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第2話「黒竜の呪い」

 俺達が洞窟の中に入ると、青白い光りを放つ石があちこちにあり、辺りを照らしていた。


「なんだこの石?明かりがいらなくて便利だな」

「それは『光り石』ですね、魔力の高い場所に発生するらしいですけど、私も実際に見るのは初めてです」


 なんだか珍しそうだったので、丁度いい大きさの石ころを一つ拾って鞄に入れておく。


「そんなもん、拾ってどうするんだ?」


 俺の様子を見ていた、ガルドンが話しかけてくる。


「何かの役に立つかと思って」

「まあ店によっては、売れば少しは金になるかもしれんな」


 テンパスがそう答える。


「マジか!?それじゃあ俺も拾ってこう」

「ガルドン……あなたはここに何しに来たのですか?」


 地面に落ちてる光り石を集めようとするガルドンに向かって、姫様が冷たい視線を向ける。


「じょ、冗談ですよ~やだな~」

「まったくあなたは……あっ、イブキは必要なら拾ってかまいませんよ?」

「いや、一個あれば十分だ」


 お金よりも、今はドラゴンだ。


「なんだか理不尽……」

「まあ姫様は、年下好きじゃからのう」

「テンパス、余計な事は言わないでください」


 そんな話をしながら歩いていると、あたり一面が光り石に包まれた広い空間に出る。


「うわー、すごいな」


 壁一面が青白く光り、なんだか神秘的な感じがする。

 辺りには、岩のような大きな光り石がたくさんあり、綺麗な泉も存在した。

 


「これだけの光り石があるという事は、ここにはとても強い魔力が集まっているということでしょうか?」

「たぶん、そうでしょうな……ここになら心竜がいるかもしれません」


 確かに、何か不思議な感じがする場所だ。


「とりあえず手分けして探してみましょう、何か見つけたら教えてください」

「わかった」


 適当にその辺を調べてみるが、光っているだけで、これといって気になる場所は無い。


「ドラゴンいないかな……」


 辺りを見回すと泉の近くに、光り石が大量に積み重なって柱のようになっているのを見つける。

 

「なんだか怪しいな」


 とりあえず登ってみることにする。


「よいしょよいしょ……っと、意外に登りやすいな」

「イブキ、そんな所に登ったら危ないですよー」


 心配した、姫様が下から声をかけてくる。


「このくらい大丈夫だから、姫様は他の場所を探しててくれ」


 そう言って、登り続けると頂上まで辿り着く。

 するとそこには、白くて大きな卵があった。


「もしかして、これはドラゴンの卵か?」


 持ち上げてみると、そこそこ重かった。

 とりあえず姫様に教えてやろう。


「おーい姫様、卵見つけたぞー!!」


 その時、突然地響きが起こる


「な、なんだ!?」


 俺は卵を鞄にしまい、下の様子を伺う。

 すると、今まで見たことの無いような黒くて大きなモノがそこにいた。

 ここから見た感じでは、ドラゴンのような形をしている。


「な、なんだコイツ、突然現れたぞ」

「わからん、今まで見たこともない禍々しいドラゴンじゃ……ガルドン、姫様をお守りするぞ」


 ガルドンとテンパスが、姫様を守るようにして黒いドラゴンの前に出る。


「俺も早く降りないと……」


 そう思った時、突然俺のいた柱が揺れ始める。


「まさか、さっきの地響きが原因で……」


 俺は、とっさに泉のある方にジャンプする。

 その瞬間、俺のいた柱が崩れ落ちる。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 そして俺の体は落下していく。


 バッシャーン!!


 目を開けると、俺は水の中にいた。

 どうやら、近くの泉に落ちることに成功したようだ。

 泉が深かったおかげで、怪我もしていないみたいだ。

 俺が泳いで陸地に上がると、そこには黒いドラゴンと戦う姫様がいた。


「あれは……」


 近くで見て、その黒いドラゴンの異常さに気づく。

 肌は黒くてブヨブヨしており、大きな目や口が全身に存在し、体のあちこちから不気味な触手が生えていた。


「くっ……このドラゴンは、いったいなんなのです!?」


 辺りには、さっきまでいたガルドンとテンパスの姿が見当たらない。


「イブキ!!このドラゴンは普通ではありません、逃げてください!!」


 俺に気づいた姫様がそう叫ぶ。


「「「グオォォォォォォン!!」」」


 その時、黒いドラゴンが全身の口から咆哮を上げると、おぞましい色をしたガスが噴出される。


「しまったっ!?」


 姫様は避けようとするが、間に合わず全身にそのガスを受けてしまう。


「姫様!!」


 俺は急いで姫様を助けようとするが、ガスに触れると軽い痺れを感じる。


「な、なんだこれ!?」


 どうやらあのガスには、体を痺れさせる効果があるようだ。

 これ以上ガスをあびないようにするため、俺は黒いドラゴンから一旦離れて距離を取る。


「う、うぅっ……」


 その間に、黒いドラゴンは動けなくなった姫様に近寄ると、体に生えてる一本の触手を姫様の口の中へと挿入する。


「んほぁ!!んんっ!!」


 触手の入った姫様の口から、ドロドロした不気味な液体が溢れて零れ落ちる。

 どうやら何かを、無理矢理飲み込ませているようだ。

 なんとかしたいが、黒いドラゴンがガスを噴き出していて近寄ることができない。


「ちくしょう……どうすればいいんだ!!」


 その時、姫様の目から涙が零れ落ちる。

 それを見た瞬間、俺の中で何かが込みあげてきた。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 全身の力を振り絞り、持っていた槍を、姫様の口に挿し込まれている触手に向かって投げつける。


