異能力バトル15
眼光鋭く、切っ先を向ける松本は次に発する。
「一ノ瀬、お前はつくづく初めてのオンナだった。」
言いながら2、3切り付ける。
躱しながら言うは空知。
「これを止めるならば相当の覚悟が必要だね。」
「覚悟? 必要なのは犠牲でしょ。私はそんなものになる気はないけれど。」
「しかし、撤退は許されない。」
「治癒の能力が譲渡されいるのならこのまま生かして返すわけにはいかない。例え半魂使だと言っても目覚めが予想される以上、無害認定は出来ない。そういう事ね?」
「そういう事だ。」
と、言うが先か、ザクリと音がする。
松本のナイフが、刺さる音だ。
しかしそれは、人では無く。
「9式・サル!」
式神と呼ばれるものであった。
基本的には1から12までの型をペーパークラフトで作り出し、操るもので、言うまでも無く陰陽師の陰陽術だ。
「まだ、いたか。」
と、松本は嘆息するが撤退の意思はない様子。
サルの尾っぽの先に使い主が、陰陽師が姿を現していたから、松本はこれを敵と見なした。
「落ち着け、少年。」
言って落ち着く訳も無いが、松本は動きを止めた。
状況が悪い事くらいは分かっているからだ。
敵は3人、内一人は舞北の頭を吹き飛ばすチカラを持った男。
更に一人は魂使人、一人は言うまでもない陰陽師。
これをいっぺんに相手にするのは骨が折れる、くらいには考えている。
持っているエモノはナイフ一本だというのに、松本は何処か楽観的に現状を読み解いていた。
「私は、味方だ。」
陰陽師は言う。
「ならば、何故止める。」
松本も答える。
「詳しい事は言霊にでも聞く事だ。」
「なるほど、舞北一葉を捨て、お前を拾ったか。」
「早いじゃないか、少年。」
「治癒の能力はそれだけ貴重にして希少。誰でもわかるロジックだが、俺は、こいつ達が憎い。」
何故止めたと、松本。
「そいつ達はどの道カラに顔向けできない筈だ。何せ停戦協定を破ったのだからな。」
聞いて一ノ瀬が空知を見やる。
「その通りだ。しかし、カラは寛大だ。」
「条件次第か。」と陰陽師。
「そう条件だ。」
「概ね貴重な治癒能力を亡くしたのならば、カラがその功績を認めてくれるとでも思ったのだろう。」
「違うとでもいうのかい? 裏切りの陰陽師さん。」
「ああ、違うね。停戦中は叙勲式なんてものは無いんだよ。坊や。」
陰陽師は空知をねめつけて言う。
「功を焦り過ぎたね。まだ若いというのに焦るのは良くない、ここは出直すが吉だろう?」
空知は笑顔を張り付けて言う。
「そうだね。」
「させると?」
松本は血走った目で空知を見やる。
「ホウセンカ。」
そういって、胸元のポケットから紙風船の折り紙を取り出したは空知である。
「本当はとどめに使うつもりだった。けれど状況が変わったからね。」
言って折り紙を投げつける。
「3式・トラ!」
陰陽師の式神が素早く折り紙を叩き落とすと、折り紙はその場で爆発した。
宛ら榴弾の威力。
舞北一葉はこれにやられたのだ。
式神もろとも、二人は消えていた。




