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RPGモノ

ハジマリの物語

作者: 華月蒼.

 あるところに、神様がいました。

 神様はとても働き者で、いろんな世界を作りました。


 神様が作った世界では、様々な人間や動物たちが暮らしています。人間や動物たちは、死ぬと神様のいる天界に戻ってきます。神様に、次の人生を決めてもらうためです。


 やがて、天界は、神様の作った世界で死んでいった人間や動物たちで、溢れんばかりになりました。

 神様はとても頭がよく、働き者でしたが、次々と送られてくる死んだものたちを捌ききれなくなってしまいました。


 途方にくれた神様でしたが、ある日、ピンと、ひらめいたのです。


 死んで天界に来る人間のほとんどは、何かしらの「罪」を背負っていることに。

 神様はいつも、その人間達の「罪」によって、次の人生をどうしてあげれば良いのか、長い時間をかけて悩んでしまうということに。


 そして、その「罪」を持った人間たちを、神様のかわりに次の人生へと導いてくれる存在を作れば良いことに。


 神様は気づいたのでした。




 まず、神様は、天界にもっとも多く訪れる、「怠け者」たちを裁く女神を作りました。

 その女神も、「怠け者」たちの気持ちがより分かるように、と、面倒臭がりな性格になりました。


 次に、神様は、最近よく訪れるようになった、「無駄に強気」な人たちを裁く女神を作りました。

 彼らが良く言う「自分は不慮に死んだのだから、次人生では何か特別な能力を与えろ」という主張が、神様にはよく理解が出来ませんでした。なので、そういうことを言う人たちにも、平等に裁けるような、強気な性格の女神になりました。


 次に、神様は、何気に多い、「他の人を妬む」人たちを裁く女神を作りました。

 神様は、大変真面目で働き者でしたが、「人を妬む」をいう気持ちを理解することがうまくできませんでした。なので、彼らを裁く女神にはその感情を理解してほしいと願いました。その結果、その女神は常にほかの女神や神たちを羨むようになりました。


 次に、神様は、「好色すぎる人」たちを裁く女神を作りました。

 人間という「種」の存続としての行為は、神様は理解していましたが、意味の無い生産性の無い行為については、神様は全く理解が出来ませんでした。なので、この女神はそういったことに精通したものになりました。


 次に、神様は、「食べ物への執着が異常」な人たちを裁く女神を作りました。

 飢えをしのぐための食事は、神様も理解できるのですが、それについて異様なこだわりを持つ人たちの気持ちは、神様にはわかりませんでした。なので、この女神は「食」へのこだわりが強い性格の女神になりました。


 次に、神様は、「怒りの感情が強すぎる」人たちを裁く女神を作りました。

 怒りという感情へのプロセスが多岐にわたることは神様も理解してはいたのですが、こういった人たちはとにかく怒っているばかりなので、そういう人たちの気持ちに寄り添えるような性格の女神を作ったつもりでした。


 最後に、神様は、「欲しがりすぎる」人たちを裁く神を作りました。

 神様は、世界の全てを持っていて、何も持っていません。そして、それについて特に問題があると思ったことも無かったので、この人たちの感情は全く理解が出来ませんでした。なので、この神はその願いを理解できるような性格にしてあげました。




 神様は、女神たちに、人間たちを裁く人数のノルマを課しました。

 そうしないと、手を抜いてお仕事をする女神たちがいたからです。


 怠け者の女神は、毎月のノルマを、いつもギリギリになるまで先延ばしにしていました。とにかく働くのが面倒くさかったのです。


 強気な女神は、ノルマ以上の働きをこなしました。これには神様も大喜びで、女神の仕事がさらに捗るように、特別な能力を授けました。


 羨ましがりな女神は、神様が強気な女神に与えた能力をとにかく羨ましがりました。そして、自分の仕事をしながら、密かに強気な女神に嫌がらせをするようになってしまいました。


 好色な女神は、特に仕事で問題を起こすことは無かったのですが、ことあるごとに神様に熱のこもった視線を送ってくることが多いのでした。お仕事の成績は良いので、神様はこの女神にも、特別な能力を授けました。


 食に関する女神は、はじめのうちは、人間たちの気持ちを理解するためだから、と神様の作った世界のあらゆる美食をきわめていきました。神様も、仕事のためなら仕方ないと思っていたのですが、女神は美食をきわめるうちに、逆によくないものも食べるようになってしまいました。これには神様もびっくりですが、仕事のためなら、と目をつむっていました。しかし、女神はとうとう、訪れる人間たちをも食べるようになってしまい、神様はあわてて、女神の食欲を抑える「術」をかけたのでした。そうすることによって、女神に食べられてしまう人間は、最初よりは減りました。


 怒りの感情に関する女神については、神様も完全に大誤算でした。人々の「怒り」の感情に寄り添うための女神を作ったはずだったのですが、その女神の方が、人間たちよりもよほどの癇癪持ちになってしまったのです。神様はこの女神は「作り直そう」と思ったのですが、それに対してさえも、女神は癇癪を起こしてしまうので、神様もこの女神に関してはあきらめる他ありませんでした。仕事自体はこなしていたので、余計に神様は困ってしまいました。


 欲に対する神は、一見、大人しく、神様に与えられたお仕事を行なっているようなので、神様は安心していました。しかし、この神は、神様にバレないように、密かに自分の欲しいものを手に入れていきました。神は優秀だったので、神様もこの神の行いについては全く気がつきませんでした。従順で、人懐っこい性格のこの神を作って良かったとすら思ってしまうほどでした。




 神様は、それぞれの女神や神たちに翻弄されながらも、以前よりも「たのしく」お仕事が出来るようになりました。

 神様にとって「たのしい」という感情は、新しい発見でもありました。

 そして、それまで作っていた世界の他にも、もっと想像力やアイディアが豊かな世界が次々に出来上がっていきました。


 また、それぞれの女神や神たちのところに、「罪」を持った人間たちがほとんど行ってしまうので、神様が裁く人間の数は大幅に減り、善い人間ばかりが送られてくる天界では、争いごとんどはほとんど起こらなくなりました。

 神様のお仕事は、善い人間から、自分の作った世界の話しをきくことで、ますます「たのしく」お仕事を出来るようになりました。


 また、善い人間たちから、世界の中で起こっている問題などを聞くことによって、それまでは作りっ放しだった世界に対して、問題を解決させるための使いの者を出すことを始めました。


 使いの者たちは、神様との相談で了承を得た善い人間たちの背に、真っ白な翼を生やした姿をしていました。


 生きている人間でも、善い人間であれば、ごくたまに、そういった「使いの者」の姿を見かける事があったようです。

 使いの者の姿を目にした善い人間たちは、見かけた使いの者たちの事を「天使様」と呼んで、神様とともに、信仰を深めていきました。


 神様が七人の女神や神たちと触れ合ったり、善い人間たちとの談話をすることによって、世界も変わっていきました。まるで、神様の変わりようを代弁するかのようでした。




 こうして、七人の女神と神を新しく作った神様は、死んで天界に来たものたちの裁きを滞りなく行ないながら、新しい世界を作るお仕事も行えるようになりました。




 めでたしめでたし。





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[一言] 新しい世界…… 何となく不穏な雰囲気が。
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