異能力バトル22
魂使人は魂使人が面倒を見る。
当然と言えば当然だが、敵である一ノ瀬まで取り込まなくても良いではないかと本気で抗議する。
しかし、言霊の言う事を振り切る事が出来ない。変に利口だとこういう時に利用される。
バカならよかった。と後悔する間も与えられず、一ノ瀬と松本は一つの部屋にぶち込まれた。
ぶち込まれたなんていうと牢獄の様なものを想像するだろうが、事実は違う。
いかにも子作りにでも使えと言わんばかりに大きな布団が一組だけ敷いてある畳部屋だ。
一ノ瀬は誘い、松本が拒む。そんなやり取りも飽きた頃に、一ノ瀬は泣いて見せた。
「あの時は、時が止まったあの時は、抱いてくれたじゃないか。慰めてくれたじゃないか。君が舞北一葉の死を重く捉えている事は知っている。ただ、だけどそれはやはり、可笑しいじゃない。私にだって舞北一葉と同様に同情される権利がある。だって私は、死んでいるのと同じだから。」
「訳が分からない。お前は、生きているじゃないか。生きて呼吸をして、心臓をどくどく云わせている。笑うし、泣くじゃないか。それは舞北一葉にはもう無いものだ。」
「魂使人はチカラが使えない時点で半魂使だけれど、私は、それですらない。当然の様に人ですらない。じゃあ、私は何。私は私という概念存在でしかないの。それは死んでしまうよりひどい事。だって人は死ぬことによって生きていた事を認められるのだから。救いが、無いのよ。」
「だけどお前、最初に舞北言霊に会った時に何か吹っ切れたみたいに元気になったじゃないか。元気だったじゃないか、今までも。」
「舞北一葉を恨む事で活力を見出していた。というのでは納得しないのでしょう。だったら、どうやったら納得してくれるのよ。空知晃に頼られる事で元気でいられた。とでも言えばいいのかしら。」
「正解を気にしているのなら話なんかできやしないし、同情なんて尚出来ない。俺は一ノ瀬瑠奈の今に至るまでの物語を聞きたいと言っているのに、同情してやるかも知れないというのに、なんだってそんなにかたくなに距離を取る。」
「距離を取っているのは君の方。抱いてくれたらそれで良いのに、それが出来ないなんて甲斐性無しなのかしら、前みたいに襲えばいいじゃない。飢えたケモノの様にむさぼればいいじゃない。女の方からこんな事まで言わせるのは本当に最低よ。」
「水掛け論も感情論も気分じゃない。施しが欲しいなら空知にでも頼め。」
そう言うと一ノ瀬はわんと泣いて、しばらく小休止を挟ませる。本当の本当に同情を誘っている様だ。
「いいわ。話すわよ。今に至るまでの私がヒロインであり続けた物語。そう、最初に空知、あいつは言葉巧みに私に近づいて来たわ。最初は鼻につく感じがあったけれど、遠慮も屈託もなく話せたのは君以来の事だった。その時点で私は惹かれていた事に気付いて、試したわ。結果は君が知っている通り。あれはダメな奴なのよ。私とも在ろう者がそういうダメな所にさえ甘い感情を持つようになってしまって、そして、舞北一葉を屠った。」
「怨恨でなく快楽でなく愛情で人を一人殺したのか。どこに同情の余地がある。」
「有るじゃない。魂使人ですら無くなった私を受け止めたように見せて、利用したの。ここに同情して欲しい。叱責して欲しい、罵倒して欲しい、怒って欲しい。私の為になるならなんだってして欲しい。」
「俺はお前の何なんだ。」
「お姫様のナイトで、灰かぶりの王子様。」
「馬鹿げてる。」
「でも私の初めては、君が奪った。」
「奪ったというのは語弊があるだろ。それを云うなら俺の初めても。」
「そうよ。だから私たちはコイビト。」
それを云われて思い出す。一ノ瀬瑠奈は狂人だという事を。
「いいの、私は。だって私達は結ばれる運命でしょ。少しくらいの浮気は許してあげる。舞北一葉の事は怒ってないわ。だから私が空知に浮気したなんて思わないで欲しい。あれは遊びというか、なんというか、気晴らしの一環かしら。ケーキを食べたり、お買い物をしたりする事の代わりに空知の面倒を見る事で少しだけ、ほんの少しだけ、気が晴れやかになったのよ。出来た男をコイビトに持つとたまにダメな男の面倒を見る事で何かが満たされたような気がしたのよ。ほら良く言うでしょ、甘いものは別腹。んーちょっと違うかな、でもほら女の子のお買い物なんて必要なものを買うというより、かわいいものを買う感じ、うん、ちょっと似てるよね。だってコイビトはいい男なんだもの。必要のないダメな男の面倒を見るのってちょっとお買い物の感じに似てるじゃない。ただお買い物は少しの時間とお金を消費するのに対してお世話っていうのは人生の何分の一かは無駄にしてる感じがね、すごいのよ。」




