異能力バトル24
松本等は走り向かう。
到着が早いか松本は叫ぶ。
「空知、何故お前が此処に居る。」
しかし空知は答えない。答えなんて物が返せる状態では無かったのだ。
異形。その一言に尽きる。とは言え、形だけ見れば人間のそれであるし、顔もそれほど変わってはいないのだが、強いて言うなら目付きが鋭く、口から闇でも吐いている様に錯覚する程の闘気を身に纏っていた。
「してやられたわ。」
舞北言霊は険しい顔でつぶやいた。
「あれは一体なんだ。何が起きている。」
「鬼だ。あれは、顕現した鬼に相違ない。」
「俺には空知にしか見えない。しかし、あそこまで理性をかなぐり捨ている者が空知の訳がない。空知はもっとズルく、悪く、賢いと錯覚するようなやり方を好む。」
「だから、あれは鬼だ。空知晃の体に、顕現した鬼を憑依させ、戦わそうとしているのだ。こんなやり方をするのは、奴しかおらん。」
「ともあれ、先制は取られていないのが救いだな。」
「バカを言え。彼奴が此処に居るというのが既に先手だ。」
「どういう事だ。」
振り向く松本、瞬時に飛び跳ねる空知。
無警戒や隙と言ったものを鬼は好む。好んで襲い来るのだ。
松本は空知の殺気にあてられ防御しようとするが、間に合わない。だが、空知の攻撃もまた届かなかった。
飛び来る空知をがっしりと受け止め、庭に押し戻す者がいたのだ。
「父殿、ご無事か。」と、声を発する者こそがそれだ。
もとより舞北晴天が鬼と戦っていたのだ。それがいつからの戦いなのかはもう分からないが、臨戦態勢に在ったからこそ空知は動かずに居たのだと、松本は察した。
「術は使えず、戦略も無し。しかし図体はデカく、率直。」
ニタリと笑う舞北言霊は利用できるものは何でも利用する様な男だ。
「術に疎く、力に屈せず、どこまでも優しい。」
まるで、鬼とは正反対の様な男だと、そう言いたいようにつぶやく。
「これ程までに、宿敵と相見えた時に威力を発揮する者はそういない。」
宿敵と言った。鬼を、憑依を、宿敵と捉える事から相手が何者なのかは分る。
「分家になら勝てるとでも思ったか、阿倍と戦うという事は主の敗北を意味するという事だ。芦屋よ。」
芦屋。それは陰陽の道を行く者は、必ずと言っていい程見聞きするビッグネームだ。
今相手にしているのは、そんなビッグネームの率いる手下という事だ。
「どういう事かと、聞いたな。」
言霊は敵から目を離す事無く松本に告げる。
「人が死んだ。ゆえに式を行った。」
「葬式か、通夜か。」
松本もまた、言霊に倣って敵から目を離さないでこれを言う。
「どちらもだ。」
「何故隠した。」
松本は苛立ちを隠さずに言う。何故ならば死人はすなわち舞北一葉だからだ。松本にとって舞北一葉は友達であるし、大切な人だった。それだというのに弔う儀式に参加できなかったのは、悔しくてならない。
「主ならば、気持ちよりも状況を優先させると信じた。」
「信じたとはよく言う。疑ったんだろう、気持ちの整理も出来ないガキを葬式に参列させたらひどい事になると。」
「それで納得するなら、それで良い。ともかく、式の最中を敵に狙われた。」
「つまり、今か。」
「式が終わらずとも味方の多い今を敵に狙われたという状況。」
主はどう見る。と付け加える。
「敵の数は、壱ではない。」
「つまり。」
「取り囲まれている、とでもいうのか。」
「そう思わせるだけの一手を、今、目にしている。」