「「「グオォォォンン!!」」」


 俺の投げた槍は触手に突き刺さり、黒いドラゴンが咆哮をあげると、噴き出していたガスが止まった。

 それと同時に、姫様の口に挿し込まれていた触手も抜ける。


「姫様!!」


 俺は急いで姫様に駆け寄ると、その場から抱き上げて移動する。


「はぁはぁ、イブキ……体が熱くて変なんです」


 あの黒いドラゴンに、毒でも送り込まれたのかもしれない。


「大丈夫だ、今解毒薬を……」


 その時、目の前で信じられない事が起こった。

 姫様の腹が膨らみを増して大きくなったのだ。


「な、なんだ!?」


 腹だけではない、姫様の細い腕や脚まで肉がついて。徐々に太くなっていく。

 まるで体中の脂肪が、急激に増加しているみたいだ。


「はぁはぁ、私の体いったいどうなって……胸当てがキツくて苦しい!!」


 すると膨らんだ胸の脂肪によって、胸当てが弾け飛んでいく。

 

「危ない!!」


 危うく顔に胸当てが当たる所だった。

 ほっとしたのもつかの間、今度は重すぎて姫様を持っていられなくなる。


「お、重い……」


 腕の中の姫様は、俺よりも遥かに体が大きくなっていた。

 お腹には大量の肉が付き、姫様の細かった腰の面影はもう見当たらない。

 手足も俺の倍以上の太さに膨らんでいて、美しかった顔は、頬に肉がついて丸くなっている。

 着ている服は、姫様の肥満化した体に耐え切れず、伸びきって今にも破けてしまいそうだ。


「はぁはぁ、もうダメだ……」


 俺は、あまりの重さに姫様を持っていられなくなり、泉の前に降ろしてしまう。


「イブキ、私の体はいったいどうなってしまって……えっ!?」


 光り石に照らされた泉には、体中に肉がつき巨体になった姫様の姿が映っていた。

 そこにはもう、美しかった以前の姫様の姿はない。


「こ、これ、誰ですか?え、え?これが私、嘘……嘘ですよね!?」


 すると姫様の着ていた服が、肥満化した体の肉圧に耐え切れずビリビリと音をたて、破れていく。

 それは、これが現実だと姫様に伝えているようだった。


「あ、ああ……」


 姫様は自分に起きていることが、信じられず呆然としている。


「考えるのは後だ、今は逃げるぞ!!」


 そう言って、脂肪がついて太くなった姫様の腕を引っ張る。


「もう無理です……イブキだけでも逃げてください」

「何言ってるんだ!!まだ生きてるんだろ、だったらあきらめるな!!」


 このまま姫様だけを置いて逃げるなんて、俺にはできない。


「「「グオォォォンン!!」」」


 咆哮をあげながら、黒いドラゴンが俺達に近づいてくる。


「こんなぶよぶよの醜い体じゃ、もう竜騎士になんかなれません、だったらもう……」

「ふざけるな!!どんな姿になったって姫様は姫様だろ!?竜騎士になるっていう意思は……母親みたいな竜騎士になるっていう、アンタの想いはそんなもんなのかよ!!」


 俺は黒いドラゴンから守るようにして、姫様の前に立つ。


「イブキ……」

「俺はあきらめない……姫様を助けて、俺も生き残って、そして竜騎士になるんだ!!」


 槍は投げてしまったので、手元にはもうない。

 でもあきらめたくない、あきらめてたまるもんか!!

 気持ちだけじゃ、どうにもならないのは、俺だってわかってる。

 でも気持ちまであきらめてしまったら、本当に終わりじゃないか。


「私もあきらめたくありません……だから一緒に生き残りましょう!!」


 姫様は重い巨体を動かして、俺の隣に並ぶ。


「姫様……だったらコイツにかけてみよう」


 俺は鞄から、白くて大きな卵を取り出す。


「これは……もしかしてドラゴンの卵?」

「これがもし心竜の卵なら、呼びかけたら応えてくれるかもしれないだろ?」


 これは賭けだ、心竜がどんなドラゴンかは俺にはわからないし、この卵が本当にドラゴンの卵なのかもわからない。

 でもここであきらめて、何もしないよりかはマシなはずだ。


「二人で契約してみるぞ」


 二人で呼べば、どちらかに反応してくれるかもしれない。


「わかりました」


 俺と姫様は二人で卵を持って呼びかける。


「おまえが心竜だっていうなら……」

「どうか私達に力を貸してください!!」

「「契約発動!!」」


 すると突然、卵が輝き出す。


「こ、これは……」

「いったい何が……」


 卵が割れると光りが溢れ出し、俺達の体を包み込んだ。


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