二十九話
翌日、彼らを代表してリーダー格の彼と共に数人が俺達の所にやってきた。
「昨日は美味いものをありがとう。改めて挨拶させていただく。
わしは土穴族のダントという。一族の長をしている。」
「では、改めまして。俺は東の地でダンジョンマスターをしているハジメという。
俺達は此処より東、船という乗り物を使って海を越えてやって来た。」
「東の地を捨てたのか?」
「いや、ダンジョン周囲の土地を治め周囲一帯を支配している。今回はダンジョン
より西に何があるのかを調査・探検にきた。調査の目的は新しい作物や動物
そして交流できる種族を探しての行動です。」
「なるほど・・・うちらを支配するつもりなのだろうか?」
「云え、基本的には友好的交流を目指してます。」
「交流か・・・ところで昨日の酒ってやつは、初めて飲んだが美味いものだな。」
「それは良かった。あれは俺達の村で作ってます。今は手持ちが少ないですが
少し何かと交換しましょうか?」
「交換してくれるか!よかった・・・して、何か欲しいものあるか?」
「うーん食料はあるし・・・水もある・・・・」
「では!俺たちが使っている普通の石より硬い石はどうだ?武器にも使えるぞ」
「石ですか・・・見せてもらっても?」
「わかった。少し待っててくれ 取ってくる。」
一旦彼らが帰り、硬い石を幾つも持って帰ってきたので見せてもらうと、
コボルト達が反応し金属の鉱石だと教えてくれた。
「わしらは地面の中で生活をするんだが稀にこの硬い石が出てくる。この石は普通
の石より重いけど硬くて丈夫な棍棒とかの材料になる。」
「・・・ダントさん土穴族はこの周囲に沢山居るんですか?」
「いや・・・わからん。 わしらの祖先はもっと山の上のほうで暮らして居たらし
い。この辺では見かけないと思う。」
「ダントさんこの石は中々良いものです。しかし、俺達の村は遠く交流するにも
たくさんの酒は持ってこれません。」
「そうか・・・ではこれで交換できるだけして貰えるか?」
「・・・ものは相談ですが私たちの村に皆さんで来ませんか?」
「何?・・・ここを捨てろと?」
「この場所は村から遠く、持ち運ぶ物は重い。交流するにも今の俺たちでは無理
なんです。で、もしこの地に拘りが無いなら皆で一族でうちの村に移住しません
か?そして近くの山でこのような硬い石を堀り、それと食料や酒を交換しません
か?」
「・・・・」
「今回交換して、一度村に戻り、酒を積んで此処までくるのに2年はかかるでしょ
う。しかし、今回一緒に船に乗って向かえば一年以内で今と同じ・・・
イヤ、食料が安定して手に入る今以上の生活を送れるようになります。」
「・・・・少し一族の皆と考えさせてくれ。」
「わかりました。今回は俺たちが出せるだけの酒を渡します。
硬い石を出す量はガントさんに任せます。・・・帰ったら皆と話して合ってくだ
さい。良い返事を期待してます。」
彼らは酒と塩を受け取ると持ってきた全ての硬い石を置いていった。
俺達は石を船に運び込み、土穴族の穴から離れた所で狩りや探索をして彼らの
返事を待った。
そして、4日後ダントさん達は俺たちのもとにやってきた。
「ハジメ殿、この前は酒をありがとう。・・・一族で話し合ってみた。
わしらは、狩りで獲物を取り、穴の中で安全に暮らせればそれで良いっと思って
いた。しかし、しかしだな!わしらは知ってしまったんだ。
あの酒を、食い物の味を知ってしまった・・・・もう昔には戻れん。」
俺はダントさんの話を黙って聞く。
「皆も同じだ。塩はまだあるがもう酒は無い・・・今まで普通だと思っていた生活
が今では色あせた味気ないものに感じているんだ。
ハジメ殿、是非わしらを船に乗せてくれ。わしらはあんたと一緒に行く。」
「わかりました。準備を手伝います。荷物を船に運びましょう。
なに!まだ船に酒は残ってます!真っ直ぐ村に向かえば早く着けるでしょう。」
「ありがとう。」
その後、土穴族の集落に皆で訪れ、持って行くものを選別し、
硬い石の多くは重く船足が遅くなるのを懸念して滅多に出てこない物だけ
持って行くようにした。
選別し終わると予想以上に荷物は少なかった。
「思ったより荷物が少ないんですね?」
「ああ、わしらは必要としてる物意外持たないからな。」
「ここはどうします?そのままにして行きますか?」
「いや、獣が住み着いたり荒らしたりしないように入り口はわしらで埋めるよ。」
荷物の輸送は船員達に頼み土穴族の皆を見守る。
土穴族の皆は穴の中に一度入り、一人ずつ改めて出てきた。
その目は髪の毛や濃い眉毛に隠れて見えないが、光の加減で光って見えた。
子供達が隣に居る大人にしがみ付いているのも見える。
全員が出てきたのを確認すると石や土で入り口を埋めていく。
そして埋め終わると暫くの後 振り向き声を掛けてきた。
「さあ!ハジメ殿、行きましょう。新たな生活の地へ!」
俺たちは皆と共に船への道を歩き始めた。




