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彼女






教室に入ると冷房が効いている。梅雨の時期だというのに、肌寒い。

「百合」

聞きなれた声に振り返る。私たちにはごきげんようなどという挨拶はない。

「おはよ、美咲」

その名の通り、美しく咲いている彼女は入学して以来仲が良く周りからは二人で一つのセットのように思われている。クラス替えのないこの学校でこのような友達がいることは非常に便利である。

「髪、やって」

「はいはい」

身長が低く可憐な見た目の彼女であるが、なかなかのずぼらである。桜桃女学園は、校則が厳しく髪は一つに結わえるか三つ編みという指定がある。ショートカットの私には関係ないが、美咲の長い髪を結わえるのは毎朝の私の仕事である。色素の薄い茶色の髪をふわりと持ち上げる。猫っ毛を結わえるのはなかなか面倒くさい。本当は登校前にしなければならないが、教師も美咲への指導を既に諦めている。そこには彼女の家からの多額の寄付が関係しているかもしれない。詰まらなさそうな顔をして美咲は窓の外を眺めている。

「今日、降るかな」

私が声をかけると美咲は答えた。

「降るね。私の髪の毛がいつもより癖があって結わえづらいでしょ」

思わず、笑ってしまう。

「そうね。はい、完了」

教室のあちらこちらから憧れるかのような視線を感じる。愛らしい美咲と綺麗と評されることの多い私の組み合わせは、クラス内だけではなく学内でも人気がある。

「ブスって生きてて楽しいのかしら…?」

クラスメートをさらりと眺めて可愛らしいピンクの唇が小さな声で毒を吐く。私は、美咲のこういうところが、大好きである。


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