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三国志~武幽電~  作者: 伏(龍)


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神医

「レン!戦いは終わってない!


 周泰の為にもあなたは生きて前へ進まなきゃいけないのよ」


「…わかっています」


 思ったよりも力強く答えた孫仁は落とした剣を拾うとゆっくりと立ち上がる。


 既に周泰だったものはなくその目線の先には怒りを通り越したのか凍てつくような視線を孫仁へと向けてくる華佗がいる。

 

「茜、周泰のことありがとうございました」


「やっぱり気づいてたか…


 でも勘違いしないで、『孫呉の威光』で止められるのは本当にわずかな一瞬だけ。


 さっきの攻撃が止まったのは周泰自身の力よ。


 だから…余計なことしてごめんなさい」


 消え入りそうな声で謝罪する茜に孫仁は小さく首を振る。

 

「謝る必要はありません。


 幼平を信じると決めたのは私のわがままです。

 

 例えあのまま斬られていても後悔はしないつもりでしたが…」


 束の間目を閉じて何事かを考えた孫仁は深く息を吸うと小さな吐息を漏らす。


「こうして落ち着いて考えてみればやはりあの方に会うまでは生きていたい…


 私は本当にわがままな女ですね。

 

 こんな私のわがままをあなたは知っていたのでしょう?」


「レン…」


 茜にしてみれば、このゲームを止めるという玄と共に抱く目的があった。


 茜自身が孫仁を劉備に会わせたいと強く思っていたこともある。


 だが、どんなもっともらしい理由よりも強く茜を突き動かしたのは『レンを死なせたくない!』という思いだった。


 だから、孫仁の言うように彼女を慮ったという訳ではなく、茜にしてみれば100%自分の都合だったと言える。


 茜のそんなためらいを雰囲気から察したのか僅かに孫仁は微笑む。

 

「いいのです。


 ただ、言わせてください。ありがとう茜」


「…うん、分かった。


 でもお礼なんかいらない、私達は相棒じゃない。

 

 助けても助けられても貸し借りなし!


 相棒ってそういうものよ」


「ふふ、そうですね」


 嬉しそうに頷く孫仁に茜は続ける。


「レン、ここからも厳しい戦いよ。


 まず現状を確認するね。


 当面の私達の敵は華佗とゾンビ2体。


 ただし華佗自身の戦闘能力は高くないし、ゾンビ達も過剰なまでの再生能力さえなんとかすれば難しい相手じゃない」


「ですが、あの2体も幼平のようになるのではないですか?」


「もちろん可能性はあるわ。


 というよりやろうと思えばやれるはずよ。

 

 でも華佗は『還魂の法』はかなり疲れるって言ってた。

 

 つまり術を使用するときのコストが高いんだわ。


 …強力な武将をそのまま自分の味方として呼び出せるんだから当然よね。


 多分だけど1回の使用で3分の1程度の体力は削られてると思う」


「3分の1ですか…やや疲労感を感じ始める頃ですね」


 戦いの中で自らもライフを減らしたことのある孫仁は体感として呟く。


「後は、根拠としては弱いけどゾンビが3体しかいないのも同時に『還魂の法』が使える限界が3体だからとも考えられるわ」


「…なるほど」


 華佗とその前に立ちふさがる2体の屍兵を見て孫仁が頷く。


「華佗はこの戦闘中にまだ術以外でのダメージがないから残り2体に同時に術を使う余力を残してるはず…」


「…そうなると少し厳しいですね」


 そう呟く孫仁の目は闘志に満ちている。


 しかし、周泰1人であれだけ苦労したのである。


 もし、同レベルの武将と2対1になれば孫仁にとって少し厳しいどころかほぼ100%勝ち目はない。


 もちろんそれは孫仁も分かっている。


 だが『諦めない』という気持ちが『勝てない』という言葉を選択させないのだろう。


「それなんだけど…もしかしたら周泰のおかげで心配しなくてよくなったかもしれない」


 もしかしたらと言いつつも確信的な物言いをする茜の言葉に孫仁は軽い驚きを示す。


「え?…それはどういう」


「ちょっと待って!華佗が動く!」


 もちろん孫仁も華佗から目を離してはいない。


 茜の警告よりも早く警戒態勢を取っている。


「ふん、やはり他人はあてにならん!


 お前のような小娘ごとき儂1人で十分じゃ」


 憎々しげに言い放った華佗が自らの身体に次々と触れていく。


「茜!」


「うん、多分周泰の時と同じ。


 今度は自分の身体を強化しようとしてるんだわ」


 茜達がそんな話をしている間に華佗の身体には早くも変化が現れ始めている。


 小柄な老爺だった華佗の身体が内から盛り上がってくる筋肉によって膨張し始めたのである。


「ひょひょひょ、儂をじじいと思って侮るなよ。


 あの馬鹿にはもとより裏切りを警戒して5本ほどしか針を使わんかったが、今度はそれとは比較にならんぞ」


 自らの肉体が強化されていく様が楽しくて仕方がないのか華佗のテンションは異常な程高い。


「聞いた?レン」


「はい、幼平を嘲るなど許せません!」


「レン、どんなに怒っても泣いても感情に流されちゃ駄目、常に頭は冷静に…よ」


 厳しい眼差しを華佗へと向けながら孫仁が口にした怒りの言葉を茜は一蹴する。


「…はい」


 茜の言葉で感情的になっていた自分に気づいた孫仁が僅かに肩を落とす。


「ごめんね、厳しいこと言って」


「いえ、茜の言うとおりです。


 茜、あなたの気づいたことを教えてくれるかしら?」

 

「うん、レンは華佗の最期を知ってるわよね?」


「はい、確か曹操に招聘され治療を行おうとしたにもかかわらず投獄され処刑された…と」


 孫仁の言葉に茜は頷く。

 

「うん、華佗の医療技術はあの当時では先進的過ぎたのね。


 華佗の治療法を信じられなかった曹操が治療を理由に自らを暗殺しようとしていると思いこんだ。


 華佗にしてみれば患者を治すための最善の方法を示しただけなのに…」


 曹操には原因不明の頭痛という持病があった。


 その痛みは時に耐え難い程に強く、どのような薬を服用しても収まらなかったらしい。


 ただ、唯一華佗の針を使った治療だけが曹操の痛みを僅かながら和らげることが出来たのである。


 曹操はそのため華佗を重宝していたが、もしや華佗なら出来るのではないかと根治の方法を尋ねたことが華佗の悲劇へと繋がっていく。


 曹操の問いかけに対し華佗は曹操の頭痛の原因が脳に腫瘍があるためだと考えていたため『頭蓋を切り開き、病巣を取り除けば治りましょう』と答えたのである。


「ま、確かに三国時代に開頭手術するなんて言われても、素直にやってくれとは言えないわよね」


「ましてや当時の曹操は魏の丞相、事実上漢の国を乗っ取っていた曹操の命を狙う者も多かったはず…」


 華佗を注視しながら孫仁が痛ましげに呟く。


 

「そうね…確かに疑われても仕方なかったのかもしれない。

 

