第二話:キャンプイン
ユナイテッドは愛媛県でニ週間ほどキャンプをはる。
就任三年目の皆本監督は、若手の育成に定評があり、今年は昨年の課題だった、決定力不足解消をテーマにあげている。
そんななかキャンプ初日に新加入選手の自己紹介が始まった…。
「神戸から移籍してきました。藤山です。ユナイテッドを一部に上げるためにきました。これから一緒に頑張りましょう。」
「ユースから昇格した片桐 篤彦です。精一杯頑張ります。」
「俺は榎本 尚輝。ポジションはキーパーッス。ヨロシクお願いしゃ〜す。」
自己紹介も終わり
挨拶や抱負…その他諸々が終わったのち
いよいよ練習開始。
入念にストレッチをしたあと、全員でランニング。
ここでも藤山は手を抜かない。若手よりも前を走る。
それにつられて周りも真剣になり始めた。
「カズめ…期待通りじゃな」皆本監督は嬉しそうに呟いた。
その日の晩。夕食の席で新人の片桐が
「カズさん。椎名さん。ご一緒して…いいですか?」
と二人のベテランに話しかけた。
「おぅいいぜ。親父二人じゃあ、渋すぎるからなぁ。」
「カズさん…キツイなぁ〜」
「ハハハ…」
笑いながら片桐はカズの隣に座った。
「ところで、どうだ篤彦。プロの練習は?やっぱりキツイか?」
「ハイ。やっぱりキツイですし、ユースとは判断のスピードとか違うところが多くて大変です。でも精進します。」
「そうだな。頑張れや〜若いんだから。」
「ハイ。でもカズさんも若いですねぇ。常に先頭走ってるし、やっぱり凄いです。」
「あのなぁ、人の事凄いって言ってるうちは上手くなれねぇよ。お前はプロだろ。チームにいるだけじゃ駄目なんだよ。」
「まぁまぁ、カズさん落ちついて…まだルーキーじゃないですか。」
「哲平。ルーキーとかベテランとか関係ないんだよ。プロとしての心構えの問題なんだよ。」
「いゃ…そのとおりですけど、まだ初日ですし…なぁ片桐?」
「えっ…あ、ハ、ハイ」
「ご馳走さま」
そういうなり食堂を後にする藤山。
「あ…あの、カズさ…」
片桐が後を追いかけようとするが、椎名に止められる。
「今はやめておけ。ごっそうさん。お先に」
取り残された片桐の脳裏には、さっきの藤山の言葉が耳に残っていた。




