異能力バトル31
松本の言う陰陽師とは即ち芦屋である。
芦屋ミツルと呼ばれた芦屋の家長で敵将の一角。
これを倒すために大部隊をフェイクとして動かした。
本当なら大部隊を敵陣のど真ん中にあてるのが適当だろうに、松本はそれをしなかった。
何故かと問われたならばきっと松本はこう答えただろう。
「部隊が大きければなる程それの持つ力も又大きい。しかし、敵は芦屋一人だ。そこまでの力を行使する必要は無いと考えた。」と。
しかし、それが今回の事態を招いたと言って過言ではない。
敵、芦屋は魂使人の大部隊を避けて的確に松本の率いる隠密部隊と接触してきたのだ。
そして、一般人とみられる者を使い鬼人を量産、これを持って松本の部隊との決闘を仕掛けたのだ。
「取引だ、子倅。」と、舞北言霊が言う。
「後にしろ。」
「この場はワシが何とかしよう。」
「出来るのか。」
「暁にワシの子と成れ。」
「年齢差がすごい。」
「孫でも構わん。」
はたと気付いた。舞北一葉の事だ。経緯は違えど似たような事があったのだろう。奇跡の能力を持っているが為にいざこざに巻き込まれ、それ等を何とかする代わりに舞北に成れという話だ。
松本はそれでもいいと思えた。
例え、血の通わない兄妹でも舞北一葉と一つの家族に成れるのなら、それでも。
「かまわない。」
言霊はニタリと笑うと、それらしく印を切り、何やら唱え、そして。
「反魂令、舞北一葉。」言って何かを撒く。
白い白い粉。そして手には、髑髏。
見る見る肉が付き、紅が指し、女が現れる。
黒髪の流るる、赤き相貌の、白き柔肌。
「ごめんね。こんな再会になってしまって。」
女が松本を見ると言った気がした。
女の背後には、もうすぐそこまで悪鬼羅刹が近づいていた。が、これ等をほんのひと振りの剣戟で一掃して見せると、女は消えた。
舞い散る粉の無くなるものと時を同じくして、消えた。
「舞北、さん。」
涙が、こぼれる様な暇はない。それでもぐいと拭いて何事も無かったようにすると、反転し、一点を睨みつけた。
「播磨蜜柑、お前だな。」
「なんの事だ。」播磨はとぼける。
「決まっている。この事態を招いた犯人だ。」
「意外と冷静だな、少年。」
播磨はもとよりこちら側ではない。云わば向こう側の人間だ。
「しかし、何故。」
「犯人は分かるがトリックが分からないと言った所かな。」
「分からないのは動機だ。」
「動機も何も、私は元から、いや、元は芦屋だ。」
「そうだ。今は播磨で、蜜柑だ。芦屋忍ではない。だから聞きたい。」
「聞いたら許してくれるのか。」
「許す。」
「詭弁さ。」
「本当だ。現に空知も許している。」
「大人の世界というのはそうは甘くないんだ。」
「そんな事知らない。俺は子供だ。子供でいい。」
「ふん、どうでもいいさ。私は乗り換えるべき船を間違えたんだ。いいよ、話してあげる。」
言うと播磨はつらつらと一つの物語を、一説を述べた。
「朔日、私は芦屋と取引をした。」
「私が警告も砲も撃たずに芦屋ミツルを見逃せば、その時は芦屋に戻れるという物だった。」
「考えてもごらんよ。もともと私が此方側の人となる条件は向こうさんに舞北一葉が居る事だったじゃないか。それをずるずると先延ばしにしてズルをして、それで今もまだ此方に居る。」
「じゃあさ、いつかは向こうさんに戻るか、此方も亡い者として扱われるか。どちらしかないじゃない。」
「向こうさんは私なんていらない物だった。だから前者はまず無いからね。そういう事で私は此方の人間としての領分を守った積りだった。」
「でもね、そうは問屋が卸さない。ちゃんとしないといけない時期って奴が来ちゃうものなのさ。」
「だから、だから、私は蜜柑からネズミになった。」