 でも華佗は曹操の裏切りを恨んだんじゃないかしら?」


 茜のその言葉を聞いた孫仁が「あ」と小さな声を漏らす。


「人間不信…ですか?」


 茜は小さく頷く。

 

 しかし、すぐさま自分の姿が孫仁に見えていないことを思い出し口を開く。


「多分…ね。


 この世界での華佗の言動を見たり聞いたりした限りでは可能性は高いと思う」


「先ほどの老師の言葉の中に茜が見つけのはそれでしたか…」


「うん、自らの術で完全に支配しているにもかかわらず裏切りを警戒してる。


 それに自分以外の人間を必要以上に見下しているのも他人を信じていないからなのかなって」


「だとすれば確かに自らの体力を更に削ってまで術を使う可能性は低いかもしれませんね」


「ふん!何をこそこそ話しているのかは知らんが、儂の施術が終わるのを邪魔しなかったのは失敗だったのではないか?」


 ふしゅ~と蒸気のような息を吐き出しながら華佗は孫仁を小馬鹿にした笑みを浮かべる。

 

「げ、確かにやばいかも…」


 呟いた茜の視線の先で華佗は先ほどの華佗とは一変してた。


 全身の筋肉が膨れあがっただけではなく明らかに身長も高くなり手足も伸びている。


 風に揺れる髪や長い髭は白いままだが、明らかにその体格は全盛期の豪傑武将のもの。


 体格だけを比べれば決して関羽にもひけはとらないだろう。


「茜、『水花燕舞』を使おうと思うのですが構いませんか?」


「え?


 う、うん。体力的には問題ないけど…」


 孫仁の急な言葉に反射的に返事をする茜。


 華佗の見た目にうろたえていた茜と違い、孫仁の言葉には華佗に対する怖れはなく、静かな自信に満ちている。


「わかりました。


 今回はこちらで機を見て使用します」


「レン、大丈夫なの?」


 妙に落ち着いている孫仁の様子にかえって不安になった茜が心配そうに声をかける。


 しかし、孫仁はそんな茜の言葉に小さな笑みを作る。


「ふふ、茜。

 

 武というものは実に奥の深いものなのです。


 と言っても私も関将軍のおかげでようやくその入口を覗き込めたというところですが…」


 そう言うと孫仁は二本の剣を構えて無造作に華佗へと近づいていく。


「ちょ、ちょっとレン!」


 慌てる茜を尻目に無造作に間合いを詰めた孫仁は屍人2人を挟んで華佗と正対する。


「老師、このような悲しい戦いはもうやめませんか」


「ふん!何を言っておる。


 ここを通りたいのはお主じゃろうて。


 儂はここを通ろうとしなければ無理に戦闘をしようとは思わぬぞ」


 真摯な言葉を投げかける孫仁い対し、くくくと喉を鳴らす華佗。


 確かにこの場だけを切り取って見れば華佗の言うとおりである。


 だが、孫仁が言いたいのはそう言うことではない。


「私達はあなた方を倒そうとは思っていません。


 ここを通りたいだけなのです。


 老師にはここをどうしても守らなければならない理由はないはずです」


「いやいや、理由ならばあるとも。


 儂はあそこの御仁には逆らえぬ立場なのでな」


 にやにやと髭をしごきながら親指で関羽と立ち合っている張飛を指さす。


「張飛将軍は私達がなんとかいたします。


 張飛将軍自身が老師を解放すると決めればあなたは自由の身になれるのでしょう?


 だから老師!


 そのためにも張飛将軍の右腕を取り外して貰えませんか?」


 孫仁はホウ統から頼まれていた華佗を説得するという大役を忘れてはいなかったらしい。


 華佗の針と必殺技である『還魂の法』をどんな形であれ一度退けた今こそ説得の機会だと考えたのだろう。


「ほ!ほうほう、こいつは驚いた。


 あの腕がどんなものかを気がついた者がおるのか」


 余裕を見せる華佗へ孫仁はなおも言葉を続ける。


「老師!


 あなたも自由になりたいのではないのですか?」


「かかか、儂の心を予測するのは勝手だが…的外れもいいところじゃ」


 今の状態を是だと言う華佗に孫仁は首をかしげる。


 今の孫仁達は自らの意志に反して2重3重に自由を制限されている。


 最も最たるものとしては武幽電というシステムよって。


 最も身近なものとしてはプレイヤー達のコントローラーによって自由を束縛されている。


 それなのに華佗は更に他の武将から自由を拘束されているこの状況を脱したいと思っていないという。


「…何故」


「何故じゃと?


 ふん、ここにいればあいつが寄ってきた武将共を全部倒してくれるでな」


「身を守る為にあえて張飛将軍の庇護下にいる、と?」


「ふん…まあ、半分はそうじゃな」


 華佗は勝利を確信しているのか、孫仁の問いかけに気前よく答えてくれている。


「私達は何としても張飛将軍を説得し、共にこの先へと進むつもりです。


 身を守るためならば私達と共に行きませんか?」


「レン、あなたって人は…」


 孫仁の説得の言葉を聞きながら茜が思わず呟く。


 華佗の理不尽な術により周泰を失ったのは本当についさっきのことだ。


 周泰を嘲笑され怒りをあらわにしていたのは決して演技などではない。


「それなのに…」


 関羽のため、目的のために自らの内心の葛藤を押し殺して華佗を説得している。


(多分、レンはまだ自分の記憶の中いる名医華佗を信じたいんだわ) 


「くっくっく…おまえさんらと共に行くじゃと?


 まっぴらごめんじゃ!


 言うたはずじゃ、身の安全は理由の『半分』じゃとな」


「老師…


 では残りの半分とはいかな理由なのでしょう」


 根気強く説得を続ける孫仁を楽しげに眺めながら華佗は再び髭を撫でる。


「ふん…そうじゃな。


 張飛の腕、外してやってもよいぞ」


「老師!まことでございますか」


 華佗の言葉に孫仁が喜色を浮かべる。


「ただし、儂の頼みを1つ聞いてくれればじゃが?」


 表情だけはにこやかだがその言葉にざらりとしたものを感じた茜はぞわりと鳥肌が立つ。


「頼み、ですか?


 私に出来ることならば出来る限りのことはしたいと思いますが…」


「なぁにたいしたことではない。


 医者としてこの世界における儂らの身体の構造に興味があってのぅ。


 同行中はちょいちょい中身を見せてもらいたいだけじゃよ。


 あそこの怪力馬鹿は向かってくるものはみな壊してしまうでな」


「な!」


 華佗の申し出の意味が今ひとつ分からず首をかしげている孫仁とは対照的に茜は驚愕の声を思わず漏らす。


 しかし、その驚愕も一瞬後には腹の底から湧き上がる怒りに塗り替えられていく。

 

「…ざっけんじゃないわよ!


