噂バナシ
きゃあああ。いつものが来た。
「やぁ、グッドモーニング」
今日も美しく輝いている。
里香は他の女子とは違く、自分の座席でおとなしくしていた。
チラッと視線をレインに向けると白い歯を出して里香に笑顔を見せた。
途端に顔が熱くなって目線をそらす。
「おっす」
後ろから陽気な咲人が挨拶を交わして来たが里香は呆然としたままだ。
「おーい。無視ですかぁ」
利香の顔面に向かって手を振るがびくともしない。
「変なやつ…」
休み時間~
レインは校内をお散歩中。
「お前も運が悪よなー。よりによってコイツの後ろなんてよー」
いつもつるんでいる噂好きの竜馬。
咲人の左隣席、机上にお尻を乗せていた。
「それな!見苦しくて仕方ないぜ。竜馬ぁ、席代わってくんねぇ?」
「嫌だ」
真顔で答えた。
「ですよね」
思わず溜め息を吐いた。
「あたしの顔面崩壊してる、アイプチ失敗したしまぢ最悪。千菜都みたいに可愛くなりたい」
「ドンマイだね。でもうちのスッピンやばいよ、彼氏に見られたら死ぬ」
教室の後ろでイマドキ女子生徒達が鏡を見て化粧直しをしていた。
その姿を見た竜馬は呆れた様子で言った。
「俺らのクラスってレインの存在のせいでそこそこイケてる奴でも呆気なく潰されちまうよな、だけどろくな女もいねーな。平気で化粧しやがって」
「確かに!竜馬、なんかかっけええ!」
顔面崩壊したとうつむいている女子生徒が鏡を裏返して置いた。
「二重になりたかったー、まぢ泣けてくる」
「じゃあ、整形すればいいじゃん?レイン様のパパに頼めば?」
スマホをいじりながら冷静に言った。
「したいけどさ…え?パパ?何言ってんの?」
「は、だって美容整形外科の先生でしょ、レイン様のパパ」
「まぢで!?初耳なんだけどやばい!」
「結構有名だよ?」
両目を細めて咲人に顔を近づけた。
「おい、いまの聞いたか?」
「聞こえたぜ」
「もしかして、レインの整った顔って……」
竜馬が言おうとしてることは直ぐ勘づいた。
仮にレインが整形としても、俺にとってはどうでも良かった。
そんなことよりも、レインの格好の自由さと気持ち悪い喋り方、ファンが付くほどの人気さ、存在がウザ過ぎて消えてほしい。
高級な住宅街にある外見がお洒落な一軒家。
広々としたリビングには愛犬の
スタンダードプードルが窓から外を眺めている。
―ガチャン
「ハロー!ただいまぁ!」
もうダッシュで玄関へと駆け寄る愛犬。
「ダイヤちゃぁん♡久々の再開だねぇ~、良い子にしてたぁ?」
ペロペロと紅く染まった唇をなめる。
「んん。レイ君はまだハイスクールねぇ…」
勉強に集中できるはずもない。昨日の夢の様な出来事が頭の中で映像化して離れない。思い出すだけで心拍数が上がってしまう。
「真っ赤だぞ、ほっぺ。あれか?林檎病」
「はぁ?違うし!…なによ」
真正面に立っていた咲人に気が付くと慌てた様子で頭を下げた。
「なによって、…さっきの地理のノート見せて欲しいんだけど」
「何で里香なの?ちゃんと写しなさいよ」
「だって…お前の字、見やすいんだもん。レイン《ウザい奴》が邪魔で写せなかったんだよ!!」
「……あっそ、はい。勝手に見れば」
「冷てぇな、今日の里香可笑しいぞ?どうした?」
動揺が止まらない里香。
「え、別に普通だけど…。っていうか、早くジャージに着替えたら?次の授業、男子体育でしょ」
「忘れてたぜ」