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異能力バトルもの  作者: 藤雅
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異能力バトル18


 式神は便利だが、そう何度も使える物ではない。

 だから松本は突っ込んだ。猪突の後に猛進した。

 校内放送は松本の位置を伝えるものだったし、教師もまた松本への攻撃の指示を出す。

 実際に向かって来るのはかなり少ないが、それでも松本の身体能力を持ってねじ伏せるのは至難だった。

 なので元、芦屋忍が陰陽師らしい行動の数々で敵陣を翻弄して、尚且つ敵を回避しながら階段を上がる。という事を何度か繰り返し、それこそ周囲に敵でない所なんて無いという状態に追いやられてから、本物の式神で蹴散らした。そして、極めつけは之だ。

「こちらは本物の陰陽師だ。根回しは幾分か上手い様だが空知と一ノ瀬こそ我らが敵である。」

 と、演説をした。虚実織り交ぜての演説はやがて噂となり、噂には枝葉がついて、いつしか敵は空知と一ノ瀬だけになっていく。

 そして、事実を吐いて擽る。

「空知は陰陽師を語り幾人もの女子生徒を弄び、一ノ瀬は我が身可愛さに親友を見捨て、見殺しにした。これを狼藉と言わずして何とする。」

 本当の所が如何というのは、実はどうでも良い。

 枝葉が付いたならそれに託けて、正義の所在を問えばいい。

 そうすれば、空知と一ノ瀬は他の生徒諸君からの信頼を勝手に落としていく。

 そうして、この特設リングへとやって来る。

 観衆の中央で、代表戦。

 これで少数だの多数だの気にせずにやれる。

 ただし代表は、松本武と空知晃だ。

 ここで取っ組み合いをして醜態を晒す訳にはいかない。

 どちらも奇術を使って、出来るだけ派手に、己の訴えを観衆へ届けなくてはならない。

 そして、奇術に関して言えば、空知晃は道具を用いて来ることが予想される事から一歩どころか百歩有利。

 これに松本は、半魂使で、半人前の子倅だ。使えるのは言葉のみ。

 勝負は既に決まっている様にも見えるが、しかし、空知はカラに煙たがられているので強硬派からも浮いた存在。道具、つまり呪符の折り紙なんて便利なものの持ち合わせがないのだ。

 したがってこれより行われるのは、観衆を相手取った三つ巴の舌戦。

「さあいつでも使って来いよ。舞北一葉を屠ったあの爆撃、忘れはしないぞ。」

 先手は松本。和えての挑発。空知がここで爆撃とやらを見舞えばそれで決着だというのに、松本はここで挑発して見せた。

 出来る物ならやってみろ、と。

「派手に使って見せるのは構わないが、あれはトドメ用の術でね。実のところ反撃が出来ない仕組みなんだ。だからそういう見世物の先手はソチラに譲ろう。」

 空知も尻尾を出さないまま、ぬけぬけと第二ラウンドに持ち越して見せた。

 そもそも使い捨ての道具であるホウセンカはその直後に脱走した前歴がある。が、それは周知の事実という訳ではない。

 では、松本はどうするか。

「生憎とこちらの術というのは回数に制限がある。5式のタツに12式のイノシシ7式のウマこれで3回使っている。限度までは言えないが残弾が少ない事に変わりはない。だから後出しが有利だというのは此方も同じ。おいそれと使って見せる訳にはいかない。」

 松本は事実のみでごまかして見せる。元、芦屋忍が使える限度は3回。これでは援護も何もあった物じゃないという事実を、弱みを見せて様子を窺ったのだ。

「では、此方からという訳にはいかないのにそういう事を言って煙に巻くのか。君は。」

 松本が弱みを見せた所での挑発。それが空知の出来る限界、にも拘らず、観衆は唸った。

 ここでの勝利が相手を論理的に言い負かす事ではない事を空知は知っている。そこを突いたのだ。

 空知の分かりやすい挑発で松本はいよいよ劣勢に立たされる。そこで言い放ったのがこれだ。

「反撃の事まで考えている辺りにお前の周到さを見た。しかし、そのトドメ用の術とやらを俺が一度は見ている事を否定しないお前は、舞北一葉を爆殺した事実を認めたという事だ。本当なら術なんか使わなくてもお前の罪を許す訳にはいかない。」

 高ぶったかに見える松本の正義感すらも計算である。

 これに観衆は反応せざるを得ないという計算。

 それは的中した。人殺しを許せないという感情が爆発したのだ。

 これにつけても空知は冷静だ。少なくとも松本にはそう見えた。

「人殺しではない、退治だ。舞北一葉こそ悪名高き魂使人連合の長たる舞北一族の血を引く者。これを退治して何がいけない。」

「停戦中に爆弾落とした様なものだよ。坊や。」

 空かさず合いの手が入る。舞北一葉の死を利用したのは松本も同じだが、正当性を問われる場面に松本は向いていない。これは元、芦屋忍の配慮である。

 故に、一ノ瀬も言う。

「不思議ね。魂使人だからとか陰陽師だからとかではなくて、術を使った方が勝ちだっていうのに、あなた達は何故そこまで長引かせようとしているのカシラ。」

 それは、援護や配慮ではなく、観衆の声の代弁であった。

 まさかの裏切りである。空知も一ノ瀬瑠奈という女を使いこなせてはいなかったのだ。


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