 それってレンを解剖させろってことじゃない!」


「…茜、老師が言っているのは比喩でもなんでもなく私の身体を切り開いて中が見たい。


 そういうことですか?」


 茜の叫びから事態をおぼろげに把握した孫仁がゆっくりとした口調で確認をする。


「そうよ。


 もちろんそんな条件受け入れられないけどね!」


「……茜、本当に駄目でしょうか?」


「え!…何言ってるのレン、駄目に決まってるじゃない」


「ですが、私達は普通の生命ではありません。


 死にさえしなければどんなに傷ついても傷はすぐ癒えます」


「レン…」


 確かに孫仁の言うとおり、例え目玉をくりぬかれようが、はらわたを引きずり出されようがライフゲージさえしっかりチェックして危険域に入る前に待機状態に戻せば死ぬことはない。

 

 そして、待機状態に戻れば時間と共にどんな傷だろうとふさがり綺麗に元通りになるはずだ。


 しかし、いくら元通りになるとは言っても痛みは現実のものと変わらない。


 麻酔無しで身体を切り刻まれるなど想像すらしたくはないのが普通の考え方だろう。


 それなのに真顔でそんなことを言う孫仁に茜は『何を言ってるんだ』と叫びそうになった。


 しかし、華佗の申し出を本当に真剣に検討している孫仁の姿を見ているうちに怒りは呆れへと変わっていった。


「はぁ…さすがは鳳雛と呼ばれた名軍師よね。


 こういう事態すらも想定してたのかしら」


「茜?」


 溜息混じりの茜の言葉に疑問符を浮かべる孫仁に茜は静かに語りかける。


「レン、結論から言うわよ。


 そんな申し出絶対に私が受けさせないから」


「ですが…」


「レン、覚えてる?ホウ統が言った言葉」


「え?」


「説得を頼んだ最期にこう言ったの『説得にこだわる必要はありません』って。


 多分、ホウ統は華佗から無理難題を押しつけられる可能性まで考えてたのよ。


 そして責任感の強いレンならそれを受けてしまいかねないことまでね」


「…ホウ統軍師」


 茜の言葉に孫仁は一瞬だけホウ統を見る。


 そこにはこの世界で出会った頃の気弱な軍師の姿はない。


 そこにいるのはこの数日の間に自らの弱さと向き合い、それをみるみる乗り越え成長していったもはや雛とは言えない鳳凰の若鳥だった。


「そ、それでもあの方の大事な弟を無事に救える可能性があるのなら!」


 その姿に感銘を受けつつもなおも食い下がろうとする孫仁。  


「レン…私は会ったことないけどあなたならわかるでしょ。


 劉備玄徳という漢は、仮にあなたの意志とはいえ、自分の為に妻が他人に肌を晒し、その上意味もなく切り刻まれることを喜ぶような人なの?」


 茜の問いかけに孫仁ははっと目を見開き動きを止める。


 やがてゆっくりと目を閉じるとふっと小さな吐息を漏らす。


「…あの人は、自分のために誰かが傷つくことを何より怖れる人でした」


「うん、そうだと思った。


 きっと華佗を説得するだけが解決方法じゃないはずよ。


 玄とホウ統がきっとなんとかしてくれる!


 2人を信じましょう」


「はい。


 …ですが、私も出来るだけのことはしなくてはなりません」


 そう言うと孫仁はキッと華佗を見据えた。


「華佗老師!


 あなたの条件はお受けできません」


「かっ!


 所詮は口だけじゃのぅ、じゃが儂はどちらでもかまわん」


「老師、賭をしましょう」


「ほう?」


「この勝負、老師が勝てばわたくしの身体を好きにしてくださってかまいません。


 ですが、わたくしが勝った場合は…」


「腕を外せ…か?」


 にやにやと笑いながら華佗が髭をしごく。


 孫仁は真っ直ぐな眼で華佗を見返し小さく頷きを返す。


「…よかろう。


 儂にしてみれば勝って言うことを聞かせる方が後々面倒がなさそうじゃ」


「それではくれぐれも約束を違わぬようお願いいたします」


「ひょひょひょ、今の儂に勝てると思っておるのか?


 しょせんはおなご、夢ばかり見よる」


 華佗の嘲笑を孫仁は微笑みで受け流すと二本の剣を天へとかざす。


「最初から全力で行かせて貰いますよ華佗老師。

 

 『水花燕舞』」


(いきなり使って行ったわねレン…頑張って)


 茜はこくりと喉を鳴らして戦いを見守る。


 孫仁が急に賭を持ち出した時には思わず止めようかと声を上げかけたが、戦いに関して孫仁が意味深なことを言っていたのを思い出し孫仁を信じて見守ることにしたのだ。


 そんな茜の目の前で孫仁が華麗に舞う。


 そしてその舞に合わせて一つ目の水花の蕾が現れる。


「その程度の動きで全力とは片腹痛いのう、どぅれさっと片付けてそのその腹を覗かせてもらおうかの」


 華佗は膨張した身体には小さく見える初期装備の剣を手にすると2体の屍兵を弾き飛ばしながら一気に間合いを詰め大上段から振り下ろした。


 しかし孫仁はその速さも威力も申し分ない攻撃を華麗に舞いながら右手の剣で触れるようにして受け流す。


 その結果茜の目の前に振り下ろされた剣が地面を陥没させる。


「きゃ!」

 

 思わず声を上げた茜の目の前を華佗の剣が再び孫仁を追っていく。


 だがその攻撃も剣を持って舞う孫仁を捉えることは出来ない。


 対孫策戦では剣が無かったため舞うこと自体が困難でなんとか舞うというよりも必死に孫策の攻撃をかわしているという感じでしか無かった。


 だが、今回の舞は殺伐としたものではなく見ている者を思わずうっとりとさせるような華麗な舞だった。


 その動きを捉えようと必死に攻撃を繰り返す華佗すらその舞の一部かと錯覚する程である。


「くそ!何故じゃ、何故当たらん」


 休まず孫仁を攻め立てながら華佗が不服の声を漏らす。


「老師、あなたは医者なのです。


 神医と呼ばれ、病や怪我に苦しむ人々を救う人なのです」


「ふん!それがどうした!」


「針により屈強な肉体を手に入れたとしてもそれはあくまで肉体だけの話。


 力や速さはあっても武術の動きではありません」


(あ、そっか。


 さっきレンが言いたかったことってそういうことだったのね)

 

 孫仁の言葉に茜は小さく呟く。


 例えば何の知識もなくただ相手を強く殴ろうとすれば力を入れようとするあまり拳を振りかぶって殴ろうとしてしまうだろう。


 だが、ボクシングなどの世界ではそんな殴り方はしない。


 構えた拳を相手に悟られないよう最短距離で打ち込む、しかも極力予備動作をしないように。


 素人同士の喧嘩ならばそんな違いは大きなハンデには成り得ないかもしれない。


 しかし、関羽や孫仁達が戦っている場所は戦場である。


 そこではその差は致命的である。


 例えば同じように強化された周泰の一撃は地を斬り裂いたが、更に強化されているはずの華佗の一撃は地面を僅かに陥没させるにとどまっている。そういうことだ。


「あなたを裏切るような形で処刑した曹操を許せない気持ちを忘れろとは私には言えません」


「…」


「ですが名医と呼ばれ敬われた老師が誰かを傷つけるところをわたくしは見たくないのです。


 老師にはどうか最後まで医者であって欲しいのです」


 華佗の攻撃を捌きながら華麗に舞い続け、言葉を紡ぐ孫仁の周囲には水花が2つ3つと増えている。


「ふ、どいつもこいつも…」


 孫仁の言葉に攻撃が当たらないことの苛立ちを浮かべていた華佗の表情が一変した。


 攻撃を続けながらもその表情は怒りのためか醜く歪んでいる。


「老師?」


「儂を名医だ神医だと褒めそやしているだけのお前達に儂の何が分かる!


