OPERATION7 八雲山ウィンタークライムレース~high and longride~●
山道、それは一般的には雄大な景色を見るためには避けては通れない魔の境地。だがそれを自転車でいとも簡単に登ってしまう輩もいる。それが俺たち自転車乗りだ。俺の名前は赤木 龍二、高校2年生でいろんな所で自転車の大会に出ている。俺が今回挑むのは「八雲山ウィンタークライムレース」という毎年1月の末に行われる大会だ。今回は自転車仲間の瀬戸 健太と共に参加し、優勝を目指して今まで特訓した。そして来たる1月27日、特訓の成果を見せる時が来た。今日の大会には兄貴やフューチャーフリートのみんなも応援に来ている。だからここで醜態を晒すわけにはいかない。そう思いながらスタートポジションで俺たちは待機する。「八雲山ウィンタークライムレース、間もなくスタートです。」というアナウンスが流れ、数秒後に参加者全員が一斉にスタートする。最初の百数メートルは平坦だが麓にあるゲートをくぐってからがこのレースの本番だ。そうしているうちに例のゲートをくぐり、山に入った。しばらくは道路の端に一般の観衆が居て、応援する声が聞こえる。俺たちは現在先頭集団ではないが20人ほどの集団の中にいる。それを掻き分けて先頭に追い付こうとするが簡単にはいかない。他の連中がそれを妨害して来るからだ。恐らく先頭は今のポジションを守るのに必死になっているだろうか、こいつらもこれ以上先頭集団の人数を増やしたくないためにこういう事をしている。これはレースだ、俺も負けてはいられない。暫くすると給水ポイントに到着した。そこで全員が2本目のボトルを受け取り、先を急ぐ。現在は標高600メートルぐらいの所にいるだろうか、スタート地点にいた時よりも寒く、翌日風邪をひいてもおかしくない。幸い長袖のサイクルジャージだがこの寒さでは防寒性が発揮されない。だけどもう残り3分の1以下、これに耐えれたらレースは終わりだ。今は先頭集団に追い付くために前に進もうとするがそれを妨害している輩と競っているところでお互いスタミナをだいぶ消費している。それから30メートルぐらい登った時に奇跡は起こった。妨害してきた輩のうちの一人が筋肉痛に見舞われたのだった。その隙に俺は追い抜いて先に進んだ。それからは先頭集団に追い付くためにペダルを回すがまだ姿は見えない。そうこうして標高700メートルの看板と同時に先頭集団の姿が見えた。その中に入り、どうやって追い抜こうか考える。俺の気配を感じ取ったのか集団の最後尾にいた選手が俺の方を向くがその瞬間「今は金持ってません、許してくださいお願いします。」と挙動不審になりながら言ってきた。多分俺が目つきが悪い所為でそいつらが怖がったからそういう対応をしたんだろうか。俺はただのお調子者だが目つきが悪い所為で親しい間柄の人以外からは怖がられている。まさかここでもそういう反応をされるとは思わなかった。「いや、俺今このレースに参加していて金なんて一銭も奪う気無いんだけど。」と俺は言い返す。そうしたらそいつらは「あっ、そうなんですか。誤解してすみません。」と納得してくれた。ペダルを回すこと30分、標高は800メートルを超えた。最後の方は傾斜がかなり緩いが距離は長い。残す距離はあと3キロ、俺は今先頭集団の中の前の方にいる。ここまで来たらみんな本気を出すのか集団がバラバラになる。現在の俺の順位は5位、健太は途中で筋肉痛になりリタイアしてしまった。残り1キロを切るとしだいに山頂の方から応援の声が聞こえる。よく聞き取れなかったが俺の名前を呼ぶ声がした。多分フューチャーフリートのうちの誰かだろう。途中で2人抜き、現在3位だが2位の奴が進路を妨げたせいで追い抜けずにゴールしてしまった。だが表彰台には登れる。俺は一番低い段に立ち、銅の記念盾を受け取った。
