異能力バトル32
播磨蜜柑は死んだ。
銃口をコメカミに押し付けて、発砲したのだ。
右から左へ抜ける銃弾は左半分の頭蓋を吹き飛ばして脳漿をぶちまけて、死んだのだ。
松本は一度は堪えた涙を、今度は堪えられずに、零した。
ぐいとふき取るが次から次へと零れて止まらない。
流れる度にふき取るが止まりもしない。
松本は声にならない声で囁いた。
「俺が間違えたのか。」
一ノ瀬が答える。
「そうよ。間違えたの、あなたは。」
「どこで間違えた。」
「人格形成の段階かな。取返しが付かないのよ、そういうのは。」
「そんな根本的な事じゃない。選択肢はまだあったのに、俺は間違えたんだ。その選択肢がどこなのか、どれをどう行けばよかったのか。俺には、分からない。」
だから、教えて欲しい。どこで間違えたのかを。と、松本は嘆く。
「人は皆何かを失う、只失うのではなく奪われて無くす。その見返りに何かを貰える訳ではないのに、教訓を得たとか勝手な御託をひけらかす。そうやって自分を、過去を誤魔化して、清算して、騙して、生きていくものなのよ。だから自分だけが悪いだなんて思わないで、人間なんて使い捨ての駒に成れただけでもめっけものなのよ。誰かの役に立つという事が人の道だというのなら、そういう事なのよ。」
「おまえは俺をどうしたい。泣き止むようにあやしたりしないのかよ。」
「あれ、今、私、あなたを励ましているんだけど。」
「どこがだよ。泣きっ面にハチとはこの事だ。だけどお陰で目が覚めた。」
言うと松本は舞北言霊の所へと足を進め、問う。
「今のはなんだ。」
「反魂令。反魂の法やネクロマンサーの術の様なものだ。」
舞北言霊は思いのほか口が軽い。何かあると思ったが先か言霊は言う。
「一回こっきりの反則技を使わせて貰った。」
「一回、なのか。」
「水晶髑髏も遺骨粉も使い切った。道具がない。」
「さっきの髑髏は舞北一葉の物ではないという事か。」
「何が言いたい。」
出来ればもう一度会いたいと言うつもりにしていた松本だったが、死者に一度でも会えたこと自体が幸運なのだと悟って、言うのを止めた。
「何でもない。ところで追撃が止んだな。」
「一葉は有象無象を蹴散らす目的で呼び出した。しかし、まさかこれ程とはな。」
「何が起きたのかさっぱりわからない、説明を頼む。」
「芦屋ミツルを撃退し、ついでに有象無象も処分した。」
「あの一瞬で。」
「チートね。」松本は慄き、一ノ瀬はこれを言いにやって来た。
その一言に尽きると言いたげだったが、それを云い始めたら本当にどこかのインフレバトルものの様に成るのでそこまでは言わせない。
「しかし、良いのか。」
「何が。」
「芦屋の大将は己の手でトドメを指したかったのだろう。」
「誰が。」
「さもなくば大群を虚像として使うは不自然。」
「確実に仕留めたかった。ただそれだけだ。」
「そして、次をどうする。」
「とりあえず、孫になるよ。約束通り。」
「では、保護者を出せ。」
「保護者か、父しかいない上に、何処に居るのかもわからない。」
これを聞くと舞北言霊は唖然となり、気を改めこう言う。
「では、とりあえず保留だ。」