 曹操を恨んでいる?


 ひゃひゃ!確かに儂は曹操を恨んでおる!


 だが、それは儂を処刑したことに対してではない!


 この儂に頭蓋を開かせなかったことにたいしてじゃ」


「それって!


 …殺されたことよりも手術させてくれなかったことの方を恨んでるってこと?」


 驚愕に満ちた茜の呟きを掻き消すように華佗は更に言い放つ。


「儂が何故名医と呼ばれるようになったのかわかるか?


 何故儂が人の様々な病を言い当て、あらゆる怪我に適切な処置を施すことが出来たのかわかるか?


 何故儂が麻沸などの劇的な効能のある薬を調合し得たかお前達は知っているのかと聞いておる!」


「老師…一体何を言って…」


 めちゃくちゃに剣を振り回しながら妙な質問を投げかける華佗に孫仁は困惑することしかできない。


「簡単なことじゃよ…


 儂は治した患者の何倍も何十倍も人を斬り、開き、ばらし、縫い、繋ぎ、焼き、茹で、壊して来たからじゃ!


 麻沸の様な薬が1つ実用に至るまでに実験台となって死んだ人間が何人いると思っておる!」


「で、ですが医者である以上救えなかった命があるのは仕方ないではないですか!」


「そこが違うと言っておる。


 まずお前らの前提が違うのじゃよ」


 華佗はそう言うと当たらぬ攻撃を止め、立ち止まるともったいつけるように白い髭をなでつける。


「…儂は医者ではない」


『え!』


 白い口ひげを揺らしながら告げられた言葉は現実の華佗を知る孫仁も後世のその逸話を聞いていた茜も共に驚愕の声を漏らすような言葉だった。


「儂は生物、とりわけ人体に興味があっただけじゃ」


―――――――――――――――――



 よく幼い子供は全く悪意無く小さな虫の脚をもいだり潰したりするという話を聞いたことがあるだろう。

 

 華佗も物心ついたときより同様の遊びをしていた。


 ただ、普通の子供と違っていたのは意味もなく殺して放置するのではなく出来る限り細かく分解して部位事に並べ、各部位を詳細に眺めていたのである。


 華佗は他の子供達のように潰したいから潰すのではなくその内部の造りや構造が知りたかった。


 一つ一つの意味不明な部品が組み合わさることでこうも複雑な動きを行えることが不思議だった、どうしてそうなるのかを知りたかったのである。


 誰かが狩りに行くと言えば率先して荷物持ちをかって出て同行したし、近くで家畜の解体などをやると聞けば真っ先に駆けていって一番近くで見学をして自らやりたがった。


 家は比較的裕福だったため学問を習うことも出来たがその学問で得た知識も結局は生物のしくみ等を調べる為に使われ、学ぶ知識も次第に医学や疫学等へ偏っていくことになる。


 この頃になると既に虫や小動物、家畜への興味は無くなり人体への渇望だけがふくらみ続けていた。


 表向きはそんな素振りは見せなかった華佗だが近くで盗賊に襲われた村の話や戦の報せを聞くとすぐに駆けつけ死体を解剖したり、怪我人を治療すると見せかけて生きた人間を調べたりしていた。


 華佗にしてみれば完全に趣味の行為だったため当然謝礼を貰うようなこともなかった。


 しかし戦の後で治安の乱れた場所に誰よりも早く駆けつけ怪我人を無償で見てくれている華佗を見た周囲の人々はそうは取らなかった。


 その姿を見た周囲の人々が華佗のことを『なんてすばらしい医者だ』と思ったのは当然の帰結だろう。


 だが、この勘違いは華佗には渡りに船だったのである。


 医者という評判が広まったことでわざわざ危険な戦場跡に出かけずとも向こうから生きた献体が来てくれるようになったのである。


 華佗はますます人体にのめり込み、医者という体裁を守るため助けられそうな者は助け、助からなそうな者は助ける振りをして実験台にした。


 痛みで暴れる患者が多く、ゆっくりと落ち着いて解剖が出来なかったため患者を動けなくするために経絡と針術を学び針によって様々な効果を産み出す技術を身につけた。


 しかし、動きを抑えてもあまりの痛みに死んでしまう患者も多かった。


 人体の全てを知りたいという華佗の欲求を満たすためには、死体の解剖よりも生きた人体を少しでも多く解剖する必要があった。


 そこで華佗は仕方なく患者の痛みを抑える薬の研究を始めることになる。


 様々な薬を調合し、その効果実験のため自らを訪れる患者に少しずつ投与したりしていたが、それでは時間がかかりすぎた。


 そこで華佗は自ら危険を冒して疫病が蔓延する村へと赴き村全体を実験台にした。


 その結果、麻沸散は完成したがその過程でいくつもの村が潰れた。


 しかし、世間的に見れば疫病を怖れ人がよりつかない場所へも治療に向かう(ように見えた)華佗は紛れもなく『神のような医者』だった。


 このようにして『神医華佗』は本人の思惑とは関係ないところで周囲によって造られていったのである。


 

―――――――――――――――――――――――



「医者という肩書きは効率よく実験体を得るために必要だったに過ぎん」


「なるほど…


 患者のいないこの世界では医者であることを演じる必要がない。そういうことですね」


 舞いながら呟く孫仁の胸中は複雑だった。


 今の華佗の話が事実だとすれば、確かに生前の華佗と今の華佗があまりにも違うことにも納得がいく。


 しかし、街で華佗を慕う人々に囲まれて笑っていたあの姿が偽りだったとは思いたくは無かったのである。


 生前の華佗を知っているが故に全てを鵜呑みにしたくない孫仁に対して現代を生きる茜はすんなりとその事実を受け入れていた。


(華佗の医術の全てが正しく後世に受け継がれていればきっと今の医学はもっともっと進んだものになってたかもしれない。


 たとえそれが華佗の趣味の延長線に多大な犠牲を積み上げたものだったとしても『神医』としての評価は変わらなかったでしょうね)


 もちろん茜も華佗の話に大きな衝撃は受けていたが当時にしては進みすぎていた華佗の医術の理由としては妙に納得出来る話だった。


 そこから茜がまず思ってしまったのは,そこまでの多大な犠牲を払って得た知識や技術を後世に残せなかったことが惜しいという気持ちだった。


「いずれにしても、勝つしかないわよレン。


 こっちに都合のいいことに、華佗が長話をしてくれたおかげで水花の蕾も大分増えてるしね」


「…えぇ、そうですね」


 孫仁の返事に切れがないことに気がついた茜が続けて口を開く。


「レン、あなたに思うところがあるのは分かるけど余計なこと考えてる余裕がある相手じゃないはずよ」


「はい…分かってます」


「分かってないわ!


