異能力バトル33
お父さんってどんな人? と、聞かれて答えに困った松本はこう述べた。
「サンタクロースみたいな人さ。」と、そう答えて赤面した。
未だにサンタクロースを信じていると受け取れなくもないからだ。
サンタクロースの源流はいくつかある様にサンタクロースの分派も又いくつもあるという事を先にいうのを忘れていたからこその赤面だ。
普通、サンタクロースを信じていた者はこういう事を言われて、または自身で確かめる事だろう。
「サンタさんはお父さんなんだよ。」という事実がそれだ。
そして松本が発した言葉は、それだった。
しかしだ、松本のそれとこれとは随分と差があるという事を教えて置こうと思う。
サンタクロースはお父さんではなく、お父さんを例えて言うのであればサンタクロースという事で、つまりはだ、まったく違うのだ。
当然、松本はサンタさんを信じている訳ではない。
だから、付け加えてこんな事を言う。
「定期的に生活費が振り込まれているのがプレゼントだとするなら、姿も見せないし、所在もつかめない。こんな奴をどうして父だと言える? サンタクロースというのはロマンチックだったかも知れないが、他に例えようがない。」
「例えなくてもいいのに。」
かわいそうな子を見る様な目で窘める一ノ瀬。真理だった。
「分かった、伝えようとした俺が悪かった。父の性別は男、と思われ、日本在住、だったらいいなと思う。更に、お金持ちなら言う事なし。それが俺の父親だ。」
「じゃあ、お母さんは?」
「弱いくせに優しくて、馬鹿なのに馬鹿のふりをしているだけと言いたげな感じの人さ。父から振り込まれている筈の生活費を使い込んでからめそめそ泣くんだ。それがどれほど迷惑だったことか。」
「いえ、そうでは無いの。どんな人なのかも確かに聞いてみたいなぁとは思っていたけれど、そうじゃなくって、お母さんもお父さんが何処に居て、何をしているのかを知らないのかっていう事を聞きたかったの。」
「母は死んだ。俺が中学校の時だから2年前の事だ。」
「壮絶なのね。今はどうやって暮らしているのか、かなり気になるけれど、それはそれとして、お父さんが見つからないんじゃ話にならないわね。」
「どうやっても何も、家賃さえ入れて置けばアパートを追い出される事は無いからな。アパートっていうのは入る時に保護者がいれば未成年でも入れるものなんだ。途中で保護者が居なくなったとしてもだからと言って直ぐに追い出すという事は倫理的に出来やしない。いうなれば公然の秘密の中に俺は生きている。」
「話にならないだけで話が出来ないという訳ではないのね。」
「話にならないのは寧ろ現在の社会情勢や政治体制云々だな。」
「そういう所まで話していたんじゃ話が破綻がするから止めて。でもお父さんの名前も教えてくれないんじゃ本当に話にならないわ。」
「その辺も不明だな。松本という性だって父探しの手がかりにならない可能性があるしな。困った。」
「おやおや、またしても不穏な事を言うのね。お父さんとお母さんは夫婦ではないっていう事かしら。」
「母がシングルマザーで俺を生んでいたなら、父は別の家庭が有ってもなんら不思議じゃないから、その場合は別姓の方が父としては都合がいい。寧ろその可能性が高くて眩暈がする。」
「公然の秘密の中に生きているだけあってあなたの背景がぼやけてて眩暈がするわよ。」
本当に主人公なの? と、訳の分からない事を言って困ったように首を傾げる一ノ瀬。