着替えるために選手専用の更衣室に入ろうとした瞬間、着信音が鳴った。応対すると零子さんが「大変だ、今八雲山に怪人が出現している。みんな自分の装備を身に付けろ。」と指示された。俺は赤い機体に青い単眼、そしてローマ数字の「Ⅱ」がオレンジ色に光っているフリートメイル「赤城」を装着し、辺りの探索を始めて少し経過したころ、「来ましたね、フューチャーフリートの皆さん。今回は私たち二人が相手をしますよ。あなた達は是非ここでくたばって行ってくださいね。」と男性の声がした。その方向を向くと、2人の怪人らしき生命体が居た。そのうちの1人が「私は大罪艦隊マリンギャング 色欲小隊所属のロリプレと申します。」と自己紹介をして続いてもう1人が「同じくゲインよ。」と自己紹介をした。外見は2人とも男だがゲインはおそらくオカマだ。名前もホモの同義語であるゲイが由来なんだろうと思う。そんなことは気にせず戦闘に入る。先頭に突入すると同時にロリプレが「さあ皆の衆、戦いの時間ですよ。あのカラフルな連中を駆逐してきてください。あと、そこの桃色の装甲の女の子はなるべく生かしておいてください。分かりましたね。」と戦闘兵を召喚し、そう指示した。一斉に俺たちに襲い掛かる戦闘兵たちだが向こうの命令通りに3には襲ってきていない。だがロリプレが3に近寄り、「ねえ、私に君の素顔を見せてよ。」と顎を押し上げ、目線を自分に向けて口説いたが3本人は「嫌です。私にそうしていいのは碧先輩とお姉ちゃんだけです。これ以上そういうことをしたらフォースクエアの毒ガス騒動の時みたいに内臓を抉りますからね、ロリコンさん。あっ、それとも心臓をサンドバックみたいにして最終的に風穴あけましょうか。」と可愛らしい声で残酷な言葉を言い返した。相変わらず戦いの時は鬼畜な一面を見せるのが恐ろしい。
時を同じくしてゲインの方は「待ちなさい皆の衆、そこの白い装甲の男は生かしておきなさい。」と指示した後に、戦闘を再開させた。そうして9に近づき、「あなた、気に入ったわ。あたしを幸せにしてよ、拒否権は与えないわよ。」と9に言ってきたが「うっせぇな拒否権ぐらい与えろ。そんなに男を口説きたいならホストクラブにでも行けよこのホモ野郎!でなきゃお前の周囲の地面をお前の血の色に染めるぞゴルァ!」と9はこれとばかりに暴言を吐いていた。そうして俺たちは次々と戦闘兵を薙ぎ倒していき、残りはロリプレとゲインの2人だけになった。「ほう、なかなかやりますねあなた達、一時はその態度に幻滅しましたがどうやら一癖も二癖もありそうですね。」とロリプレは俺達を褒め称えるかのように言い、ゲインは「あなたたち、あたしは強い男が好きよ。ますます気に入ったわ。とりあえずそこの白い男は生かしておく必要があるようね。そして幸せにしてもらうわ。」と気持ち悪いことを言い出した。この言葉にキレたのが2人居た。3と9だった。まずはロリプレに飛び掛かって3が馬乗りになり猫又の手甲形態で殴っている。そして鉤爪形態で心臓を抉り出して血管から引きちぎった。そして真上に投げて自分の目の前に来た時に次々と引き裂いて跡形もない状態にした。お次は9がゲインの手足と首を斬りつけ、雪原壱式の刀身を心臓に突き刺した後に体を貫通させそれを引っこ抜いて脳天に突き刺した。とても見てられないような光景が視界に広がっており、思わず目線を逸らしてしまった。
その後俺は健太と写真を撮り、そろそろ夕暮れを迎える中兄貴の車で帰路を急いだ。今日あった事はできるなら誰にも話したくない。そう思った俺だった。
作者の湊です。今回はこの作品に付いている登録必須タグの「残酷な模写あり」の意味がよく分かるエピソードだったと思います。更新予定に間に合って良かったです。次回は四葉の一人称視点です。