 確かに華佗は武人ではないかもしれないけどあなたも医者じゃないのよ」


「え?」


 思わず声を漏らした孫仁には茜が何を心配しているのかが分からない。


「ひゃひゃひゃ…儂が何故こんな無駄話をしたと思う」


 しかし、茜に問い返そうと口を開きかける前に華佗が構えを取りつつ口を開いた。


「お前の技は大方予測がつく。


 おそらく舞っている時間に応じて効果が増す技なのじゃろうて」


 孫仁の技は性質上対戦相手からその内容を看破されやすいという欠点がある。


 だがその代わり看破されていたとしても発動してしまえば絶大な威力を発揮するタイプの技だ。


 見破られることは想定内だが、そうと分かったのに舞を潰しにこないのは不可解だった。


「それが分かっていて何故?」


「儂も時間を稼ぐ必要があったからじゃよ」


 構えた華佗の姿勢からは先ほどとなんら変わったところはないように見える。


 そうであれば武術を修めつつある孫仁の優位は変わらないはずである。


「ふん、確かに儂は武術を知らん。


 だが、誰よりも人体について熟知しておる。


 今までは必要がなかった上に身体がついていかんのでやろうとはしなかったが…」


 そう言って華佗は一気に孫仁へと向かって斬りかかっていく。


 キィン!


「く!」


 華佗の下から斬り上げるような一撃を受けた孫仁の剣が甲高い音を立てる。


「レン!」


 孫仁は華佗の今までの攻撃も受け流したりかわしたりしていたが剣を合わせても大きな音を立てるようなことはなかった。


 それは孫仁がほぼ完全に華佗の剣を見切っていたからである。


 だからこそほんの僅かな力で華佗の力を受け流せていた。


 しかし、今の一撃は華佗の動きが戦いの動きとして理に適ったものに近くなっていた。


 そのため孫仁は虚をつかれ受け流し切れなかったのである。


「…これほど急に動きが変わるなんて」


 まともに打ち合えば力では適うはずもない。


 受け流しきれず僅かに弾かれた剣のために乱れた舞を整えるため孫仁は慌てて距離を取る。


「お前らの言う武術とはこんな感じかの?


 …なるほど、これはこれでおもしろい」


 1人呟きつつその場で剣を振る華佗の動きが先ほどまでとは明らかに違う。


「儂の動きが不思議か?」


 にやにやとした笑みを浮かべる華佗に孫仁は目で回答する。


「言うておくが儂が急に武術を使えるようになった訳ではないぞ」


「そんなはずは…」


「儂はただ身体の使い方を真似ているだけじゃ」


「真似る?」


「そうじゃ、幸いなことにこの場は見本には事欠かぬからな」


 そう言った華佗の視線の先には激しく打ち合いを続ける関羽、張飛や馬超と許チョがいる。


(見本…ね、手本とは言わないのね。


 関羽さん達を手本として見習うのではなく、武術が出来る人体としてしか見ていないってことね)


 華佗の細かい言い回しに不快感を感じながら茜は自らの嫌な予感が的中してしまったことに舌打ちしたい気持ちを抑えて唇を噛む。


「儂くらいになれば動き方を見ただけでどこにどの程度力を加えて動いているかは大方理解できる。


 後は同じように身体に負荷をかけてやればよいだけのこと」


「そういうこと…か」


 華佗の得意げな説明に茜は驚嘆を漏らす。


 華佗が行ったのは関羽達の武術の形を真似ることではない。


 筋肉や関節、呼吸に至るまで人体の各組織の細かな動きを正確にトレースすることだった。


 武術だなんだと言っても突き詰めれば所詮は人の技である。

 

 人の技である以上、全ての動作は筋肉や関節を使わざる得ない。


 もちろんトレースする相手と同じかそれ以上の身体能力がなければ同じ動きをしようとしても不可能である。


 だが、能力的な要件を備えた上でその内部の動きを完全にトレースすることが出来るのならば…理論上は全く同じ技が使えることになる。


「針で強化された肉体と神医としての知識があってこその華佗にしか出来ない技ってことね」


「…」


 茜の言葉に対し沈黙で答えた孫仁の表情は固い。


 先ほど茜が言わんとしていたことを身を以て理解したせいである。


(私はほんの少し武術をかじった程度で何を舞い上がっていたのでしょう…


 私が武術の道の入口にいるとすれば老師は医術の道の最高峰にいるお方。


 道は違えど一道を極めつつある相手を侮るなんて思い上がりも甚だしい)


「先ほどから宙に現れる花の蕾のようなもの…


 おそらく1つ1つの威力は小さい。


 儂の今の肉体を以てすれば余程の数を命中させねば倒せぬ」


(悔しいけど正解だわ)


 茜は華佗の推察を内心で認めて唇を噛む。


「ならば、その数が揃うまでに儂がその舞を止めお前を倒せるかどうかがこの勝負を決めるということじゃ。


 儂の見立てでは後数分と言うところかの」


「止めさせません!」


 華佗の言い分を認めつつ、それを正面から受け止めた孫仁が毅然と宣言する。


「かかかっ!」


 ほぼ同時に華佗が凄まじい勢いで間合いを詰め剣を横薙ぎに振るう。


「く!」


 孫仁はそれを身を捻ってかわすがやはり僅かに舞が乱れる。


「ほれ、次じゃ」


 逃げた孫仁を追うように華佗が更に詰めより今度は上段から斬り下ろす。


 シャァァァア!


 その一撃を両手の剣を揃えるようにして頭上で受け止めた孫仁は舞の流れの中で回転しつつ剣先を下に向け滑らせる。


「ほ!ならばこれならばどうじゃ」


 三度迫り来る華佗の次なる一手は神速の突き。


「ん!」


 喉元を狙って突き込まれた一撃を孫仁は下から剣を振り上げ切っ先を上へと逸らしながら自らは上体を反らしてかわす。


 更に勢いのまま華佗の剣の持ち手を蹴り上げつつ後方に一回転して再び舞う。


 不意に持ち手を蹴られれば握った剣を手放してもおかしくはないが強化された華佗の手はその衝撃にも剣を手放すことはない。


「ふむ、なかなか当たらんもんじゃの。ふん!」


「ふ」


 華佗が攻撃し、孫仁が受け流す。


 そんなやりとりが続くのを見ながら茜は僅かな違和感を感じていた。


(真似をし出してからの華佗の攻撃は確かに私から見ても速いし強い…んだけど…)


 思考しながら茜はちらりと横目で関羽と張飛の戦いを確認する。


(なんか違うのよね…あっちと)


 茜の言うとおり華佗の動きは結果として武術の動きになり精度を増している。


 それは全力を注ぎ込んでなんとか舞を維持している孫仁を見れば明らかだ。


(それでも怖さは感じない…のよねぇ。


 なんて言うかこう…動きがぶつ切り?のような…あ!)


 そこまで考えた茜の脳裏に閃くものがあった。


「そういうことか…


 華佗は関羽さんたちの動きの1つ1つは完璧に真似することが出来ても、長い修練の中で身についた反射的な行動は真似出来ないんだ」


 思わず声に出た茜の言葉に孫仁がピクッと小さく反応した後、納得したように僅かに頷いた。


 おそらく同様の違和感を孫仁も感じていたのだろう。


「状況に合わせてどの技を選択するか、1つの動きの後に次の動きをどう繋げていくか…


 そういう力は結局長い修練と多くの実戦経験の中でしか身につかないんだわ」


 だからといって1つ1つの攻撃は超一流であり、僅かに動きにつながりを欠くからと言って間違っても油断は出来ない。


 だが、必死に攻撃をかわし続けたおかげで水花の方はもはや一見してすぐに数え切れない程に増えている。


「むぅ…何故じゃ!何故当たらん!


