OPERATION1 戦士の誕生~9th warrior~
凪浦町内のゲームセンター「煌 凪浦店」にて緑色のブレザー姿の少年が対戦格闘ゲームで黙々と遊ぶという日常が広がっている。その少年というのが俺だ。俺の名は「玖条 白哉」。私立一谷高校に通う2年生だ。地元である退屈な田舎から抜け出したくて家からローカル線で10駅も離れた町にある私立一谷高校に進学したが毎日が退屈せずに済む。そしてその中間ぐらいにある凪浦町を遊びの拠点にしているというわけだ。
そして帰りに事件は起こった。なぜか俺を乗せた電車が大きな衝撃を受け、さらに怪人が戦闘兵を連れて突入してきた。突然起こった非日常に俺は呆然とするしかなかった。すると、戦闘兵一人と怪人が俺に襲い掛かってきた。戦闘兵の方に羽交い絞めにされ、怪人の方が俺に殴り掛かってくる。命の危機を感じた俺は、咄嗟に戦闘兵の足を踏みつけ、ひじ鉄砲を喰らわせた。その後、怪人に体当たりをした。だが、それは無駄な行為だった。「畜生、こいつら身体丈夫すぎだろ。」と俺は心の中で思った。怪人は「オマエ、ニンゲンノクセニナカナカダナ・・」といったいかにも典型的な特撮の怪人のようなことを言ってくる。
すると、外から「そろそろだな、よし、突入!!」という男性と思われる声が聞こえた。その掛け声と共に武装集団らしき8人組が電車内に入ってきた。しかも8人とも違う色の装備を身にまとっている。5人組でそれぞれ赤、黄緑、緑、青、茶色の装備の隊員は後方から光線銃らしきものを戦闘兵めがけて乱射し、桃色の装備の隊員は怪人を外に投げ飛ばした。小柄で愛嬌のある声の割にものすごい力でギャップに驚いた。そして水色の装備の隊員が前、紫の方が後ろの車両で避難誘導している。俺はそれに従いつつも今の出来事に「何なんだあの武装集団・・・それに何で怪人が?」という疑問を覚えていた。
翌日、朝食を食べていたらテレビであるニュースが流れていた。ふとテレビに視線を向けるとそのニュースは昨日の事だった。驚きを隠せないまま学校へ向かい普通に授業を受け、放課後になって帰ろうとしたら面識の無い男子生徒に声を掛けられた。俺の心の声が「こいつホモか?それともヤンキーがターゲットを俺にしたのか?」と呟いている。そのせいか俺は「何ですかホモですかカツアゲする気ですか」と言ってしまった。さすがに怒らせてしまったと思ったが彼は俺の襟を掴み、ある場所へ無理矢理に近い感じで連れて行った。そこはクラブ棟1階の1番奥の部室だった。そして「9人目の隊員を連れて来た」と言い、俺を部屋に入れた。そこにはノートパソコンをいじっているウェーブのかかった緑髪の女子生徒とそれを横から覗くように眺める桃色の猫耳を想起させる髪型の小柄な女子生徒、別のノートパソコンでインターネットと文書ソフトを開きながら何らかの作業をしている青髪のツーブロックが特徴の男子生徒、スマートフォンで「それでさ、ケンタ、再来月の八雲山のクライムレースに参加しねえか?」とこちらにも聞こえるような声で趣味の仲間らしき人と電話している赤髪オールバックの男子生徒、ベランダから如雨露を手にして室内に入ってきた黄緑のロングヘアーの女子生徒、足を組みながら本を読んでいる眼鏡をかけている茶髪のウルフカットの男子生徒、本を読んでいるのには変わりはないが足を組まず、紅茶を飲んでいる紫髪の女子生徒が居た。何故ここに連れてこられたのか分からない俺に、猫耳を想起させる髪型の女子生徒が可愛らしい声で「ここは『時空艦隊フューチャーフリートの拠点で、隊員としての素質がある人を戦いの傍らに探していたんですよ。先輩はその9人目の隊員に選ばれたんです。」と言った。まあ、隊員探しをしているところまでは分かったが最後の言葉には「へ?」という反応をせざるを得なかった。それはそうだ、面識がないはずなのに有名人じゃない俺の事を知っているし突然訳の分からないことを言ってきたからそういう反応になるのは当然だ。そうしたら俺をこの部屋に連れてきた人が俺に向かって「玖城 白斗、お前はこの学校での調査の結果、『時空艦隊フューチャーフリート』の9人目の隊員にふさわしい隊員に選ばれた。俺の名前は水瀬 一聖。クラスは3年E組。名前で呼んでいいぞ。あと、お前の事も名前で呼ぶ。」とここに連れてこられた理由を言い、自己紹介した。俺もここにいる8人に対して「新入りの玖条 白斗です。クラスは2年E組です。これから宜しくお願いします。」と少々かしこまった自己紹介をした。続いて他のメンバーに対して一聖先輩が「コードネームの番号順に自己紹介をしろ。」と指示する。そして、まず赤髪のオールバックと目つきの悪さが特徴の男子が「俺は2-Cの赤木 龍二。こんな見た目だが怖がることはねえよ。宜しく。」と言った。こいつがあの外見のせいで入学式の三日後に女子に話しかけただけでその女子がビビってしまったという悲劇の持ち主だったやつだということを俺は思い出した。次に、先ほどの後輩が「三田 桃香と言います。クラスは1-Aです。気軽に桃香と呼んでくださいね。」と自己紹介を終えた。