異能力バトル27
「がんばれ舞北晴天。」
「がんばれ、がんばれ。」
声は舞北晴天に届く。すると舞北晴天は更に強くなったように見える。
期待される事で集中を尖らせ、適度なプレッシャーを感じる事で士気を上げる。
人とはそういう心理で動くという、お手本みたいに舞北晴天は強くなって見せた。
「おお! おおお!」と吠えながら鬼と化した空知を追い詰めていく。
その様は仁王の如くと云わんばかりの会心劇だ。
体格や戦い方は舞北晴天が上を、そして単純なパワーでは空知が上をいく。
ちまちまと攻撃を加えても一撃で挽回されてしまう戦いはどちらが有利と言う事は無い。しかし、応援の効果により戦い方に変化を加えた舞北晴天が押している様には見えるが、果たしてと言った具合。
「ぐるう、ぐるる。」と唸る空知も負荷がある様子。
戦いの変化について来るようならば空知の勝ちだろう。ならば、これが舞北晴天のラストスパートのラッシュだ。
だからこそ此方も手を休めない。応援を止めない。周囲が敵に囲まれて居ようとも、ここは、この場だけは舞北晴天のホームと言う事だ。
それだけに負けられない、負けては言い訳も出来ない。
そして、舞北晴天の真空飛び膝蹴りが空知の顎を捉える。これがトドメだった。
空知の前歯が二、三本ぼろりと落ちて、これでもかという程に血がだらりと落ちる。
「ぐげああ!」
転がりぬた打ち回る空知。
勝利した舞北晴天は片膝をついて休息している。
「よくやった!」
心からの声が舞北言霊から発せられ、そして、勝鬨を上げる舞北晴天。
しかし、しかしだ。一向に次が見えない。
空知をぶつけて置いて、敵将が出て来る様な事が本当にあるのだろうか。
「まさか、ここまでとはね。」
暗がりからの声は血気上がった此方を一瞬で止めるものだった。
少なくとも、松本は声の主を知らない。
「ここまで惰弱だとは思わなかった。」
口を隠し、顔の半分を隠す男はそう言ってほくそ笑んだように思える。
だが、誰も止めない。
「空知、空知晃と言ったか。要らぬ、気に入らぬ。貴様も一介の人ならば鬼にもなって見せよ。」
貶し、怒鳴り、無茶を言う。それでも、男は止まらない。
「鬼に成れぬのであれば、果てよ。」
耳を疑う程の冷酷。それが敵将芦屋。
「ぐふう、ぐらら。」と、空知は立ち上がる。立つだけの体力もない筈なのに、気力だけで立ち上がって見せる。
触発されて舞北晴天も立たずにはいられない。しかし、息が上がるばかりで立ち上がる事が出来ないでいた。
コンディションは空知も似たようなものらしく、すぐに襲い来る事は、無い。その筈だった。
「善いね、その調子だ。勝てるなら褒美を上げよう。しかし、負けるようなら地獄の業火に焼かれて死ぬ事になるだろうて、ね。」
「いやいや、ミツル。」と、声をかけるのは、漸く声を上げたのは、播磨蜜柑。元、芦屋忍である。
「褒美を具体的に言った方が指揮が上がる物じゃないかね。」
「分家、君は賢いね。しかし、言わぬが花ともいうだろ。」
「言えないらしいぞ、坊や。聡い事を好む君ならばこの意味くらい分かるだろう。というか分からぬ様であればやはり死んだ方がいい。地獄の業火が嫌ならばもっとこっちへおいで。」と、播磨忍はいつの間にやら入手した拳銃を、銃口を向けていた。