 あそこの武器を振り回すだけの馬鹿共と同じ動きをしてやっているのに」


 徐々に増え行く水花と当たらぬ攻撃に業を煮やした華佗が苛立ちの声を上げる。


「えぇい!骸ども!


 なにをぼさっと突っ立ておる。


 あやつに抱きついてでも舞を止めろ!」


 攻撃を続けながら叫んだ華佗の声に反応して2体の骸兵がのそのそと歩き出し孫仁へと向かっていく。


「まずい!


 あいつらが邪魔しにきたら華佗の攻撃をかわしきれなくなる」


「く!」


 焦燥に駆られた茜の言葉に自らの苦境を理解した孫仁が奥歯を噛む。


「まっかせときなぁ!やっと俺様の出番だぜ!」


 しかし、骸兵達が孫仁と華佗の間合いに入る前に勇ましい声が上がる。


 同時に茜の後方からドドドという音が聞こえ、茜の頭上を飛び越えるように何かが通り過ぎていった。


「え?何?」


 一瞬身をすくめた茜の目の前に逞しいお尻と柔らかな尻尾が現れ、瞬く間に戦場へと駆け込んでいく。


「こら!悪来!女の子をまたいでお尻を見せるなんて!」


「ははは!その辺にいたのか嬢ちゃん。


 見えねぇんだから多めに見ろや」


「もう!分かってるわよ!

 

 その代わりしっかり働いてよ」


「任しときな!あんなやつらこの悪来様の敵じゃねぇ!」


 豪快に笑いながら突進する悪来の口には既にホウ統の剣が横向きに銜えられている。


 そして、その勢いのまま骸兵の一体とすれ違いもう一体を体当たりで弾き飛ばした。


「まずは1匹目ぇ!」


「悪来殿!」


「おう!姫さん、いつぞやの借りはここで返すぜ!」


 悪来の乱入により窮地を脱した孫仁が述べようとした感謝の言葉を遮るように悪来が吠える。


 そして悪来と最初にすれ違った骸兵の頭がゆっくりと身体から滑り落ちていく。


「ふふ、承知いたしました。


 これで貸し借り無しですわね」


 悪来が言っている『借り』とは以前、関羽と孫仁が孫策と周瑜2人と戦った時のことだろう。


 窮地に陥った関羽を救うために先を急ぐ孫仁を迎えに行った時のことだが、もともと借りとは言えないようなものである。


 あの時、悪来は自らも深手を負いながらも関羽達のために決死の走りを見せた。


 しかし出血と激痛で目が霞んで前が見えなくなっていた上に意識まで朦朧としていた悪来はもはや走ることは出来ても自分自身ではどこを走っているのかすら分からなくなってしまっていた。


 そんな状態の悪来を見つけた孫仁が悪来に飛び乗り戦場へと誘導したのである。


 本来であればそこまでしてくれた悪来に対して孫仁こそが悪来に『借り』をつくったと言える。


 だが、あの時孫仁は今にも意識を失いそうになっている悪来を奮起させるためわざと厳しいことを言った。


 あえて『貸し』を作ったことにし『借りを返さずに死んだら許さない』と言うことで悪来の気力を維持させたかったのである。

 

 そのことはもちろん悪来も分かっている。


 それでも2人の間ではその後も何度かその話が出てくる。


 だがそれは2人の間の信頼関係であり馴れ合いのようなものだった。


 そして、そんな悪来が助けに来てくれた以上自分は骸兵達を気にすることはないと孫仁は信じていた。


「くそ!


 役立たずめが!たかが馬ごときにすら遅れを取るとは!」


 華佗は憎々しげに罵ると地面で砂に変わっていく骸兵に唾を吐く。


「…老師。


 私は民に囲まれ微笑んでいたあの時の老師がすべて偽りだったとはどうしても思えません」


 そんな華佗に悲しげな目を向ける孫仁の舞はテンポが落ちスローになりつつある。


 舞の終わりが近いのだろう。


「…」


「確かに医者として活動するようになったきっかけは人体への興味だったのかもしれません。


 それでも…それでも老師は数多くの人を救いました。


 幼平もその1人です。


 そしてあの時幼平を老師が助けてくれなければ兄上はその後の戦いで命を落としていたかもしれません」


 孫仁の言うようにその後の歴史で、周泰が居なければ孫権が死んでいたかもしれない場面は幾度もあった。


「やや大袈裟な言い方をすれば、老師がいたからこそ呉国の民は兄上の治世のもと安寧を甘受出来たのです」


「ふん…知ったことではないわ」


「いいのです。


 老師がなんと言おうとあなたは紛れもない名医ですし、私達にとっては救国の恩人です」


 真っ直ぐな眼で言い切った孫仁の言葉には一欠片の迷いもない。


「ならば恩人であるこの儂の為にその身を差し出せ!」


「それはできません。


 私個人の身勝手な理由ですが私はここでやりたいことがあるのです。」


「結局は自分のためか」


 吐き捨てるように吐かれた華佗の言葉に孫仁は微笑みすら浮かべてはいと頷く。


 この戦いを通して孫仁には1つ分かったことがある。


 分かったと言ってもそれは悟りや真理のような高尚なものでは決してない。


 だが、華佗と剣を交え言葉を交わしている内に突然納得してしまったのである。

 

「老師が自らの興味を満たすため人々を救ったのも、幼平が自分の仁義に従い老師のために戦ったのも、私が恩人に剣を向けているのもみなそれぞれ自分自身のためです」


 舞に乗せ歌うように語る孫仁は妙にすっきりとしているように見える。


「そして、きっとそれでいいのです。


 皆が好きな事をする。


 それを周囲がどう受け取るかは本人には関係のないこと。

 

 受け入れられない人がいれば注意を受けるでしょう。

 

 それが褒められるべきことならば賞賛を受ける。


 ただ、それだけのことなのです。


 老師、あなたと剣を交えているうちに不意にそう思うことができました」


 孫仁が華佗との邂逅で行き着いた考え方、それは有る意味究極の『わがまま』とも言えるものだった。


 しかし、個人という単位で見れば単なる『わがまま』にしか感じないその考え方こそは国を治める為政者の思想とも言えるものなのだがそんなことには孫仁は気づいていない。


 ただ『自分は好きに生きていい』のだと本当に心の底から思えたことが孫仁を縛っていた見えない糸のようなものを取り払っていた。


(身体が軽い)


 自らの動きに驚きを感じながら優しげに微笑んだ孫仁は華佗の打ち込みをいつもより大きく逸らして華佗の体勢を崩した。


 そして無理に力を入れたせいで崩れた自らもその体勢を逆に利用して地を蹴り華佗の背後へと跳んだ。


 華佗が体勢を整える前に素早く距離を取ると孫仁は立ち止まる。


 その一連の動きは明らかに今までの舞の動きではない。


 孫仁の舞は完成していた。

 

