異能力バトル30
策は無いかと問われて、現状確認を優先する輩とは一味違う男がこれを言う。
「策は無いが、敵も無い。即ち無敵であるな。」空気を読むという行為が一切合切抜け落ちているこの発言の主は今回の敢闘賞ものの成果を上げた男である。
「晴天よ、少し黙っておれ。」と叱りつける舞北言霊の姿がある。
「黙っていてくれると嬉しいのは確かだが、現状把握よりも策が欲しいのは事実だ。能力が一つ二つ使えるからと言って一気にこちらが優勢になるという事は考えられない。」
「しかし少年よ、現状の把握は大事だぞ。」と播磨蜜柑。
「何しろ今ある状況は昨夜とは違う。昨夜は嵐の様な状況だったのに、今は無風、凪ではないか。」
「それに加えてこちらは味方が大集合しているのでしょ。」と、一ノ瀬。
「現状、味方が多いのは事実だし、今が凪だというのも分かる。しかしそれより一手先の次が欲しい。」
「焦るな、子倅。」と舞北言霊は松本をにらむ。
「要するに、この役立たずが役に立てば文句ないんだろう。」
へらへらとした口調は相変わらずだが、空知は言う。
「そうだ。お前が作戦を決めると言っても過言ではない。」
「燃えるね、そういうのはかなり好きだ。だけど僕はそこまで役には立たない。立とうとも思わない。」
それでもいいか、と空知は松本の目を見る。へらへらしてはいるがそのまなざしは真剣そのもの。
「何を今更、品定めのつもりか。」と松本は嘆息する。見下すように、強者であるように、振る舞った。
「了解、ボス。ならば言おう、本丸を。」
言って空知は敵に前線基地を教えた。
自分が術に掛けられたその場所を言う。
「部隊を二分しよう。」松本は空知の言う事を受け入れてこういった。
「大部隊を前線基地に送り、隠密部隊を陰陽師のもとに送る。」
その作戦は恐らく穴だらけだ。きっと誰かが尻拭いするだろう事はこの時点で舞北言霊には分かっていたように思う。
それでも舞北言霊は従った。
子倅に、この少年に、高々高校生風情に、魂使人の次を任せたのだ。




