異能力バトル28
行くも地獄、戻るも地獄とはこの事か。
行きはよいよい、帰りはこわいその状況で、進退此処に極まった状態で空知は、前のめりに行動する。
見るも無残だが、空知は損して得取れという商い魂みたいなモノがそこに見て取れる。
「う、ああ。」うめき声を発して、舞北晴天に襲い来る。
「待て。」と手のひらを向けて睨むと空知は止まった。
そこで、やっとわかった。松本にもわかってしまった。
「少しばかりやり過ぎたようではあるが少年よ、意識があるな。」ならば待て。と舞北晴天は切り込んだ。
「あ、あ、う。」
空知は涙した。鬼の目にも涙などと言いたい訳ではないが、空知はきっと助かりたかったのだ。
どうやっても取り返しの付かない事を、人殺しを、やってしまってから空知はずっと助かりたくてもがいて、足掻いて、苦しんでいたに違い無い。ただの人殺しとはわけが違う。戦争の引き金になってしまった人殺しは、いち高校生風情が責任を取れる案件では既にない。にも拘わらず、責任の所在を実行犯である空知に押し付けられていたのだ。
空知からしたら敵に悟られたというのは皮肉だろう。それでも一縷の望みを、希望を、見てしまったのだ。
この涙は、それを物語っていた。
「つまり、意識がありながらに鬼の力を容赦なくぶつけて来ていたという事。」それはやはり容易に許される事ではない。そして、それを出来てしまえるという事は、それだけに危険な存在であるという事だ。と晴天は言う。
理屈はなる程しっかりとしている。しかし、それでは、当てが外れた空知の行動を予測できなくなってしまう。いや、乗るか、反るかの二択を迫られていた以上、空知にはもう舞北晴天を倒し、鬼の力という物の威力をひけらかす存在として、一つの指標として生きる他道は無い。
だから、これは、舞北晴天の、戦略だ。
呼吸を整え、体を万全に近づけて、士気を上げ、相手の行動の先を読み、相手のやる気を削ぐ。つまりは自分を優位にして相手に劣勢を強いる行動そのもの。
結果として空知は精神的に追い詰められている。もう、玉砕しかない。
ならば。
「空知。」と、声を上げてやる。「生きたいのであれば、死にたくないのであれば。」
謝れ。と松本は睨みつけて言う。