「咲きなさい『水花』」


 静かに放ったその声に応えるように蕾たちがゆっくりと回り始める。

 

 徐々に速度を増していく蕾たちはゆっくりとその花弁を広げきらきらとした光の花粉をまき散らす。


 その花弁は薄く鋭く研ぎ澄まされ回転力を与えられることにより斬撃属性を持つ。


 華佗の周りを埋めつくさんばかりに咲いた水花全てが一斉に襲いかかればかわしきることも耐えきることも難しいだろう。


「ふん、いいじゃろう。


 下手な偽善よりは余程良い。


 ならばお前の身体は、その技を見事凌いで実力で儂の物にしてくれる!」


 ゆっくりと振り返り孫仁に言い放つ華佗。


 華佗の言うとおり水花燕舞で勝ちきれなければ孫仁には打つ手は殆ど残されない。


 この技で戦闘不能かその直前まで追い込めなければいずれは華佗の力に押し切られてしまうだろう。


 そういう意味では孫仁は既に賭のことなど考えてはいない。


 勝てば張飛の腕を外して貰えるはずだが、それを考えて手加減などしようものなら倒れ伏すのは自分になっていてもおかしくない。


「勝負です老師」


 その言葉がスイッチだったかのように高速回転により鋭利な刃物となった水花が華佗へと向けて襲いかかる。


「ふぬぅ!!」


 雪崩のように襲い来る水花を華佗はめまぐるしく剣を振り回して打ち砕いていく。

 

 剣で追い切れない部分は水花を真下から空いた手の拳で打ちあげる。


 水花は花の形をしているため縁や上は花びらの刃があるが花の下には刃がない。


 華佗はそのことにいち早く気づいたのだろう。


 観察眼にすぐれた医師ならではある。


 だが、それでも孫仁が作り出した水花は圧倒的な数だった。


 徐々に華佗の死角である背中や脚部に水花が命中していく。


 直撃するものはまだ少ないがかすっただけでも華佗のライフを少しずつ削る。


 そして傷が増えてライフが減れば痛みや疲労で動きは鈍っていく。


 その鈍りが致命的になる前に水花を1つでも多く砕き、かわすことが華佗がこの技を凌ぎきる唯一の手段だった。


「よし!姫さん、こっちも終わったぜ。


 後は任せる!」


 残る一体の屍兵の首を落とした悪来が孫仁へと一声かけホウ統の下へと戻っていく。


 長期間ホウ統の護衛がいなくなる危険を承知しているのだろう。


「ありがとう悪来!」


「おうよ!」


 茜の感謝の言葉に短く答え走り去る雄々しい姿を茜は頼もしく見送る。


 だが、さすがに馬の身では無傷という訳には行かなかったのだろう。

 

 その馬体にはいくつか斬り傷を負っていたが深刻なものではなさそうだった。


 それにしても、最初の1体を突進を利用して一撃で倒せたことが大きいとはいえ屍兵2体を馬の状態で事も無げに倒すとはさすがは悪来である。


 声をかけられた孫仁は戦闘に集中しているため悪来の言葉には答えない。


 悪来も返答を期待している訳ではなく孫仁を激励したかっただけだろう。


 その孫仁は悪来の声をどこか遠くに聞きながら華佗の様子に集中していた。


「もし、凌ぎきられるようなら技終わりと同時に突っ込んで一気に勝負をかけるわよ」


 同じことを考えていた孫仁も僅かに頷く。


 『水花燕舞』は発動までの負担が大きい代わりに技を出した後の硬直が全くない。

 

 危険なためやろうとは思わないだろうが、自らも水花の群れの中に飛び込む覚悟があれば技の発動と同時に敵に攻撃を加えることも可能である。

 

「レン、華佗の動きが止まるようなら『氷縛乱武』もまだ撃てるわよ」


 孫仁のもう一つの必殺技である『氷縛乱武』は氷で動きを止めた後瞬速の10連撃を繰り出す技である。


 こちらも決まれば強力だがこれもリスクが高い技だった。


 最初に相手を氷に捕らえられなければ10連撃は発動条件を満たさないため無駄にライフのみが一回分消費されてしまう。


 さらに10連撃が発動したとしても今度はその一連の行動が終わるまでは孫仁自らの意志で動くことが出来ない。


 それでも使いどころを間違わなければ非力な孫仁の攻撃力を補ってくれるだろう。


「ただしこれ以上新しい傷を負うようだと技を繰り出す余裕はなくなるわ。

 

 その時は早めに言うから気をつけて」


 茜は孫仁にこれからの戦い方の注意を促しながらも内心では『ここで決まって』と強く念じていた。


 なぜなら孫仁のライフは周泰の戦いで受けた傷に加えて『水花燕舞』をフルで舞いきったことで既に半分を割り黄色くなっていた。


 孫仁も自らの疲労感で察しはついているだろうがそれに対する影響は微塵も感じさせない。


 そんな孫仁達の視線の先では技の終わりと華佗の限界が同時に近づいていた。


 華佗は強化された身体と関羽達を真似ることで覚えた武術の動き、その2つを医学的な知識を駆使して最大限効率よく使うことで驚異的な防御力を発揮していた。


 だが、どうしてもカバーしきれない死角からくるものや物理的に対応が出来ない水花が1つ2つと華佗の身体を斬り裂き、時には突き刺さっていった。


「くぅ!」


 そしてとうとう1つの水花が華佗の右足のふくらはぎを深く斬り裂き骨までを削り取った。

 

 身体を支える部分にそれだけの損傷を受けてしまえば針で大きく膨らんでいた自らの巨体を自在に操ることは不可能である。


 当然華佗も大きくバランスを崩し膝を付いてしまう。


「ぬ!」


 その拍子に水花に弾かれた剣が離れた所へ飛ばされていく。


「まだじゃ!」


 それでも華佗は諦めず素早く身体に幾本もの針を刺すと頭や首などの急所を抱え込むようにして丸くなって地に蹲る。


 もはやかわせないと判断し、更なる肉体強化を施した上で攻撃を受ける面積を最小にしたのだろう。


 そして、動きを止めた華佗に吸い込まれるように残っていた全ての水花が一斉に襲いかかっていく。


 ドスッ


 ブシュ


 という嫌な音が立て続けに鳴り響く。


 茜は思わず目を背け耳を塞ぎたくなる気持ちを抑えVSをしっかりと握りしめて耐える。


 それをしてしまったら自分たちで選んだ行動の結末から逃げるような気がしたのだ。


 やがてその音が止まると孫仁達の戦場からは全ての音が消えた。


 その静寂の中、孫仁は全身から水花を咲かせて岩のように動かない華佗に向かってじりじりと間合いを詰めていく。


 その間にも役目を終えた水花達が1つまた1つとシャリィン、シャリィンと涼やかな音を立てながら氷の粒となって散っていく。


 ピク


「…」

 