続いて、ベランダから出てきた人が「2年D組の若草 四葉です。これから何卒よろしくお願いしますね。」と言って、俺は「この人、もしかして後輩である桃香にも俺と同じ態度なのか?」と聞こうとしたが敢えて聞かなかった。今は全員の自己紹介を聴くのが先だと思ったからだ。若草の次はあの上品そうだった紫髪の人だった。「3年F組の伍代 紫音よ。これから宜しくお願いするわね。」と自己紹介をし、緑髪の人が「3-Aの宍戸 碧よ。もし可愛い女の子がいたら是非私に教えてね。」と言い、俺は思った。この人は変態だということを。「となると、次は僕だな。」と、青髪の人が言い、続けざまに「僕は1-Bの漆原 蒼輔。いつもパソコンに向かっているが別に寂しくなんてない。」と言った。言っちゃ失礼だがこいつ完全にぼっちだ。俺はそう思った。最後は足を組みながら本を読んでた茶髪の人だ。「僕は茶島 駿八。クラスは1年C組。小説家目指してます。」と言い、自己紹介タイムは終わった。
しばらくすると、一聖先輩が入ってきて、「白斗、お前の装備の用意をしておいた。今すぐ屋上へ来てくれ。」と言い、俺は屋上へと向かった。言われたとおりに屋上へ着くと、そこには一聖先輩ともう一人白衣を着た女性が立っており、ガラスケースの中には白い戦隊ものの変身道具らしきものが入っていた。ガラスケースの中に入っているものを見て俺は「あのー、何でしょうかこれ?」と尋ねた。その質問に白衣の女性が「これは『フューチャーギア』。昨日ローカル線襲撃事件を起こした怪人たちと戦うために必要な道具だ。あと、言い忘れていたが、私の名前は透野 零子。フューチャーフリートのエンジニアをやっている。」とこの道具の説明と自己紹介を兼ねたお言葉を言い、操作方法の説明をする。「赤いボタンを押せば特殊装甲『フリートメイル』の展開と装着を行い、青いボタンを押せば光線銃『フリートマグナム』を、緑のボタンで装備ごとに異なる『フリートウェボン』を展開する。とりあえずまずはメイルを装着しろ。」という指令を与えた。俺は言われたとおりに赤いボタンを押し、装甲を展開し、装着した。すると、白い鎧に紫の単眼、胸部にはローマ数字のⅨが黄緑色に光っている。俺が昨日の事件で見たのもみんな胸部のローマ数字と鎧のカラーリングは異なるが同じようなものだった。すると次の指令が下った。「マグナムを展開しろ。」という指令だ。これは青いボタンを押すことで展開できた。この時は白をベースに紫の2本線が入っている光線銃が俺の目の前で出現した。どういう仕組みなんだと首をかしげる俺だが零子さんはそのまま「ウェボンを展開しろ。これが済んだら解除方法の説明に移る。」と言った。緑のボタンを押してウェボンを展開させると柄が白い日本刀が出現した。展開に関しては3つとも終わったから次は解除だ。そう思った矢先、警告音らしき音楽が鳴った。なぜ警告音だと分かったかというと零子さんのノートパソコンの画面から「EMERGENCY」と出ていたからだ。「ちょっ、これって緊急事態じゃないですか。」とパニックを起こしたかのように言う俺。一聖先輩はみんなを呼ぶためか屋上を後にした。すると、昨日の怪人が飛んできて「ミツケタゾ・・・キノウノニンゲン」とほさいできた。幸い今の俺は準備万端だ。「おいそこの怪人、昨日はよくも俺が帰路に就いてるのを邪魔してくれたな。お前は俺が成敗してやらぁ!今の俺はお前に勝てるんだからなぁ!!」と宣戦布告した。怪人側も「オマエ、ヤルキカァ!!」と戦う気満々だった。リーチの方は俺が上だ。そしてこっちには武器もあるし向こう側は素手だ。どう考えたってこっちが有利だ。次々と怪人を刀で斬りつけていき俺が勝てると思われたが、怪人が謎の波動をこちらに発射してきた。俺はこれをもろに喰らってしまい、フェンスに激突した。すると、屋上の扉が開く音がして「白斗先輩、大丈夫ですかー!!」という声がした。俺はこの声を聴いて「桃香・・・」と安心したかのように言った。増援だったからだ。紫音先輩が「大丈夫、玖城君。いや、フリート9(ナイン)。」と呼びかけた。9人揃えばこんなやつ怖いもの無しだ。そして、「ある程度ダメージを与えておいたので大丈夫です。」とみんなに言い、戦闘を再開した。そして、いよいよ止めを刺す。「喰らえ、止めの一撃ぃ、はぁぁぁぁぁ!!」と叫び、怪人の心臓を貫いた。怪人は断末魔を挙げ爆死した。
その日の夜、四葉の家である豪邸で歓迎パーティーが開かれた。四葉の両親はとてもいい人だ。見ず知らずの俺にも良くしてくれたし、帰りも車で俺ん家の最寄駅まで車で乗せてってくれた。だが、俺には心残りがあった。それは俺がこれから戦わなくてはならないという事。どうして俺にそういう素質があるのかという事だった。
翌日、昼休みに四葉が教室に来て、俺を例の部室に連れて行った。そして、俺達が戦った怪人が「大罪艦隊マリンギャング」の一員であることを知らされた。
作者の湊です。今回から本編です。ちなみに次回も白斗の一人称視点です。余談ですが前回の10時間後に掲載されるように予約を入れました。