏したくなる惨状だが、言霊にはこれが好機以外の何物でもなく、さっそく交渉に入る。

「その引き取れる訳のない息子さんを私どもに預けてみては貰えませんか。」そう切り出して更に2センチはあるだろう封筒を渡す。

 父は中身を確認すると目を丸くした。

「足りませんか。」言霊はにんまりと笑う。

 足りるも足りないも費用が嵩むばかりだった自称あなたの息子が、目の前で札束に変われば人も変わる。

「あ、ああ、足りないね。」

 ガッカリ系の残念な大人代表の様な男だった父は言霊にたかる事になんの躊躇もない。あるのは若干の戸惑い。金に目がくらんだ状態では恐怖を殆ど感じなくなるらしい。

「では、それを手付として、引き渡しの書類にサインか印鑑を捺印して頂けたなら更に同じだけのものを用意しましょう。」

 父はそれで了承したという。

 あっという間の交渉で、秒速の瞬殺。

 父はやっぱり予想していた様に会わない方が良い人間だった。しかし、ここまで来て会わないのは何となしに勿体ないというか、据え膳食わねば男の恥というか、毒食わらば皿までもというか、なんとなく、会っておきたかった。

 会って、何をするという訳ではないけれど、会っておきたかったのだ。


「武、お前は本当に金食い虫だった。だけど最後にどんでん返しだな。ははは。」

 ダメ男は笑う。

 松本は目を伏して今まで滞りなくお金を出してくれた事を感謝した。

「金か、ああ、それはいいんだ。一応は息子だしな、俺が出したというよりこの国の政府がほとんど負担してたんだぜ。」

 それを聞くと松本は感謝の気持ちが薄れてぶっ飛ばしてやろうかとも思ったが、それでも松本は一部だけでも負担してくれた事実を挙げて感謝した。

「良く出来たガキだな、本当に俺の子か。」

 男は怪訝そうに松本を見る。

「そう言えば武、お前の名前に関しては俺が名付け親だから、親と言えば親だったな。ははは。」

 そこまで言われたら聞きたくなる。名前の由来。小学校の頃の宿題で分かりませんでした。と、答えて教師も生徒たちも頓狂な目を向けたあの日の光景が蘇るようだった。

「ジャイアンの本名が剛田たけしだ。未来から来た猫型ロボットのドラえもんでも主人公であるところののび太くんの黒歴史の筈だったジャイアンを消す事が出来ず、遠ざける事も出来ないで、あれを友達の一人だと認めた。暴力と公害の寄せ集めみたいなキャラクターだったが、映画になると不思議といい奴になるんだ。」

 他愛のない話だった。それが自分の名前の由来だと聞かされて複雑だったけれど、のび太と付けないでくれた事に感謝の念を覚えた。

 それがお門違いなのは分かっているけれど、それでも感謝しようと思えた。

 何故生んだと母を攻めた事が有るだけに、せめて父には生んでくれてありがとうと言おう。そう思った。


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