 ゆっくりと近づく孫仁の視線の先でうずくまったままの華佗が僅かに動く。


 そしてその動きは徐々に小刻みな震えへと変わっていく。


「く、くくく…し、凌いだぞ」


 乱れた髪を幽鬼のように垂らしながらゆっくりと立ち上がる華佗。


 しかし、その姿はもはや戦闘を続けられるようには見えない。


 首から上こそほぼ無傷だったが左腕は半ばから断たれ、右足は既に動かないのか引き摺るだけで左足一本で立っている状態である。


 そして全身を走る裂傷。


 出血はエフェクトのみのため一見して見受けられないが、出血で傷が隠されないため逆に華佗の全身の傷を際だたせている。


「こ、これで儂のか、勝ちじゃ」


 薄ら笑いを浮かべながら剣も持たずに孫仁へと少しずつ近づいてくる華佗に既に正常な判断力はないように見える。


 おそらく今ならば『氷縛乱武』を使うことでとどめをさせる。


 いや、とどめをさすだけなら起き上がる前に技を使えば良かった。


 だが孫仁は最後まで華佗が自分の思い描く名医の姿に戻ってくれることを期待したのだ。


「レン、ここまでよ。

 

 これ以上は華佗を苦しめるだけだわ」


「はい」


 茜の言葉に頷いた孫仁は剣を握り直し、必殺技の準備に入る。


「老師、このような形になってしまいましたが私はあなたにこうして再び会ってお礼を言えたことをとても嬉しく思います」


「その身体は、わ、儂の…ものだ」


 孫仁の言葉が耳には届いていないのか華佗はうわごとのように呟き続ける。


「老師、本当にありがとう御座いました」


 心の底からの感謝を述べた孫仁が剣を地面に刺す。


「行きます『氷…』あ!老師!」


 技を発動しようとした孫仁の目の前で華佗の身体がぐらりと揺れる。


 その目には先ほどまでの狂気はない、しかし生気も感じられない。


「老師!」


 思わず駆け寄る孫仁から逃げるように華佗はゆっくりと後ろへと傾いていき、やがてなんの受け身も取らぬまま大きな音を立てて倒れた。


「老師…」


 茜が注意する暇もない程にあっさりと無防備に華佗へと近づいていく孫仁の目がはっと見開かれる。


 華佗の身体が少しずつ小さくなっていくのだ。

 

 それが針の効果が切れたからなのかそれとも強化の限界を超えたせいなのかは分からない。

 

 だがあれだけ体躯逞しかった華佗の肉体はまるで空気が抜けていく風船のようにしぼんでいき最後には元の身体よりも小さくなったかのような印象を受けるほどだった。


 そんな身体の変化にも気づかないのか視点の定まらぬままの目を虚空に向けるだけの華佗の頭を孫仁は優しく抱き起こす。


「ふ…せっかく技を凌いでも…反撃出来るだけの力が残せなければ意味がないのぅ…」


「老師、正直に言わせて貰えば凌がれるとは思っていませんでした」


「ふ…世辞などいらぬ。


 お前の言うとおりだ…人は思いのまま好きなように生きればよい。


 儂とお前互いに好きに生きた結果が今この状態だというだけじゃ……などと」


 視線を彷徨わせながら今にも事切れそうな華佗。


 その目に一瞬だけ光が戻る。


「言うと思ったかぁ!」


 次の瞬間くわっと目を見開いた華佗が無事な右手で孫仁の左肩を打つ。


 しかし、孫仁は避けようともしなかった。


 左肩は周泰の一撃を受け深く傷ついている場所である。痛みに僅かに顔をしかめはしたがそれだけで微かな笑みすら浮かべている。


「レン!!なんて執念なの!


 そんな状態でまだレンを倒そうとするなんて」


 茜の憤りを余所に孫仁と華佗の間には静謐な空気が流れていた。


「なぜ避けぬ」


「あなたは医者です」


「かっ!


 まだそれを言うか!」


「はい」


 吐き捨てるような華佗の言葉に孫仁は間をおかずに答える。

 

「…ふん、わざと避けられる速度で攻撃し僅かでも避けたなら死穴を突いてやるつもりじゃったのにのう…」


 針を学ぶ上で華佗はそれを活かすために点穴と呼ばれるツボや経絡と呼ばれる気の流れにも深い知識を持っていた。


 死穴というのはそんなツボの中でもそこを突けば一瞬で死に至ると言われているものである。


「老師…」


 小さく肩を震わせて笑う華佗の手先や足先が光の粒子へと変わっていく。


 限界がきたのだろう。


「…この勝負儂の負けじゃ。


 だが張飛の腕は…もはや儂でも外すことはできん。


 約束を違えるようで悪いがな…」


「そうですか…分かりました。


 後は私達でなんとかします」


「…かか…恨み言1つ言わぬか。


 ならば1つだけ可能性を示してやろう。


 あの腕は腕であって腕ではない。


 物理的な方法での除去は不可能じゃ」


「斬って細切れにしても…」


「再生して元に戻るだろうのぅ…


 あの腕は腕自身の意志であそこに居座っているのじゃ。儂の術の影響などきっかけだけでさほど関係無い。


 もし可能性があるとすれば…


 まずはあの腕が誰なのかを見極めそいつの心を折ることじゃな」


 華佗の身体は既に腰までが消滅している。まだ話が出来ているのが不思議なくらいである。


「分かりました。


 助言ありがとうございました老師」


「…まあよい。

 

 現代の医学もなかなか面白かった…


 欲を言えば…もう少し遺伝子とやらを調べてみたかったのぅ」


 華佗はここへ呼び出されてから独自に調べた現代の医学を思い出し子供のようにきらきらと目を輝かせる。


「…人の身体の…なんと奥ふ…かいこ…とよ」


 幸せそうに呟いた華佗の残っていた全身が一斉に光となって散った。


 完全に事切れたのだろう。


 しかし、今までと違いその光は収束することはなく徐々に消えていく。

 

 おそらく華佗自身に孫仁達を助けようとする意志がないのだ。


 勝者プレイヤーである茜が何かに変える指示をしなければこのまま華佗は再び眠りにつく。


「私達はみんなを解放するために戦ってる。


 だからゆっくり休んで華佗さん」


 茜の言葉に孫仁も嬉しそうに微笑んで頷く。 

 2人で華佗だった光を最後まで見送ると茜が口を開く。


「レン、お疲れさま。


 まだ終わった訳じゃないけど…傷は大丈夫?」


 自らの剣を拾って鞘へと戻した孫仁がその言葉にきょとんとした表情を見せる。


「そう言えば…先ほどから痛みが…」


 そう言って左肩に手を伸ばす。


「これは!」


「え!どうしたの?」


「いえ、なんでもありません。


 傷は大丈夫です」


 孫仁は明るくそう告げるとホウ統の下へと歩き出す。


「え?ちょっと!どういうことよ」


「ふふ、結局老師は最後まで名医だったということです」


 孫仁の言葉の意味が分からずにやきもきする茜を孫仁は笑って受け流す。


 軽い足取りで歩く孫仁の左肩の辺りで何かがほんの一瞬だけキラリと陽の光を反射した。


 



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スキルを交換する能力を持った主人公のお話です。
転生物ではないですが転生要素はあります。ケモミミの幼馴染やエルフ奴隷もでます^^
もしよければ読んでみてください
スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~
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