異能力バトル19
術を見せた方の勝ち。
わざわざそれを云わずとも、最初からそうだった。
ただし、劣勢だった松本も優勢だった空知も、どちらも術なんて使えない。だから、舌戦に持ち込んだ。持ち込まれたにも関わらず群衆は盛り上がってしまっていたのだから、始末に悪い。
仕切り直してもう一度舌戦を行うなど、論外だ。
群衆を利用していた事がばれてしまう。それは、松本も空知も同じだ。
それだというのに空知はむしろ余裕ぶって言う。
「どんな、術が、いいかな。」
あくまで優勢なのは自分だと、本気で思っている。
いや待て、まさかこの期に及んでも一ノ瀬の協力を期待しているのか。
一ノ瀬の能力は、脳のエラーを引き起こす類の幻覚。
対象は、密着している一人が限界。
この群衆の中の一人が騒いだ所でどうなる。
それならば、勝ち目がある。と、松本は思う。
「ど派手な爆発で良いだろ。反撃の出来ない仕組みの奴だよ。さんざ言っていた奴を、今、見せたらいいじゃないか。空知。」
対象が一人だけという条件を、これで利用できる。
つまり目視対象が大人数では、対応できないと踏んだ。
この松本の読みは、恐らく当たっている。
それ故に一ノ瀬は言う。
「そうね。爆発がお得意だというのだから、それでいいんじゃないカシラ。」
それは静かに鳴り響いた試合終了の合図だった。
協力はしない。と、一ノ瀬から投げ入れられたタオル。
これをどう見るか、空知は希望を取り逃した様な顔をした。
これを見て松本は思う。
空知は口がうまいだけの、死線も潜り抜けた事のない、ただの、そう、ただの、ガキなのだ。
常に誰かを翻弄して、誰かの威を借りて、賢く、ずる賢く生きて来た男がコイツだ。
そう思うと無念でならない。
舞北一葉を失ったのは、自分の不徳であると痛感したのだ。
そして、松本の気性も大分変る。助ける気にはならないが、殺意は治まった。
これで、人前で殺人を犯す事は無いということで、松本は救われた。
これを汲み取ってか、元、芦屋忍は言う。
「勝負ありだな。」
群衆の誰も分からない所で、軍配が松本に上がった。
松本は勝利したのだ。
この舌戦に置いても、第三者戦に置いても、松本は優秀な成績で勝利を収めた。
圧勝である。
ただし、群衆を交えてはいない事が、今ある課題だった。
勝利したのだから、圧勝したのだから、松本がこの場を収めなければいけない。
そうでなければ、治まりが悪い。
「では、撤退だ。蜜柑。」
その名で呼ぶな、と元、芦屋忍はねめつけるが、それでも協力を惜しまない。
空知のお得意な爆発が起こる。
ぽん、という。可愛げな程度の爆発でも群衆は大歓声。
松本と元、芦屋忍は、姿を消した。




